日本で繰り返されるトランプ応援デモの主催者・参加者はどんな人々なのか

日本で繰り返されるトランプ応援デモの主催者・参加者はどんな人々なのか

「トランプ米大統領支援集会・デモ実行委員会」によるデモ(11月29日)

◆バイデン氏当確以降も日本で繰り返されるトランプ応援デモ

 アメリカ大統領選挙では、12月14日にバイデン氏が正式に過半数の選挙人を獲得し、事実上、当選確実となった。1月6日に連邦議会で投票結果の承認が行われ、バイデン氏が大統領に就任することになる。

 しかしそれでもなお、トランプ大統領を支持するデモが繰り返されている。しかも日本で。いったい、どのような人々なのだろう。

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◆統一教会分派が関わる団体の官邸前集会

 以前本サイトでリポートした首相官邸前でのトランプ支持集会があったのは、11月15日。主催団体の中には、統一教会(現正式名称は世界平和統一家庭連合だが、便宜上「統一教会」と呼ぶ)の分派であるサンクチュアリ協会の関係者が関わっていた。うち一人は、日本統一教会の会長を歴任した江利川安栄氏(現・サンクチュアリ協会会長)だ。

 この集会では、「JAPAN LOVES TRUMP」「不正開票を許さない! STOP STEAL」などのプラカードを掲げた12人の集団が、「中国共産党を終焉させることができるリーダーはトランプ大統領しかいません」などと演説した。

 同様の集会は12月24日にも首相官邸前で行われている。実質的にサンクチュアリ協会による集会だったのか、他の宗教勢力や保守団体との混成なのかはわからなかった。中国系・韓国系とおぼしきアジア系の参加者が目立ったが、それが法輪功等の関係者なのか、サンクチュアリ協会(韓国日本部を置く統一教会からの分派なので、韓国系の人がいても何ら不思議はない)関係者なのかはわからない。

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◆幸福の科学信者によるデモ行進

 11月25日には、日比谷公園から銀座まで、幸福の科学信者たちによるトランプ支持のデモ行進と、数寄屋橋交差点付近での演説が行われた。見たところ300人ほどだろうか、幸福の科学信者が中心と思われる参加者たちがシュプレヒコールを上げた。

「トランプ大統領再選を応援しよう!」

「アメリカ大統領線の不正選挙は民主主義の崩壊だ!」

「トランプ大統領は立派な大統領だ!」

「日本もトランプ大統領とともに世界の繁栄を目指そう!」

 主催団体である「チェンジジャパン日本を変えよう」の連絡窓口として氏名を公表している古山貴朗氏は、幸福の科学信者であることを公言している。「チェンジジャパン」の公式ツイッターアカウントは、幸福の科学の「経典セミナー」の宣伝も行っており、幸福の科学との関係を隠さない。

 デモ隊の先頭には、幸福実現党外務局長・及川幸久氏と幸福の科学職員である与国秀行氏も立ち、デモ後の街頭演説でもマイクを握った。

「私達日本人、あるいはアメリカの人々が戦っているのは、まさに最後の聖戦であることを知っていただきたいんです。コロナの問題もあります。この闘いから逃げることはもう誰にもできない。マスクをしてコロナと闘うか、違った角度からコロナと闘うか。様々な闘いはあれども、コロナとの闘いからもはや人類は逃げることはできない。そしてそういった中で、アメリカでトランプが今ディープステートと闘っている。私達日本人もまた闘わなければならないときに来ています」(与国氏の演説)

◆12月23日にも再び行われたデモ

 この後、前述の通り12月14日にバイデン氏の当選が事実上確実となった。それでもなお12月23日に、同じ団体が同じルートで同趣旨のデモ行進を行い、数寄屋橋で演説をした。この時は、目算で400〜500人はいようかという参加者が集まった。今回も及川氏・与国氏が参加した。

 法輪功がデモ隊の周りでトランプを支援する記事を掲載した新聞を配り、デモ参加者もそれを受け取って掲げながら行進した。デモ隊の中にはレイシストによるヘイトスピーチ街宣などにも参加している活動家氏の姿もあった。

 11月25日のデモに比べて、信者以外の人々も加わったり便乗したりしていたように見える。

 このデモは幸福の科学や幸福実現党の公式活動ではない。あくまでも、信者たちによる「チェンジジャパン」の主催だ。なぜそのような形態を取るのか、デモ現場で与国氏に尋ねたが、明確な答えは得られなかった。

 しかし偽装デモかというと、そうでもない。デモ前の挨拶では、「チェンジジャパン」の古山氏も含めて、幸福の科学の信者であることをその場で明かしていた。12月23日のデモの出発前には、トランプ大統領のために祈りを捧げる時間まで作っていた。

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◆国際色豊かな大規模デモ

 11月25日の幸福の科学信者によるデモの際、主催者に「29日にこののぼりを持ってきてよ」と声をかけている人物がいた。29日にデモを予定している別団体の関係者のようだ。

 そのデモは、同じく日比谷公園からスタートし、幸福の科学信者たちのデモより長距離を歩き丸の内まで続いた。

「アメリカ大統領選挙は善と悪の闘いだ!」

「闘いはこれからだ!」

「米国大統領選挙、勝者はトランプだ! バイデンではない!」

「メディアは偏向報道をやめろ!」

「不正選挙は民主主義を破壊する重大犯罪だ」

「中国の驚異から日本とアジアを守ろう!」

「Take down CCP (中国共産党を倒せ)」

「We Love Trump!」

「Make America great again!」

「Make Japan great again!」

 幸福の科学信者によるデモよりはるかに多い。1000人はいそうだ。

 25日のデモにいた幸福の科学信者らしき人々もいた。そのうちの1人は、幸福の科学信者によるデモのときと同じトランプ大統領の顔をしたマスクを被ったコスプレ姿。ラジカセでヴィレッジ・ピープルの『Y.M.C.A.』をかけながら踊っていた。

 トランプ大統領はLGBTの権利の実現には逆行する立場で、幸福の科学もLGBTに寛容とは言い難い。それが、ゲイをテーマにした音楽で踊っているのである。

 沿道では法輪功が複数種類の新聞を配り、大紀元など法輪功系のメディアも複数種類が取材に来ていた。何割程度かはっきりわからないが、中国系とおぼしき参加者も多かった。参加者たちが交わす私語の中に中国語が目立った。韓国旗を背負ってカメラを回す人もいた。南ベトナムの旗を掲げるベトナム人もいた。

 とにかく参加者が多様で賑やかな雰囲気だ。そしてここにも、前出のヘイトスピーチ活動家氏の姿があった。

◆聖書の中の「Trump」の文字が登場する一節を引いた横断幕

 新約聖書の言葉を印刷した横断幕を持つ一群もいた。なぜ聖書の言葉を掲げているのか尋ねた。

「聖書にトランプという言葉が登場している。トランプの登場が聖書で予言されていたので、その部分を引用しています」

 横断幕にはこう書かれていた。

〈主ご自身が天使のかしらの声と神のラッパの鳴り響くうちに、合図の声で、天から下ってこられる。その時、キリストにあって死んだ人々が、まず最初によみがえり… 「テサロニケ4章16節」〉

 ここに登場する「神のラッパ(the Trump of God)」が、トランプ大統領のことなのだそうだ。神のラッパって、人類滅亡(天変地異)の合図じゃないですか?とツッコミを入れると、こんな返事。

「それは黙示録ですね。ここで引用しているのは聖書の別の部分です」

 だとしても、聖書の言葉を掲げるとは、宗教団体なのだろうか。

「主催者から渡されたのを持っているだけなので、私達にはわからない」(参加者)

◆新中国連邦という新勢力

 デモ隊の中に、青地に金の星をたくさんあしらった見慣れない旗を持つ一群があった。「新中国連邦」という団体の旗だという。

 新中国連邦は中国からアメリカに亡命した実業家・郭文貴氏とトランプ大統領の元側近(元首席戦略官)のスティーブ・バノン氏が呼びかけて設立された団体。中国共産党による専制支配を打倒し新たな国家を建設することを目指しているようだ。公式サイトには、日本にも下部組織があることが書かれている。

 このデモのシュプレヒコールが「反中国共産党」を全面に押し出していることや、中国系の参加者が多かったのは、もしかしたら新中国連邦の関係かもしれない。

 デモが終着点の丸の内に着くと、参加者たちがアメリカ国旗やプラカードなどを主催者に返却して解散。この光景から、大規模なデモ隊が掲げていた旗、プラカード、のぼり、横断幕の多くは、主催者が用意して参加者に貸し出していたものだとわかる。

 主催団体は、「トランプ米大統領支援集会・デモ実行委員会」。新中国連邦との関係はわからないが、新中国連邦の旗は主催者による回収場所から少し離れた一角で回収されていた。しかしデモ中、先導車の運転手は新中国連邦の旗を片手に運転をしていた。主催団体とそれなりに近いところに、新中国連邦が関わっていることは間違いなさそうだ。

 「トランプ米大統領支援集会・デモ実行委員会」も幸福の科学信者たちと同様に、バイデン氏の当選が事実上確実となった後の12月20日にも大阪でデモ行進を行っている。こちらは残念ながら取材に行くことができなかったが、YouTubeなどで見る限り、新中国連邦の旗は見当たらなかった。代わりに、東京でのデモに比べて韓国旗や内モンゴル旗が多かった。

 シュプレヒコールは東京でのデモと同じ。トランプ氏支持と同時に、反中国共産党を前面に出したものだった。

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◆QアノンならぬJアノン?

 アメリカでは、アメリカ政府が悪魔崇拝者や小児性愛者の秘密結社によって支配されており、その勢力と戦っているのがトランプ大統領であるとする陰謀論者たちがおり、その陰謀論は「Qアノン」と呼ばれる。

 日本では最近、Twitter上などで、日本でアメリカ大統領戦の不正などを主張するトランプ支持者などを「Jアノン」と呼ぶ人々もいる。本記事の幸福の科学の部分で触れた街頭演説の内容にも「ディープステート(影の政府)と戦うトランプ大統領」というたぐいの主張が見られた。アメリカ大統領選挙の結果を不正によるものとする主張も陰謀論的に思える。

 ただ、Jアノンと評される日本のトランプ応援デモでは、アメリカ国内の情勢にまつわる陰謀論より「反中国共産党」という共通点の方が強い印象だ。幸福の科学信者のトランプ応援デモは直接中国共産党批判をする内容ではなかったが、幸福の科学や幸福実現党はもともと中国や北朝鮮の脅威を理由に日本の国防強化を謳い核武装も主張してきた。

 そしてJアノンはやたらと顔ぶれが多様だ。幸福の科学信者もいれば統一教会分派がらみの団体もいる。日本のヘイトスピーチ活動家もいた。外国人とおぼしき参加者の割合が高いデモや集会もある。

 Qアノンはアメリカの極右勢力の一つとして扱われるが、Jアノンは必ずしも「日本のナショナリズム」とは限らない。「反中国共産党」という一致点に、様々な立場の人々が集っている(もしかしたら本家アメリカのQアノンも実態は似たようなものだったりするのかもしれないが)。

 加えて、幸福の科学信者のデモに関して言えば、バイデン氏の当選が事実上確定した後の方が参加者数が多かった。「トランプ米大統領支援集会・デモ実行委員会」によるデモについても同様だったかのようなTwitter投稿が、参加者によってなされていた。様々な団体・勢力間の交流や便乗が進んでいるのではないか。

 幸福の科学信者のデモは、米連邦議会で選挙人による投票結果の承認が行われる1月6日にも都内で開催されるという。新中国連邦も、今年できたばかりの団体だけに、様々な活動や連携を模索していくだろう。

 Jアノン的な運動が、バイデン氏が大統領に就任した後にも尾を引くか、あるいは混沌とした顔ぶれのまま「反中国共産党運動」として継続しそうな気配も感じる。幸福の科学信者の演説では、日本の選挙でも不正が行われているとする「ムサシ陰謀論」にも言及されていた。Jアノンが日本版陰謀論と合体してしまう可能性も頭をよぎる。

 むしろバイデン氏が大統領に就任し大統領選が決着した後の方が、Jアノンはややこしい「発展」を見せるのかもしれない。

<取材・文・撮影/藤倉善郎>

【藤倉善郎】

ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)

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