コロナ禍のファミレス狂騒曲―かつての関西大手「フレンドリー」、新型コロナを機に「脱ファミレス」を決断

コロナ禍のファミレス狂騒曲―かつての関西大手「フレンドリー」、新型コロナを機に「脱ファミレス」を決断

かつての関西大手ファミレス「フレンドリー」の店舗(大阪府守口市) 現在は系列うどん店「香の川製麺」に転換している。

◆関西圏の30代以上なら誰もが知るファミレスが消滅へ

 コロナ禍のなか、業績悪化に苦しむ大手ファミレスたち。各社ともに急速な合理化に迫られ、なかには大規模な店舗整理に乗り出す企業もみられるようになった。

 京阪神を中心に多くのファミレスを展開し、永年にわたって関西大手のファミレスとして親しまれた「フレンドリー」(本社:大阪府大東市)もその1つだ。

 2018年より大手ファミレス「ジョイフル」(本社:大分県大分市)出資のもとで経営再建を進めていた同社であったが、なんと新型コロナ禍を機に主業を捨てる、つまり、「ファミレス業態の店舗を全て閉店する」決断を下したという。

◆「ファミレス」と「居酒屋」で成長を遂げた関西大手「フレンドリー」

 フレンドリーは1954年に重里善四郎氏により寿司店「すし半」として大阪市の新世界で創業。マクドナルドが銀座に日本初進出したのと同年である1971年には、早くものちの主力業態となるファミリーレストラン「フレンドリー」の前身を大阪府大東市に開店させており、国内におけるファミレスチェーンの先駆け的存在でもあった。ちなみに和食ファミレスとして知られる「和食さと」の創業者である重里進氏は善四郎氏の弟にあたり、兄弟は揃って「関西のファミレス王」となった。

 その後、関西にも「すかいらーく」「ロイヤルホスト」など他地域に本社を置く大手ファミレス各社が相次いで進出したことを受けて、1980年代後半からは米国大手ハンバーガーチェーン「カールスジュニア」とFC契約を締結したほか、イタリアンや海鮮レストラン業態に参入するなど経営の多角化を進めた。

 そうしたなか、21世紀に入って以降、競合との差別化を図るべく力を入れたのが「居酒屋業態」であった。2000年代には新業態として居酒屋「源べい」「土筆んぼう」などの展開を開始。2009年9月にはセルフ式讃岐うどん専門店「香の川製麺」、2010年には都市型の駅前居酒屋「新・酒場 なじみ野」、2013年9月にはハワイ料理で勝負を挑んだファミレス「フレッシュフレンドリー」など様々な新業態を開発し、「ファミレス」と「居酒屋」の両輪による成長を目指した。

しかし、競争激化により経営不振から脱却できなくなった同社は、2014年8月には政府系ファンド「地域経済活性化支援機構(REVIC)」傘下から約10億円の出資を受け、既存店を「低価格業態」に転換すべく、2016年4月に低価格海鮮居酒屋「マルヤス水軍」を、2017年10月に低価格カフェレストラン「ゴッツ」を立ち上げ、経営再建に挑むこととなった。

◆祖業の「ファミレス」を捨て「うどん店」で「withコロナ」へ

 フレンドリーの経営が悪化するなか、手を差し伸べたのがファミレス業界3位の「ジョイフル」だった。

 ジョイフルは西日本では「低価格ファミレス」としておなじみの存在であり、低価格業態の開発による再建を目指していたフレンドリーにとって同社の支援を受けることは理にかなっていた。

 しかし、提携の理由は単にそれだけではないと思われる。実は、ジョイフルの創業者である穴見保雄氏は、1970年代に食肉卸業者を通じてフレンドリー創業者で業界の先輩であった重里善四郎氏と知り合い、ファミレス運営の指導を受けたという恩がある。そのこともあってか、ジョイフルは現在までフレンドリーと直接競合するエリアにはあまり出店していなかった。つまり、フレンドリーにファミレスのノウハウを学んだジョイフルは成長を遂げ、窮地に陥った旧師に恩返しするかたちとなったのだ。

 かくして2018年5月にジョイフル傘下となったフレンドリーは、提携による物流の効率化などによる経営再建をおこなうこととなった。そこを襲ったのが、新型コロナウイルスの感染拡大だった。

 フレンドリーは緊急事態宣言にともなう店舗の休業・営業時間短縮を受け、2020年4月にジョイフルから5億円の資金借入を実施。資金調達による経営の安定化を目指しつつ5月中には一部の居酒屋で営業を再開した。しかし、都心部を中心に休業したままとなった店舗も少なくなく、5月8日には2020年3月期の決算発表を延期、5月22日には多くの店舗が休業したまま決算発表再延期と株主優待の廃止を発表するなど、先行き不透明な状態となった。

 とくに、同社が21世紀に入って経営の柱の1つとしてきた「居酒屋」は、都市部(京阪神)の店舗が多いこともあって一部営業再開後も客足が戻らない状態だったという。6月4日には全70店舗のうち半数超となる41店舗の閉店を発表。これまで「居酒屋」と「ファミレス」を経営の両輪としてきた同社であったが、2020年秋にはうどん店「釜揚げ讃岐うどん 香の川製麺」以外のすべてを閉店するに至ってしまった。

◆「うどん店」に光明を見出す

実は、苦戦が続いていた同社のなかで唯一順調に店舗数を伸ばしていた業態が、この「釜揚げ讃岐うどん 香の川製麺」だった。

 香の川製麺は生まれてまだ10年ほどであり、同社にとってはまだ新しい「実験的業態」であった。しかしジョイフル傘下入り後は、2019年3月から大分県内(ジョイフルの本社は大分県である)のうどん店で見られる「365日3玉まで増量無料サービス」を開始したほか、7月にはうどん1品につきサイドメニューが無料となる「学割定期券」(500円)を導入するなどサービスと料金体系を刷新することで人気を集め、その後はフレンドリーなど系列不採算店20店舗を次々に香の川製麺へと転換。僅か2年で店舗数は5倍に、うどん店の売上高は10億円を超える規模へと成長した。

 同社によると、「香の川製麺」業態の拡充には同社が所有する既存の設備を活用することができるといい、今後も大きな投資をおこなうことなく、閉鎖店舗など遊休不動産を活用するかたちで「香の川製麺」業態を増やし、経営の立て直しを図っていく方針だという。

「うどん店」はこれまで同社の主力業態であった「居酒屋」や「ファミレス」よりも客単価は大幅に低いと思われる。一方で、その客層は1人客や少人数が多く、さらに客回転率(店舗滞在時間)も高い。そのため「居酒屋」や「ファミレス」よりも「withコロナ」時代にあった業態であるといえる。

 コロナ禍を機に主業を捨て、「withコロナ」に合った業態のみに絞ることで生き残りを図るかつての大手ファミレス。

 もちろん、ファミレス業界と同様にうどん業界も競争が激しいことには変わりない。苦しい時代のなか、関西で高い知名度を誇った屋号「フレンドリー」を捨てたことは果たして吉と出るのであろうか。まさに「捨て身」の挑戦は始まったばかりだ。

<取材・文・撮影/淡川雄太 若杉優貴(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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