カルト業界も様々な動きがあった2020年を振り返る

カルト業界も様々な動きがあった2020年を振り返る

カルト勢が呉越同舟していたトランプ支持デモ

 2020年も「カルト問題」に関連する様々なニュースがあった。その中から独断と偏見で10大ニュースを選んでみたい。やはり「カルト業界」にも新型コロナウイルス関連のトピックスが目につくが、一方で、政治に関わる話題も多い。順番に見ていこう。

◆10位:「ミイラ事件」ライフスペース残党が豊島区倫理法人会に集結

 1999年に千葉県のホテルでミイラ化遺体が発見された自己啓発セミナー団体「ライフスペース」(SPGF)のミイラ事件。「ヒゲのグル」として知られた代表者・高橋弘二はすでに死去し、ライフスペースは表向き活動を停止。しかしその妻やミイラ事件で逮捕されたメンバーなどが豊島区倫理法人会に入会し、ライフスペース幹部で事件を「冤罪」と主張する活動を続けてきた釣部人裕氏が同会会長におさまっていたことがわかった。

 全国の倫理法人会を束ねる本部にあたる一般社団法人「倫理研究所」の担当者は、筆者の首位罪に対して、釣部氏がライフスペース幹部であることは知らなかったと語った。こうした取材や報道により倫理研究所側はすでに現状を認識しているが、現在も釣部氏は豊島区倫理法人会の会長のままだ。

ミイラ事件のライフスペース残党が豊島区倫理法人会に集結中<シリーズ「風化」するカルト問題・第1回>(ハーバー・ビジネス・オンライン)

◆9位:統一教会、総裁指示による名称変更をうやむやに

 統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の韓鶴子(ハン・ハクジャ)総裁が4月1日に、教団名を「天の父母様教団」に変更することを宣言した。ところがなぜか翌月、韓総裁は前月宣布した新教団名を何の説明もなく封印。全ての「摂理機関」(統一教会の教えを広めるための「統一運動」を推進する各教団関連団体)を包括する新組織「天の父母様聖会」の設立を発表した。今後、たとえば「天の父母様聖会 世界平和統一家庭連合」といった調子で、各団体の名称の前に包括組織の名称が冠されることになる。

 これまで統一教会は、国際勝共連合その他のいわゆる「フロント組織」を教団とは別団体であると主張してきた。しかしこの変更により、各フロント組織は名実ともに統一教会と同じく「天の父母様聖会」の傘下団体となる。

〈参照:統一教会が組織再編、全摂理機関と共に新包括組織『天の父母様聖会』の傘下に。政治家対策に影響も<政界宗教汚染〜安倍政権と問題教団の歪な共存関係・第28回>(HBOL、鈴木エイト氏)

◆8位:幸福の科学学園がコロナ休校要請を拒否

 新型コロナウイルスの感染が広がる中、政府は4月7日に7都府県を対象とする緊急事態宣言を発し、16日にその対象を全国へ拡大した。これに伴い、都道府県知事が学校に対して要請する形で、私立も含め全国の小中高校の大半が休校に入った。しかし幸福の科学を母体とする学校法人幸福の科学学園が運営する2つの幸福の科学学園(那須校=栃木県那須町、関西校=滋賀県大津市)の2校はこれを受け入れず授業等を継続した。緊急事態宣言が解除されるまで、両校はそれぞれ「県内地唯一の休校しない学校」を貫いた。

〈参照:幸福の科学学園が2県で休校要請に従わず授業継続中。未成年信者に感染リスク(HBOL)〉

◆7位:幸福の科学大学、認可申請取り下げ

 その学校法人幸福の科学学園は、「幸福の科学大学」を開設すべく文科省に申請を行っていたが、7月31日付で取り下げていたことが9月に入って判明した。共同通信などが報じた。同学校法人はウェブサイトで「審査の過程で、本学が目指す教育の実現が難しくなると考えるに至り、今回の申請を取下げる判断を致しました」と、その理由を説明している。

 同大学は2014年にも申請していたが、文科相の諮問委員会である大学設置・学校法人市議会が「科学的合理性が立証できていない『霊言(霊言集)』を教育の根底にすえるということは、大学の目的を達成できるものとは認められない」として不可を答申。不認可とされた。また、審査の過程で文科省職員を脅すなどしたとされ、当時の下村博文文科相から5年間は認可しないとする異例のペナルティを課された。しかし翌2015年に無認可のまま「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」として開業していた。

◆6位:日本でトランプ大統領応援運動が活発化

首相官邸前で開かれたトランプ支持集会(2020年11月12日)

 11月3日に投票が行われたアメリカ大統領選挙で、バイデン氏が過半数の選挙人を獲得。これに対してトランプ大統領側は選挙で不正があったなどとして訴訟を起こすなどしたが、日本でもトランプ氏を応援するデモや集会が頻繁に繰り返されるようになった。

 日本のこうした運動には、統一教会の分派であるサンクチュアリ協会の関係者が関わる団体や、幸福の科学の信者たち、法輪功など、様々な宗教団体が関わっている。

〈参照:日本で繰り返されるトランプ応援デモの主催者・参加者はどんな人々なのか(HBOL)〉

◆5位:新型コロナウイルスの影響でカルトのSNS勧誘が活発化

 新型コロナウイルスの影響で全国の大学がインターネットを利用した「リモート授業」に移行し、特に4月から秋ごろまでは大学での講義や行事が軒並み行われず、入試合格以来一度もキャンパスに行っていないという新入生もいた。

 カルト集団の中には、自宅でインターネットを利用する機会が増え自然とSNSの利用機会も増えた大学生を狙って、SNS上での大学生勧誘に力を入れる団体も現れた。そのためカルト問題に取り組む専門家や大学関係者が警戒感を強め、すでにメディアなどを通じて注意を呼びかけている。

 カルト集団も自団体での大規模集会などは自粛しているケースが多い。しかし勧誘活動については逆で、SNSだけではなく、戸別訪問も含めた対面での個別勧誘に力を入れるよう信者に呼びかけているケースもある。

〈参照:カルト宗教被害から学生守ろう 県内12大学の教職員ら意見交換(山陽新聞)〉

◆4位:島田裕巳氏がハッピー・サイエンス・ユニバーシティで講演

 かつてオウム真理教を称賛、擁護して批判を浴びた宗教学者の島田裕巳氏が、前出の幸福の科学「ハッピー・サイエンス・ユニバーシティ」(HSU)の非常勤講師就任を打診されていることが判明した。また島田氏は11月15日に開催されたHSU祭で講演も行った。

〈参照:島田裕巳氏が幸福の科学HSUで講演、来春の非常勤講師就任に向け交渉中(やや日刊カルト新聞)〉

◆3位:統一教会フロント組織のイベントに三重県や四日市が後援や補助金

 ジャーナリストの鈴木エイト氏によるスクープ。三重県と四日市が後援し市制施行123年周年記念事業として多額の補助金が交付されて11月29日に開催された「ファイト三重!県民まつり」に、統一教会のフロント組織や関係者が深く関わっていた。

 統一教会のフロント組織である三重県平和大使協議会が県や市とともに後援に名を連ね、主催者である「ファイト三重!県民まつり」実行委員会の主要メンバーの複数が、教団及び教団フロント組織の関係者やフロント組織と関わりを持つ地方議員たちだった。鈴木氏の取材によって、同実行委員会の事務局担当者も、教団の別のフロント組織の事務部長だったことなども判明した。

〈参照:地方イベントに食い込む統一教会フロント組織。三重県四日市市のイベントに多額の補助金交付も、統一教会フロント組織が食い込むイベントに後援の三重県・四日市市に危機感なし。勧誘に繋がる危険性も弁護士は指摘、統一教会フロント組織が仕切る地域イベント、現地取材で見えたもの(以上、HBOL、鈴木エイト氏)〉

◆2位:韓国で新天地イエス教会が新型コロナ感染を拡大させる

 韓国の新宗教団体「新天地イエス教会」で2月、大邱(テグ)市の教会で礼拝した信徒らの新型コロナウイルス集団感染が確認された。2月22日には韓国の感染者数は433人と発表されており、この時点ではその8割近くが新天地イエス教会の信者であると報じられた。

 もともと宗教行事で感染が広まる危険性は指摘されており、現にこれ以降も世界中の様々な宗教施設での感染が確認されている。

 しかし新天地イエス教会については、感染者した信者が病院を抜け出して礼拝に参加した上に大邱市内のホテルで食事をするなど移動しまくったと報じられたことや、韓国での感染者急増の端緒だったこと、さらには教会側が感染した信者に関する情報を韓国当局に対して出し渋り接触者の追跡を困難にしたとされたことなどから、大炎上。教祖・李万熙(イ・マンヒ)は土下座謝罪にまで追い込まれたものの、8月に逮捕された。

 また新天地イエス教会はもともと、他のキリスト教会に対する乗っ取り等の謀略的な手法で勢力を拡大しているとされ批判されていた。この関連で、集団感染発覚後、宗教法人の認可を取り消されたと現地メディアは報じている。

◆1位:安倍カルト内閣が退陣し菅カルト内閣が成立

 安倍晋三首相の突然の辞任により、9月16日に菅義偉新内閣が発足した。首相辞任の直前の時点で統一教会との関わりを持つ閣僚11人を抱えた安倍内閣だったが、菅内閣ではこれが若干減りはしたものの9人と、相変わらずの多さ。それ以外にも、社会的に問題市され批判を浴びている団体等と関わりを持つ閣僚の数は、安倍内閣と殆ど変わらなかった。

〈参照:統一教会系閣僚9人。安倍政権と変わらぬ菅政権の「新宗教・スピリチュアル・偽科学」関係、安倍政権同様、親学・EM菌にも近しい菅政権閣僚たち、オカルト・疑似科学団体と密接な下村博文自民党政調会長。ワールドメイト系から500万献金の大臣も(HBOL)〉

<文/藤倉善郎>

【藤倉善郎】

ふじくらよしろう●やや日刊カルト新聞総裁兼刑事被告人 Twitter ID:@daily_cult4。1974年、東京生まれ。北海道大学文学部中退。在学中から「北海道大学新聞会」で自己啓発セミナーを取材し、中退後、東京でフリーライターとしてカルト問題のほか、チベット問題やチェルノブイリ・福島第一両原発事故の現場を取材。ライター活動と並行して2009年からニュースサイト「やや日刊カルト新聞」(記者9名)を開設し、主筆として活動。著書に『「カルト宗教」取材したらこうだった』(宝島社新書)

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