米大統領選不正選挙説に熱を上げる門田隆将氏に見る、日本の保守界隈の「ネットde真実おじさん」っぷり

米大統領選不正選挙説に熱を上げる門田隆将氏に見る、日本の保守界隈の「ネットde真実おじさん」っぷり

2015年に上海で講演を行う門田氏(時事通信社)

 現在、我が国は、菅義偉政権に忍耐と貧乏を強いられる菅支配の下、日本全体が貧窮状態に陥り、その痛みを軽減する為、「日本凄い」的な神話に郷愁を抱き、平然と中韓に対する排外主義を公に表現する国に成り果てています。しかし、そんな流れに逆行するべく、「日本のエセ保守の非合理性、瑕疵を打ち砕き、愛国神話の脱皮を目指す」本連載。前回は、竹田恒泰氏の歴史観を紹介して今回は、第4回目。陰謀系不正選挙tweetで話題の評論家、門田隆将氏を取り上げたいと思います。

◆門田氏がのめり込む「ドミニオン疑惑」とは

 もはや説明は不要でしょう。門田隆将氏とは、虎の門ニュースや文化人放送局ではお馴染みの保守系文化人の一人であり、映画『Fukushima50』の原作者です。で、何故今、門田氏かというと、最近、門田隆将氏に対し「心配の声」が続出しているのです。

 というのも、先日の大統領選をめぐり、門田氏が、根拠なき与太話をなんの注記も添えず、Twitterで垂れ流しまくってると炎上し、その姿が「狂気的」と結構巷で話題になってしまったのです。

 で、今回は、門田隆将氏が垂れ流した大統領選の与太話を、大統領選の不正の話題も下火になって来たので、一つ一つ振り返ってみようと思います。

 アメリカ大統領選においては、根拠不明な陰謀を保守が拡散する光景が見られましたが、その中でも、特に門田隆将は無邪気に、根拠不明な情報に言及する文化人の一人でした。

門田隆将の流した不正疑惑の中で一番極めつけの一つは「ドミニオン疑惑」です。

 ドミニオン疑惑を知らない人に説明しましょう。ドミニオンとは、投票機・ソフトウェアなどを提供している会社のサービスの事です。このドミニオンが不正な操作をされて「過大にバイデン票が増えた」というのがトランプの主張だ。以下門田氏もこの疑惑について同調し、さも「何か裏に陰謀がありそう」な語り口でこの疑惑を煽情的にツイートしておられます。

 以下、門田氏のツイートから抜粋。

“ジョージア、ペンシルベニア、ミシガン、ウィスコンシン、ネバダ、アリゾナ6州は「逆転する可能性がある」と語ったトランプ弁護団。だが予想通り、報道なし。それにしても“6〜10万のバイデン票が3回ずつカウントされた”というドミニオンは恐ろしい。「全て法廷に提出する」との証拠の中身が興味深い“

“「トランプ弁護団が日本時間未明に1時間半を超える長大な会見。「これは地球上で最大の選挙詐欺であり、最悪の犯罪。もうマスコミは“証拠がない”と嘘をつくのはやめよ」とジュリアーニ氏。さらにドミニオン、Antifaにも踏み込んだパウエル氏。日米のマスコミはどう報じるのか“

 とても興奮しているのだな……と熱気が伝わってくるツイートです。まるで公園でドングリを見付けた少年の様にです。

 しかしこのドミニオン疑惑は早い段階で「デマの可能性が高い」事が判明していました。選挙調整評議会のメンバーが、今回の選挙で「投票システムが投票を削除、投票を変更した、または何らかの形で妥協されたという証拠はありません」と結論付けています(*1)。

◆ドミニオンを採用したのはそもそもトランプだった

 しかもこの疑惑は、トランプ寄りの「FOX」にまで否定的な記事を書かれています。

 理由は明快。まず有権者が投票する。その次に、ドミニオンのタッチパネルで投票用紙に記入する。その次に、投票機から投票用紙のコピーが印刷され、有権者は、そのコピーを見て、自分が望む選択をしたかを確認し、地方選挙の役人に手渡す。つまり不正が起きたのであれば、保管された投票用紙のコピーを数えたら立証できるわけです。しかしながら、ジョージア州では、印刷された投票用紙が電子集計と一致したと結果も出ているのです(*2)。

 しかもトランプ側の主張する「ドミニオン」疑惑は、不正がなければミシガンで勝っていたという主張となっていくのですが、国務長官によれば、ミシガン州ではドミニオン投票機はバイデンよりもトランプに多くの票を投じていたらしいのです。なんやねんw(*3)。

 しかもこのドミニオン、トランプは今になってドミニオンは不正だ、と叫んでいますがドミニオンの投票機に「GOサイン」を出したのは、実は、他ならぬトランプ政権の側であり、選挙戦前にドミニオンは、厳正な審査や監査を設けられているが、それらは全て、トランプ政権の間に厳格にテストされ、認定されているのです(*4)。

 さらにトランプは選挙中盤に「フロリダ州とオハイオ州の両方で優勝し、負けた候補者はいません。私は多くのことで、両方を獲得しました!」と意気揚々とにツイートしたが(*5)、そのトランプが勝ったフロリダ州とオハイオ州はドミニオンが使われている州だったのです。もはやギャグです。

◆お仲間であるはずのケント・ギルバート氏にすら見放される始末

 このように月刊ムー並みに怪しいドミニオン疑惑なのだが、しまいには保守系のケント・ギルバートにすら「わたくし自身は、このドミニオンの機会によって不正が行われたということは「ない」と自分では判断しております」と見放される始末。トホホ。(参照:〜まさかの敗北宣言か!? 〜トランプ氏の当選への道筋の可能性 米政権移行開始〜ケント・ギルバートチャンネル)

  各方面から信憑性に乏しいと言われているにも関わらず、門田隆将氏はめげずに次々に燃料を投下し、まるで少年が珍しい昆虫を見付けた様に、無邪気に、根拠不明な情報を垂れ流し、ツイッター上で怪気炎を上げ続けています。

“私が不思議なのは「バイデン7800万票」に日米のマスコミが何の疑問も差し挟まない事だ。ドミニオン疑惑、二重投票、死者による投票、立会人排除の上の開票、大量に持ち込まれた謎の郵便投票等、多くの問題提起を念頭にこの図を見て欲しい。何も感じないなら記者をやめなさい“

 すごくご立腹の様子です。コレを見て何も感じなければ大上段から記者をやめなさいと激オコ。そのわりに、情報量が多くネタを投下しておきながら、全くソースが示されてないのは、そっちの方が記者としてどうなんだと思うのですが、しかもさらに、ここで述べられる疑惑も、低品質のガセネタである可能性が高いときています。

 まず門田氏がTwitter上に挙げた「二重投票」は、既に訴訟では却下されていて(*6)、次の「立会人の排除」も、これは監視員が投票数を目撃するのを阻止されたというトランプの主張だが、選挙当局者にトランプ陣営の主張は虚偽であると否定されています(*7),(*8)。

また「死者の投票」の件は、確かにトランプの訴えるケースが存在しており、アメリカ在住の男が、死んだ母親を装ったとして、有権者詐欺の罪で起訴されているが、しかし、それはバイデンではなく、トランプに票を投じていたものでした(笑)(*9)。

 こんな感じに、真っ当な記者であれば取り扱わない胡散臭いガセネタばかりで辟易してしまいます。

◆質の悪い「与太話」を真剣に垂れ流す門田氏

 ああ、最後の「大量に持ち込まれた謎の投票用紙」の件(これは投票用紙を机の下に密輸したと主張したトランプ陣営の流した監視カメラの疑惑なのだが)。これはジョージア州務長官と州選挙委員会の高官が既に否定していて、実際にはこの「旅行バック」は不在者投票に使用される標準的な箱であり、ジョージア州の選挙当局のトップによって、中に入っていた投票用紙は「普通の投票用紙」だと証言されています(*10),(*11),(*12)。

 このようにことごとく胡散臭い与太話なのですが、最後に極めつけとして、門田氏が、バイデンの「不正投票組織」発言についてツイートした事を挙げましょう。

“「単に言い間違えたのだろう」と笑っていたバイデン発言がクローズアップ。例の「我々はかつてない最大規模の不正投票組織を設立した」とのご覧の発言だ。支持者は唖然として沈黙。だが言い間違いでなく「実際に何かある」とトランプ陣営は調査・警戒していた。法廷ではこの映像も話題を呼ぶだろう“

 なんと門田氏は、このバイデンの「不正投票組織」発言が、法廷の証拠になると思っているらしいのです。なんというかその「おめでたさ」に眩暈がしそうになってしまいます。大丈夫なのでしょうか。

 これは文脈が切り取られた動画で、バイデンが選挙詐欺の為に不正投票組織を設立したのではなく、有権者の詐欺と戦うための「選挙保護プログラム」の奨励を言い間違えただけなのだ(*13)。

  このように、かなり質の悪い「与太話」を真剣に垂れ流す門田氏なのだが、未だに訂正もしない所を見ると、これは致命的なレベルに色々問題があるんじゃないかと思わざるを得ません。

◆門田氏のトンデモ主張は今に始まったわけではない

 門田隆将氏は、まるで塵芥な陰謀論を信じ込むネットで真実おじさんだと言うことがはっきりしてきました。しかし、私は、今になって門田氏がそうなったのではなく、むしろ元から、そんな人間だったのではなかったのかと疑っています。というのも、門田氏のベストセラー『新聞という病』(産経新聞出版)が、私から言わせれば「ネットで有象無象存在する塵芥なゴミ情報を受け取りコピペしたゴミ本」だからです。

 まずこの『新聞という病』ってタイトルから予想が付きますが、中身のほぼ大変が、「朝日新聞の悪口」に占められ、特に識者の注目を引くに足るべき創見もない本だ。本を開けば、毎回(見飽きた主張)「世界各地に従軍慰安婦像を建てた元凶は朝日」が全編、恨み節の様に語られ、延々と続きます。以下抜粋。

 “事実に基づかないまま「慰安婦=性奴隷」を世界に広めた朝日。“(p95)

 “いまだに謝罪を求める慰安婦問題を支援していたメディアや政党も日本には少なくない。“(p47)

 このように「朝日憎し」的な愛国神話を垂れ流す門田氏なのですが、何度も言うように、この門田氏の主張は間違っています。吉田証言は、河野談話に採用されていなません。その上、さらに90年代の段階で多くの研究者が信ぴょう性が欠けると却下されていたので世界に影響など与えていない。その証拠に、米カリフォルニア州議会や、米国下院での「慰安婦制度非難」決議でも、吉田証言は採用されていないのです(*14)。

 で、さらに門田氏は、朝日新聞が慰安婦を報道し、それがクマラスワミ報告書に繋がり、世界に広まったと主張する旧来の保守が繰り返してきた否定論を再度主張します。

 “国連でクマラスワミ報告が出され、日本軍に強制連行された「慰安婦=性奴隷」という誤った認識が世界に流布されてきた。“(p112)

 これもよく5chに生息する雑魚ネトウヨが唱える言説ですが、事実誤認です。

 まず第一に、公証制度が「奴隷」という認識は、戦前の日本から存在しました。その証拠に、戦前の各県の公娼廃止決議では「公娼制度は、人身売買と自由拘束の二大罪悪を内容とする事実上の奴隷制度なり」との文言が入っています(「廃娼決議一覧」1937年)。

 さらに門田氏は、この公証制度の「性奴隷」説を否定し、慰安婦は、非人道的な待遇ではなかったと主張する従来の否定論者が散々繰り返してきた嘘を、さらに力強く、繰り返します。

 “しかし繰り返し記述してきた通り、慰安婦は性奴隷ではない。“

 “慰安婦とは業者によって当時の兵隊の数十倍の給与を保障されて募集された女性達である。“(p113)

 これもネットでしばしば見かける陳腐で凡庸な主張ですが、事実誤認です。確かに将校からチップを受け取った女性もいましたが、全く報酬もない女性も存在しました。コレは当時の日本兵の証言からも裏付けられていて、元兵士だった杉田康一氏は、従軍先の慰安婦の女性から聞いた身の上話を、後年こう証言しています。「私は一銭も貰っていません。全部親方が取り上げてしまいます」(『アジアの声 第11集』東方出版 p25)

◆「ネット de 真実」を無邪気に垂れ流す門田氏の行末は

 このように次々に基本的な戦時の資料を読み込めば分かる様な「ネットで真実系の与太話」を少年の様に垂れ流す門田少年。そして世界各国に慰安婦像を建てる韓国人に憤る門田氏。

“「ありもしない強制連行」をタテに世界中に慰安婦像を建てまくっている韓国人。“(『新聞という病』 p51)

それは全く逆です。第一に「強制連行」を「作り話だ」と主張したのは日本の右派の側であり、日本政府は、一貫して慰安婦の強制連行の事実を公式に謝罪しています。アジア女性基金のHPでは「日本軍の慰安所等に集められ、将兵に性的な奉仕を強いられた女性たちのことです」と書かれているのです(*15)。

 で、これを日本政府の「認定」だと言うと、エセ保守が「日本政府とアジア女性基金は関係ない」と言ってくるので改めて釘を刺しとくと、外務省サイト「歴史問題Q&A」というページでは、アジア女性基金の取り組みついても熱心に紹介しています(*16)。

 これで「日本政府とアジア女性基金は関係ない」というのが通用しない事は子供でも分かるでしょう。もし仮に世界に「性奴隷」的な誤った事実が喧伝されているのだとしたら、それは朝日新聞ではなく、当時の旧日本軍又は現在の日本政府が最大の主犯格です。

 このようにちょっと調べれば分かるような与太話を、正拳突きのように繰り出してくる門田隆将氏。

 市民に必要な正確な情報を伝えるというジャーナリズムの使命を、ことごとく放棄しているのは、スゴイ。これはジャーナリズムではなく時代遅れのリビジョニズムではないでしょうか。今回の一件で、日本の保守界隈のジャーナリズムのレベルの低さをあらためて再認識してしまいました。

◆ ドリーの保守系珍書・奇書セレクション 第4回

<文/ドリー>

<出典>

(*1)Joint Statement from Elections Infrastructure Government Coordinating Council & the Election Infrastructure Sector Coordinating Executive Committees | CISA  

(*2)Dominion rep tells Fox News, 'It’s physically impossible' to switch votes | Fox News 

(*3)Dominion CEO: Vote fraud claims ‘defy facts or logic’ | WOODTV.com9

(*4)Trump Is Looking for Fraud in All the Wrong Places | The Atlantic

(*5)Trump Roasted for False Claim He's First Candidate to Lose Election But Win Florida, Ohio | thewrap.com

(*6)Joe Biden Won?and Not Because of Voter Fraud | WIRED)

(*7)GOP poll watchers not excluded from Michigan count: Witnesses | US & Canada | Al Jazeera

(*8)Fact check: Trump doubles down on groundless conspiracy theory that GOP poll watchers across the country were sidelined | CNNPolitics

(*9)Trump campaign flagged dead person Bartman vote in Pennsylvania | Business Insider

(*10)Fulton County 'suitcases' during election are ballot containers | 11alive.com

(*11)Georgia Election: Ballot Suitcase Video Shows Routine Counting | National Review

(*12)Ga. officials debunk 'secret ballot suitcase;' to re-certify Biden win | augustachronicle.com

(*13)Fact check: Joe Biden misspoke about campaign's voter protections | usatoday.com

(*14)「週刊金曜日」2014年10月31日号)

(*15)慰安婦とは 慰安婦問題とアジア女性基金 | awf.or.jp

(*16)歴史問題Q&A|外務省 | mofa.go.jp

【ドリー】

本名・秋田俊太郎。1990年、岡山県生まれ。ブログ「埋没地蔵の館」において、ビジネス書から文芸作品まで独自の視点から書評を展開中。同ブログを経て、amazonに投稿した『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』レビューが話題となる。著書に、村上春樹長編13作品を独自解釈で評論した『村上春樹いじり』(三五館)がある。ツイッター:@0106syuntaro

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