大同江ビール転売で再び書類送検。警察に「北」専門チーム創設でさらなる取り締まり強化へ

大同江ビール転売で再び書類送検。警察に「北」専門チーム創設でさらなる取り締まり強化へ

北朝鮮現地版の大同江ビール640ml大瓶

◆北朝鮮製ビール、ネット転売で御用再び

 北朝鮮の地ビール「大同江ビール」を日本へ持ち込んだとして書類送検される事件が再び起こった。静岡県警磐田署は12月4日、北朝鮮で製造されたビールや焼酎などを日本へ持ち込んだとして大阪市の会社員男性を外為法違反(無承認輸入)の疑いで書類送検したと発表した。(参照:「産経新聞」)

 同様の疑いで書類送検が公表されたのは2019年7月の福岡の19歳少年による一件以来とみられる。

 発表から1か月ほど経過しているが関係者への取材でより詳細が判明してきたので改めてお伝えしたい。

◆メルカリで転売された大同江ビール

 今回、書類送検された男性が日本へ持ち込んだ大同江ビールなどを転売したのは「メルカリ」だ。大阪市在住の男性が静岡県警から書類送検された理由は、販売した相手が磐田在住者ではなく、転売舞台がメルカリだったためインターネット空間を巡回する磐田署のサイバーパトロール隊に発見されてマークされたからだ。しかも複数の道府県警察に同時に目をつけられたようだ。結果、もっとも捜査を進めていたのが磐田署だったのだろう。

 外為法は改正を重ねるたびに厳しくなり最後は2019年に改正(2020年5月8日施行)されている。

 もし、書類送検された男性が初犯であれば不起訴となるとみられる。しかし、当然ながら長時間にわたって拘束され取り調べを受けているので会社にはバレている。会社によっては解雇など処分を受けているかもしれない。

 ‘19年福岡の転売舞台は「ヤフオク!」だった。事件を受けてヤフオク!は自主規制を敷いて大同江ビールなど北朝鮮の酒類出品を削除している。今回の転売はメルカリが舞台となった。と言うのも、福岡の事件後もメルカリでは出品できたため、男性はメルカリを選んだと思われる。

 事件発覚後、メルカリでも自主規制が始まり現在、出品は確認できない。正確には出品はできるが短時間で削除するオペレーションを実施してしるようだ。

 取材したある警察関係者は、今回のようにマスコミへ一斉公開するのは抑止力効果を狙っていると話す。実際にヤフオク!やメルカリで自主規制が始まっていることから警察が狙っていた抑止力は発揮していると言える。

  とはいえ、現在でもヤフオク!やメルカリでは北朝鮮バッジや切手、紙幣など”北朝鮮グッズ”の出品が大量に確認できる。ではなぜ、この大阪の男性は書類送検されたのだろうか。

◆ネットでマニアに販売される「北朝鮮グッズ」

 静岡県警磐田署が発表した内容では、大同江ビールなど北朝鮮産ビール3本と焼酎1本の計4本を日本へ持ち込み販売した疑いとなっている。これは詳細な裏取りできたのが4本だけで、自宅から押収されたとして公開された写真には、瓶の酒類だけでも20本以上確認でき、合わせてDVDやポストカード、菓子など40点ほど押収されたとのことだ。

 日本へ持ち込んだのが2019年5月なので大半が売却済みであると考えるのが自然だろう。かなり大量の大同江ビールなどを持ち込んだことが分かる。

 警察関係者によると特に厳しく取り締まっているのは酒類とたばこ、化粧品などの工業製品であるとのこと。特定の要注意品があることがポイントとなる。

 日本政府は北朝鮮への独自制裁で北朝鮮を原産地とするものの日本への輸入を禁止している。しかし、この制裁をそのまま適応すれば、すべての北朝鮮グッズが取り締まり対象となるが、北朝鮮の新聞や書籍、ポストカード、紙幣など紙媒体、製品への取り締まりは比較的に緩い。人気の指導者バッジは元々非売品であることもあり、工業製品とは見なすことが難しいこともあってか大量に転売しなければ問題視はされないのが実情となる。

◆取り締まり対象になるケースの特徴は

 もう1点ポイントがある。それは繰り返し利益を上げていると見なされるかだ。そもそも北朝鮮は特殊な国で容易に行ける国ではないため、個人で定期的かつ継続的な仕入れを行うことは現実的に厳しい。個人所有の私物北朝鮮グッズ1、2個をメルカリへ出品しても利益なんてたかが知れる。

 大瓶の大同江ビールは平壌の外国人向け売店で購入すると1本8元(約125円)くらいで買えることは調べれば分かる。125円のビールをハンドキャリーで日本へ持ち込み、メルカリで6000円で売ったら利益は…とまあ容易に利益は計算できるわけだ。

 どうやら不当な利益を継続的に得ていると判断されると取り締まり対象に浮上しやすくなるようだ。

 福岡と静岡の2件で共通するのは出品数が多いことに加えて非常に目立っていたということだ。そもそも北朝鮮グッズはマニア向けに目立たないように取引をしている人が多い。それがユーザー数2216万人(ニールセン・2019年4月)もいるメルカリだったら確かに売れるかもしれない。だが、その反面、不特定多数の人の目に触れ通報もされやすくなる。

◆今後さらに取り締まり強化の可能性も

 今年、2021年はさらに取り締まりが厳しくなると予想される。4月から警視庁公安部に北朝鮮専門の新しい外事3課が新設されるからだ。外事課の組織改編は19年ぶりとなる。(参照:NHK)

 これまで北朝鮮関連は中国など東アジア地域として外事2課が担当していたが、新4課体制では新外事2課は中国とその他の東アジア担当。新外事3課は北朝鮮担当。新外事4課はイスラム過激派などを担当。ロシア担当である外事1課はそのまま横滑りする。

 警視庁の外事課強化は連携する全国の道府県警察の外事課にも影響が与えるもので今後、より北朝鮮関連への監視の目が強化されることになる。

 昨年時点では新体制が発足する前であったが、北朝鮮専門の外事課新設は数年前から決定していたので、関係者の口からは出てこないが、今回の1件も新体制発足を見越したものだと考えられそうだ。

 

<取材・文・写真/中野 鷹>

【中野鷹】

なかのよう●北朝鮮ライター・ジャーナリスト。中朝国境、貿易、北朝鮮旅行、北朝鮮の外国人向けイベントについての情報を発信。東南アジアにおける北朝鮮の動きもウォッチ。北レス訪問が趣味。 Twitter ID@you_nakano2017

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