「ストップ・リニア!訴訟」で、突然7割の人が原告から外される! 「なぜ今さら」の怒りの声

「ストップ・リニア!訴訟」で、突然7割の人が原告から外される! 「なぜ今さら」の怒りの声

山梨県のリニア実験線を走るリニア実験車両

◆リニア訴訟で、原告782名のうち532人の原告が外される

 昨年12月1日11時。782名の原告のうち、約7割の532名が原告から外された。

 国土交通省を相手取り、リニア中央新幹線の事業認可の取り消しを訴えていた「ストップ・リニア!訴訟」。2016年5月の提訴以後、開催された口頭弁論は17回。リニアが通る1都6県に居住する原告住民の意見陳述を展開してきた。

 その第17回口頭弁論は、ちょうど1年前の2019年12月20日。原告団は、2020年以降は原告・被告双方の証人尋問に焦点を当てての法廷闘争を考えていた。だがその日、古田孝夫裁判長は「来年(2020年)3月に原告適格の中間判決を出す」と表明した。

 これは「782名から原告適格者でない者を原告から外す」ということだ。

◆「なぜ17回も口頭弁論を重ねて、今さら『原告適格』なんだ」

 782名の属性はさまざまだ。原告団によると、原告は以下の3つの類型に属する。

@リニアに乗車するであろう人。南アルプスの自然環境の破壊を懸念する人。つまり、原告の居住地はリニア計画沿線周辺とは限らない。

Aリニア計画ルート近くに住むため、騒音や日照障害や景観阻害を懸念する人。ルートから離れていても、リニア関連車両の通過による大気汚染や、リニア工事による水質汚濁・水資源喪失を懸念する人。

Bルート周辺に土地、借地、借家、立ち木トラストなどを有する人。

 原告団や弁護団は、「なぜ17回も口頭弁論を重ねてきたのに、今さら『原告適格』なんだ」と訝ると同時に、それぞれの原告はそれぞれの予測をした。

 もしかしたら、全原告が外れるのでは? 意外と、全員が適格扱いされるのでは? ルート直上・直下・周辺に住む住民だけは認められるのでは? @は外されるのでは? など。

◆どんな人たちが「原告適格者」とされなかったのか

 そして、2020年12月1日11時に判決が言い渡された。原告から外されたのは@とBの計533名。

 @については全員が外された。その理由は、判決文にはこう書かれている。「各個人が乗客になる可能性はあくまで潜在的かつ抽象的なものにとどまる」

 Bには、山梨県中央市の桑畑に展開する立ち木トラストのオーナーで、裁判の原告になっている人は296名もいるが、全員が除外された。また、神奈川県相模原市鳥屋で建設予定のリニア車両基地予定地にある地元住民の土地に、借地権を設定してトラスト運動を展開する11名も除外された。

 判決文を要約すると、「立ち木トラストや土地トラストの所有権は、直ちに制限が加えられるわけではない。訴えは土地収用の段階ですべきだが、土地収用法による土地収用も必ずしも行われるものではない」ということだ。

 これには、実際に土地トラストで借地権を設定している原告の一人は「え〜、私が外れるの」と驚いていた。つまり、Bで原告適格者とされたのは土地所有者だけだったのだ。

 Aについては、判断が分かれた。原告団の天野捷一事務局長は神奈川県川崎市民だが、「川崎市の原告89名は全員が認められた」とほっとしていた。

「川崎市は、リニアが大深度(概ね地下40m以深)を通過するので、非常口周辺とそこからの残土運搬などの工事車両の通行を除けば、地上での被害は発生しません。でも、川崎市の水源は、リニアが通過する相模原市にある4つのダム湖(相模湖、津久井湖、丹沢湖、宮ケ瀬湖)と周辺河川です。裁判所は、リニア工事がこれら水源の水質や水量に影響を与える可能性があるとして、川崎市の原告を適格者としたんです」(天野事務局長)

◆原告として認められた250名の属性は?

 具体的に書けば、以下の地域に住む原告が原告適格と認定された。

?水源の水を飲料水、生活水、農業用水として利用している地域

?リニア走行ルートから800m以内の地域

?工事関係機械による騒音・振動に関し、リニア関連施設(非常口、駅、保守基地など)から200m以内の地域

?工事関係機械による大気汚染に関し、施設から120m以内の地域

?地盤沈下に関し、トンネルから100m以内の地域

?日照阻害に関し、施設から110m以内の地域

 これが「原告適格者」250名だ。

◆「まったく理解できない」と、外された原告は控訴の予定

 こうした結果であるが、関島保雄弁護団共同代表が「まったく理解できない!」と憤ったのが「残土運搬車などのリニア関連車両がもたらす騒音・振動・大気汚染などを怖れる原告」が除外されたことだ。その判決理由は「そういう施設概要や運搬ルートが判らない以上は、誰が原告かも判るはずもない」からだという。

「これはまったくおかしな判断です。なぜなら、裁判のなかで私たちは再三、『リニア施設の具体的な広さや形状、そして、実際の残土処分地とそこに至る運搬ルートがわかれば、被害を受ける住民は特定できる。まずは施設の概要や残土運搬ルートなどを示してほしい』と訴えていました。だがついにJR東海はそれを示さなかった。それが示されないままで原告を外すのは、とうてい納得できません!」(関島弁護士)

 また、原告団長である川村晃生さんも上記?〜?に該当しないと除外された。川村さんは「今回の判決は、いわば『個別的利益』だけを認め、自然環境保護やリニアの安全性を求める声を無視した。外された原告はすぐに控訴します。そして高裁で、自分たちには原告適格があることを認定してもらう闘いを展開します」と結んだ。

<文・写真/樫田秀樹>

【樫田秀樹】

かしだひでき●Twitter ID:@kashidahideki。フリージャーナリスト。社会問題や環境問題、リニア中央新幹線などを精力的に取材している。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)で2015年度JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。

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