新型コロナ対応、統計で歴然とわかる日韓台の「明暗」

新型コロナ対応、統計で歴然とわかる日韓台の「明暗」

2020年、年の瀬の新橋 Ryuji / PIXTA(ピクスタ)

◆大きく感染者数が増大した1月第2週。日本の現状は?

 本記事は、筆者にとっては今年最初のHBOL連載記事となります。昨年末の新型コロナ感染症シリーズ35では、第3波エピデミックに筆者が最も恐れていた第三次加速が観測されたことを述べたところで終えました。

 その後、年末年始の自由検査(民間検査所)の休業他、検査の著しい減少*にも関わらず日毎新規感染者数は増加を継続し、1月3日からの1月第二週にはたいへんに大きなSpikeを観察しています。

〈*本邦の COVID-19 統計には大きな欠陥がある。医師会検査は陽性のみ、自由検査(民間検査)は原則として陽性判定後医師の診断により COVID-19 感染者と診断が付いたもののみしか統計に入らない。結果、無症状感染者を中心として陽性者の統計漏れが多い。医師会検査、自由検査の陰性結果は保健所が受け取らないために検査数は著しい過小評価となっている。現在検査の多くを占める自由検査は、多くが年末年始に休業していた〉

 このSpikeは、1/2以降現れていますが、この2週間前は、12/25のクリスマス、花金、実質的仕事納め、忘年会、民間給料日、プレミアムフライデーを中心とした宴会密集日の前後に該当しており、実際、移動傾向(モビリティ)も高かったことから、筆者はその影響による一過性のものと判断しています。

 1月第二週のエピデミックSpikeは、倍加時間(感染者数が2倍になる時間)が10〜20日と極めて強烈なもので、この状態が継続すれば2月中旬には本邦は欧州並みの新規感染者発生となってたいへんなことになりますが、幸いなことにこの Spike は一時的なものでした。なお今週後半から引き続いて年末年始の大移動、挨拶回り、宴会効果が主として地方で現れ、次いで来週末には成人式と連休の影響が現れますので、今後の見通しは極めて厳しいです。

 筆者は、新規感染者数の二週間変化率と一週間変化率から新規感染者数の倍加時間を評価していますが、執筆時点で倍加時間はいまだに20日と速いです。これは20日で新規感染者の数が二倍になることを意味し、今の状態が継続すると1/14現在では7日移動平均で6千人/日を超えている日毎新規感染者数が1月末までには1万人/日を超え、2月下旬には2万人/日、3月中旬には5万人/日になる事を意味しています。そしてその2週間後までにそれら新規感染者の2〜5%(2月末時点で400〜1,000人)が毎日死亡することを意味しますので、たいへんに深刻な見通しです。

 従って、現在最も強く求められていることは、”倍加時間を引き延ばすこと=感染者との接触による感染機会を大きく減少させること”となります。移動傾向で考えると、12/29以降、移動傾向がそれまでより大阪と東京で25%程度、地方で10%程度減少していますので、それを更に少なくとも25%程度下げる必要があります。これに失敗すると医療はウィルスに圧倒されて機能を失い、社会そのものの機能が失われることになります。成功すればエピデミックは収束に向かい犠牲は抑えられ、復興に着手出来ます。

◆明暗が完全に分かれた日韓台

 世界では、「秋の波」とよばれる冬期のパンデミック、日韓での第三波エピデミックは、同じ水際防衛とクラスタ戦略をとる隣国同士且つ事実上の島国*である本邦と韓国でほぼ同時に起こり、規模が酷似した推移をとっています。また新型コロナ・エピデミック対策において世界最優秀国とされる台湾も水際防衛・クラスタ戦略であり島国*でもあります。

〈*韓国は、38度線=軍事境界線を境に北朝鮮と交流が絶たれており、防疫上は今回、島国と扱うことができる〉

 日本、韓国、台湾は、人口がそれぞれ1億3千万人、5千2百万人、2千4百万人で、どの国も高齢化が進んでいます。とくに本邦と台湾では既に人口減に転じており、韓国も人口減少が始まります。民族・人種、経済、社会発展の程度も近く、同じ旧西側陣営に属しているため、たいへんに比較に適しています。

1)台湾

 昨年2月から3月に渡り、初動の水際防衛、クラスタ戦略に大成功した台湾は、極めて理想的な推移をたどっており、2020/12/22に検疫破りをしたエバー航空のパイロット(第765例)により1件の国内感染(第771例)が発生するまで、253日間国内感染者発生ゼロが続いていました。現在までにこのクラスタは制圧されたと考えられます。

 台湾は、安全地帯=バブルが国全体となっており、マスク着用や社会的距離などの一定の制限はありますが、国内はほぼ平時と変わらない平静さを保ち、旺盛な経済・社会・文化活動が営まれています。

 中国のような強権的な防疫を行わずにパンデミック対策に成功した台湾は、世界の理想と言えます。

2)韓国

 韓国は、2月にキリスト教系カルトと批判される「新天地イエス教証しの幕屋聖殿」(新天地)による大邱におけるアウトブレイクにより奇襲を受けた形で国内エピデミックが始まりました*が、徹底した検疫、隔離と極端に地域限定的なロックダウンにより制圧しています。

〈*新型ウイルス、韓国で初の死者 宗教団体で集団感染 2020/02/21 BBC〉

 その後、水際防衛とIT技術を駆使したクラスタ戦略、段階的な社会的距離の義務化によって市中感染の拡大を防ぐ「K防疫」によってほぼ制圧に成功し、世界の模範とたいへんに高く評価されています*。

〈*ネイチャー「K-防疫の成功は基礎研究への投資のおかげ」 2020/05/28 hankyoreh japan〉

 しかし、エピデミック第二波の兆候が見え、対応に追われていた*8/15光復節に右派キリスト教団体であるサラン第一教会がソウルにて5万人ゲリラ集会を開催した結果、大規模な第二波エピデミックSurgeが発生し**、その収束過程の中でベースラインが1.5ppmと第二波前の0.6ppmより一桁高い状態で季節性の第三波エピデミックSurge(秋の波)が始まりました。

 韓国では、保守・右派のプロテスタント系宗教団体が防疫破りを行い、深刻なスーパー・スプレッダとなってきた特徴があります***。なお韓国でキリスト教とくにプロテスタントがたいへんに盛んな理由は、朝鮮戦争に遡ります。

〈*2週間で7つの教会が集団感染…政府、「距離措置」レベル引き上げを検討 2020/08/15 hankyoreh japan〉

〈**[ニュース分析]プロテスタント教会が新型コロナ感染拡大の発信源となった理由とは 2020/08/20 hankyoreh japan〉

〈***[寄稿]政治と宗教、別れる時が来た 2020/08/22 ピョ・チャンウォン前国会議員hankyoreh japan〉

 韓国で10月上旬に始まった季節性のエピデミック第三波は、徐々にベースラインを上げてゆき、11月上旬から中旬にかけて第三波エピデミックSurgeとなりました。この第三波エピデミックSurgeはたいへんに深刻なもので、韓国では11月と12月に二度にわたる首都圏および全国における社会的距離確保の引き上げ、12月14日からのソウル首都圏における無償の一般PCR検査が開始されました*。その結果、12月20日頃に新規感染者の日毎発生数が頭打ちとなったあと12月30日より収束に向かっています。

〈*ソウル首都圏におけるクラスタ戦略の一部放棄を意味している〉

 2021/01/14現在、筆者の評価では、韓国は半減期30日で100万人あたりの新規感染者発生が10ppmまで収束しており、現在の傾向が継続すれば、2月末までにほぼ収束、3月末には、9月末から10月初めの水準まで収束します。韓国では、4月から5月にかけて大規模なPCR検査による市中感染者の徹底的な洗い出しをすれば、夏までには台湾並みの市中感染者が存在しない状態にまで持ち込めるでしょう。この状態で水際防衛とクラスタ戦略に戻せばよく、おそらく現在のCOVID-19ワクチンもそれほど要りません。

 第三波エピデミックを収束させるだけでも一時信頼が揺らいだK防疫は世界的に模範として高い評価を得ますし、市中感染を根絶出来れば、全世界の理想となります。

3)日本

 本邦は、水際防衛とクラスタ戦略を標榜していますが、昨年の2月上旬には既に破綻していました*。

〈* WHOの進藤奈邦子氏「新型コロナウイルス根絶目指す」2020/02/14日本経済新聞、日本はすでに感染拡大”WHO専門家2020/02/14日テレNEWS24〉

 WHOのシニアアドバイザ、進藤奈邦子氏は、2020/02/14報道の時点で「中国以外で、感染経路が追跡できない患者は日本でしか出ていない」と指摘おり、これは少数検査、接触追跡で封じ込めるクラスタ戦略がこの時点で崩壊していることを的確に指摘していました。このことについて氏は、国内講演でも述べているのですが、この最も大切な部分を小さく報じ「新型コロナウイルス根絶目指す」などといった見出しが横行していました。

 この時点で既に本邦の検疫は形だけで機能しておらず、底の抜けた桶であった事も指摘されていました。これは現在も抜本的改善がされておらず、12月には、英国変異株の国内市中感染を許しています*。

〈*英から入国…観察中会食 同席2人に変異株2021/01/11日テレNEWS24〉

 本邦は、実態の無い、やっているつもり、やっているふりだけで現場を疲弊させるだけのエセと言って良い水際防衛・クラスタ戦略を今に至るも続けており、東部アジア・大洋州の謎々効果諸国(Factor Xと呼称する人も居る)*のなかでマレーシアに次ぐワースト2であり、筆者は、感染率が米欧の1/5,000〜1/100**である東部アジア・大洋州の謎々効果が本邦では崩壊する日が近いのではないかと強く危惧しています。

〈* モンゴル、中国、ミャンマー以東の東部アジア・大洋州諸国では、COVOD-19 パンデミックの威力が目立って小さいことが 3 月中下旬頃から米欧で指摘されてきている(筆者が気がついたのは 2 月末)。筆者はこれを「謎々効果」と命名している。その後、これを”Factor X”と命名している人たちもいるが、同じ現象をさしている。謎々効果は原因も現象もよく分からない効果であったが、原因は相変わらず不明ではあるが、COVID-19 パンデミックのこの地域で威力が小さい理由は、100 万人あたり日毎新規感染者が欧米の1/10,000〜1/100 であるためである。この地域でも CFR(致命率)は米欧と極端には変わらないために感染してしまえば死ぬ確率は米欧よりやや低いか同程度である〉

〈**本邦は、謎々効果が低下する一方であり、5月中旬には欧米比1/1,000程度の感染率であったものが執筆時点で1/8程度である。本邦の謎々効果は、既に風前の灯火であり、このままの傾向が続くと2月末から3月には欧州と同等になりかねない〉

 この本邦のCOVIT-19対策は、台湾や韓国のクラスタ戦略に対して、日本の「空想としてのクラスタ戦略」と呼称できるほどに空虚で効果のほとんど無いものだと言えます。

◆統計にもはっきりと結果が現れている日韓台の差

 このことは、統計にもはっきりと結果が現れており、例えば累計感染者数の比率は日本:韓国:台湾で370:85:1であり人口比は5:2:1となります。

 累計死者数でも台湾の7名に対して本邦は既に4100人を超えており、韓国は1200人強です。本邦は、1月中に累計死者数で中国を抜き、東部アジア・大洋州でワースト3となることは確実です*。

〈*但し、100万人あたりの死者数では、1月末までにインドネシア、フィリピン、ミャンマーに次ぐワースト4の見込みである〉

 このように、日本、韓国、台湾、ついでに合衆国を比較すると以前の記事で指摘したように次のようになります。

台湾:初動とその後の取り組みによって大成功をして世界の理想。近い将来、世界の感染症学の教科書に理想事例として残るであろう

韓国:数度の右派宗教団体による大規模アウトブレイクの奇襲を喰らいながらも制圧に成功し、秋の波も制圧に成功しつつある世界の模範。近い将来、世界の感染症学の教科書に最優秀事例として残るであろう

日本:あらゆる点で国策として故意に誤り、失敗し続けて来ており失敗を正すことも出来ずスウェーデンと並んで大失敗の見世物。近い将来、世界の感染症学の教科書に最悪事例として残るであろう

合衆国:世界最高、最強の実力を持つものの愚劣な国家元首と政権のために世界最悪となった人類史に残る教訓事例。政権交代により猛烈な巻き返しが見込まれる今後の推移がどうであっても近い将来、世界の歴史教科書と感染症学の教科書に興味深い事例として残るであろう

◆この先の見通し

 日韓台3国では、この先エピデミック第三波は、温暖・湿潤になる5月頃まで継続する可能性があります。

 今の傾向が続けば台湾は、世界最優秀国であり続け、人間の叡智の見本となるでしょう。

 今の傾向が続けば韓国は、2月にはほぼ収束し、3月以降は市中感染の掃討に移るものと思われます。韓国も、水際防衛・クラスタ戦略が有効に機能し、英国変異株の侵入も相当程度阻止出来るものと思われます。従って夏までには本格的な復興が始まり、経済・社会・文化活動を謳歌出来るものと思います。但し、事態が収束に向かえば右派宗教団体などからのアウトブレイクの恐れもあり、強い警戒を要します。これは防疫と自由権の衝突という現代国家における本質的な課題です。この課題がいつ火種になるかはわかりませんが、少なくとも第三波エピデミックの収束によって世界の模範になることが期待されます。

 本邦についての見通しは極めて暗いです。1月第二週のエピデミックSpikeこそは既述の様におそらく一過性でしょうが、それ以後、例え増加率の拡大が止まっても今の水準で新規感染者数が増え続ければ本邦の医療は遠からずウィルスに圧倒されます。本邦の医療体制は、医療従事者のとてもありえない低賃金重労働に支えられている実態があり、ハードウェアがあってもそれを少人数で支えているためもあって見た目と違い極めて脆弱です。その為に既に関東、関西で医療の崩壊は始まっており、ロックダウンなどにより医療システムを休ませる必要があります。

 また6月から指摘し続けているように、世界唯一のジャパンオリジナル・国策エセ科学・エセ医療デマゴギーを信奉・主張する狂った官僚、医系技官、専門家、医療従事者の横行によって本邦は、世界でも数少ない、ブラジルやスウェーデンと並ぶウィルス・ウェルカム大増殖国家となっています。

 結果として本邦は、2月3月4月5月と強力な防壁として機能した謎々効果が、最早消滅寸前であり、トーチカがなくなって負ける寸前のスペースインベーダー・ゲームの様相です。これまで 1 年間、本邦を守ってきた謎々効果の消失が現実のものとなってきたことから、医療・介護従事者や法執行職員、行政現業職、お年寄りを最優先対象とした COVID-19 ワクチンの優先接種は緊急の課題となってきています。今の状態が続けば、謎々効果は、60 日以内に消失する恐れがあり、COVID-19 ワクチンは、1 回目接種日から免疫完成までに 6〜8週間を要します。

 各領域における100万人あたりの日毎新規感染者数と比較すると、本邦は、既に謎々効果の影響があるアジア、アフリカの平均を大きく上回り、世界平均の半分以上まで増加しています。今の傾向が続くと、1月末から2月にかけて世界平均を追い抜き、3月には、南米、欧州に迫る可能性があります。これは謎々効果の完全消滅をも意味し、本邦にとっては全く未知の領域となります。

 また、感染力が極めて強い英国変異株の国内感染が発見されたように、既に英国変異株の市中への侵入が生じている場合は、2 月中にはその影響が現れると考えられます。その場合は、想定が全て極めて悲観的な修正を要します。

 一方で、昨年12月29日より本邦の移動傾向は東京と大阪を中心として全国的に10〜25%減少しており且つ現在もかろうじて継続していることは明るい兆しです。この程度の移動傾向の減少では、不十分でしょうが、更に25%移動傾向を減少させることができれば、英国変異株の市中侵入がない場合に限れば、副作用の大きなロックダウン無しで不完全ながら収束に向かわせることができるかもしれません。

 今年は、去年に引き続き統計を用いてCOVID-19エピデミックの実態を観測し続けると共に、諸外国との比較で本邦の特異性が何処にあるのか、また何をどうして誤ってきたのかを解き明かし、エピデミック制圧への一助としてゆきたいと考えています。また、そろそろ COVID-19 の話題以外も執筆を再開したいと考えています。

◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ36:第三波エピデミック定点観測(1)

<文/牧田寛>

【牧田寛】

Twitter ID:@BB45_Colorado

まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

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