『チコちゃん』で、ナイナイ岡村隆史はなぜ相方矢部に無表情だったのか?

『チコちゃん』で、ナイナイ岡村隆史はなぜ相方矢部に無表情だったのか?

『チコちゃんに叱られる!』公式サイト(NHK)

◆ナイナイ岡村、矢部への無表情が話題に

 こんにちは。微表情研究家の清水建二です。1月22日(金)放送の『チコちゃんに叱られる!』(NHK総合)で岡村さんに実施されたある検証が話題になっています。

 岡村さんに様々な写真を見せ、その表情を特殊な機器(※)を用いて計測したところ、元アイドルの新田恵利さんや和田アキ子さんの写真に対しては喜び表情が生じていたにも関わらず、相方の矢部さんの写真に対しては、全くの無表情だったのです。

 写真に写る様々な人物の中で矢部さんは岡村さんにとって最も親しい間柄だと考えられるのに、「なぜ、無表情?」という声が視聴者の方々から寄せられたり、web記事(日刊サイゾー「岡村隆史、相方・矢部への感情は無!? 『チコちゃんに叱られる!』の検証に視聴者が騒然」)で取り上げられています。

なぜ無表情なのでしょうか?

◆無表情になる3つの理由

 結論から書きます。それは、岡村さんにとって矢部さんは家族や親友のような親密な関係であり、空気や水のようになくてはならないものの当たり前の存在であるからこそ、矢部さんの写真を観ても特に何の感情も抱かず、無表情になった、と考えられます。

 なぜこのように考えることが出来るのでしょうか?

 ある刺激に対して私たちが無表情の反応を見せる場合は、大きく分けて3パターンあります。それは、

@機器が測定出来ないほど微細な表情筋の動きであるゆえに無表情と表示される

A無関心であるからこそ、感情が動かず、無表情になる

B親密で安心できる間柄であるゆえ、特別な事情がない限り、何の感情も抱く必要がなく、無表情になる

 @に関して、厳密に言うと専門的な議論になるため、ここでは、矢部さん以外の人物について各種感情を示す測定結果が表示されており、矢部さんに対して無表情と示されていたため、相対的に無表情が測定されていたと考え、@の可能性を除外します。

 Aに関して、岡村さんと矢部さんがコンビを組み続けているという事実から、何の関心も抱いていないわけがないため、Aの可能性を除外します。残るはBです。

◆集団主義は愛想笑い、個人主義は自由に振舞う

 集団主義的傾向の主にアジア人は、個人主義的傾向を持つ主に西欧人に比べ、自分が所属している集団ー同じ会社のメンバーや取引先、自身が住む地域や近所の人々などーに対し、否定的な感情を見せることを否とし、愛想笑いを含め肯定的な感情を見せることが推奨されます。

 一方、自分が所属していない集団ー自分が属していない会社のメンバーや道端でたまたますれ違った人々などーに対しては、否定的な感情を見せても構わないとされています。こうすることで自分が所属している集団の調和が保たれ、他の集団との間に壁が出来、自分が所属している集団の結束を高めることが出来ると考えられています。

 

 一方、個人主義の場合、自分が所属している集団に対し、否定的な感情があればそれを自由に見せることは許容され、自分が所属していない集団に対しては、否定的な感情を見せることを否とし、肯定的な感情を見せることが推奨されます。

 こうすることで自分が所属している集団と他の集団との壁をなくし、集団間の移動をしやすくしているのだと考えられています。欧米人に観られる引っ越しや転職の多さはこの現れなのかも知れません。

 みなさんもこうした傾向の典型例をよく目にすると思われます。例えば、私はカフェでこうした傾向をよく目にします。飲み物をオーダーし、それをカウンターで受け取るタイプのカフェにおいて、笑顔で「ありがとう!」と言っている欧米人をよく見かけますが、日本人は大抵無表情です(特に男性の無表情は怒り表情と誤認される傾向にあるため、通常、無表情は良い印象を与えません)。

 軽く会釈をする程度は目にしますが、笑顔で「ありがとう」という日本人は欧米人に比べ、極端に少ないように思えます。

◆岡村さんの無表情は親密さの現れ

 このような傾向はあるのですが、個人主義・集団主義問わず、家族や親友のように自分にとって最も親密な関係の集団に対しては、ときに様々な感情を自由にあらわすことが許容されます。

 たとえ、それが否定的な感情であっても大目に見てもらえるのです。素の自分を出しても問題ないと思えるからこそ、言い換えるならば、気を遣い過ぎて疲れてしまう必要がないからこそ、普通の友人から親友になり、恋人から夫婦になり、後輩から相方になり、長年付き合い続けることが出来るのです。

 また、感情は私たちを心穏やかに生存させるために備わった機能です。逆に言えば、常に感情が動いている状態とは、常に心が穏やかになっていない状態、すなわち、ストレスを抱えている状態を意味します。

 目の前の相手に常に感情的になる必要があるとすれば、その人物は心を乱す存在であり、その人物と落ち着いた関係を築くことは出来ません。感情の乱高下がないことこそ、平穏かつ平和な関係が続くカギなのです。

 矢部さんの写真に対する岡村さんの無表情は、岡村さんが矢部さんを家族や親友のように思っているからこそ、遠慮なく自分の素を出すことが出来、同時に、心を穏やかにしていられる、そんな現れであったと考えられます。

※心sensorという人物の表情を自動分析する感情認識AIアプリケーションで測定されました。心sensorは、株式会社シーエーシーによって開発された商品です。〈参照〉

【参考文献】

Matsumoto, D. (1996). Unmasking Japan: Myths and realities about the emotions of the Japanese. Stanford, CA: Stanford University Press.

<文/清水建二>

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。

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