森氏の女性差別発言に海外からも怒りの声。「東京五輪が成功するのは失敗から学んだとき」との声も

森氏の女性差別発言に海外からも怒りの声。「東京五輪が成功するのは失敗から学んだとき」との声も

Photo by Kim Kyung-Hoon - Pool/Getty Images

 五輪組織委員長の森喜朗会長による女性差別発言で、世界を巻き込む大騒動が勃発。その発言を「撤回」して職に居座るかと思えば、一転して辞任を表明。さらに後任に川淵三郎氏の名前が挙がるも、結局受託は白紙に。東京五輪が開催前から「大盛り上がり」だ。

◆「これまでにない最悪の事態」

 ご存知のとおり、各国大使館が女性差別への抗議を示し、競泳・荻野公介選手やテニス・大坂なおみ選手からも批判が相次ぐなど、森氏がつけた火は燃え広がるばかりだ。

 発言が取り上げられた当初は辞任を否定するなど、「外圧によって渋々辞任に追いやられた」という構図は、我々日本人にとって恥ずべきものだ。海外メディアも、そんな東京五輪を厳しい目で報じている。(参照:nbc NEWS、The Guradian、The New York Times、Reuters)

 まずはアメリカの「nbcニュース」。「東京五輪の森会長が性差別発言で辞任」と、当初の日本メディアには見られなかった直接的な表現が見出しに踊った。

 “フランスのエムリオン・ビジネス・スクールで、ユーラシアスポーツ産業センターのディレクターを務めるスポーツ学者のサイモン・チャドウィック氏は、「日本は東京大会を開催することで、日本が変化していること、外に目を向けていること、改革やより現代的なイメージを投影することになるはずだった」と語った。「しかし、日本にとっては、パンデミック、安倍首相の病気による退陣、そして森氏の辞任という三重苦の状況が続いている。今、東京が直面しているのは、これまでにない最悪の事態だ”

◆海外メディアに愚痴をこぼす五輪関係者

 また、イギリスの「ザ・ガーディアン」は森氏の辞任だけでなく、背後で行われていた後任選びにも言及している。

 “森氏の辞任、そして川淵氏を後任に据えるという失敗に終わった試みは、菅義偉首相が女性や若い男性を選ぶべきだと提案していると報じられたあとに起こった。ところが森氏は、84歳の東京選手村「村長」であり、日本サッカー協会の元会長である川淵氏に接近した”

 “森氏の論争は、東京五輪に「評価の深刻な損傷」を及ぼすことになったと、大会関係者の一人は語った。同関係者は問題の機密性を考慮して、匿名を条件に多くの関係者は森氏の後任に女性を望んでいたと話した”

◆批判されたのは老人だから?

 発言そのものだけでなく、辞任に至る経緯から後任選びまで、すべてに渡って問題が浮き彫りになっている森氏の辞任。ようやく幕引きとなるかと思えば、「ニューヨーク・タイムズ」の記事を見るかぎりでは、むしろ膿を出しきるための「総括」は始まったばかりと言えるだろう。

 “彼(森氏)の辞任は、性差別発言に対する国際的な批判が絶えないことに続いて起きた。これによって、パンデミックが猛威を振るうなか、延期されていた大会を開催しようとする日本の努力に、新たな試練がもたらされた”

 “しかし、森氏は発言が誤解されたと、批判に対しては同意しなかった。「女性差別だと言われたが、そういう意味で言ったわけではない」と彼は話した。「私は女性を称えて、もっと発言するように促してきました」”

 “彼(森氏)は自分が年齢のせいで不当に批判されているとの考えをつけ加えた。「老人も日本と世界のために頑張っている」と。「老人が悪いかのような表現をされることも極めて不愉快な話であります。しかし、そんな愚痴を言ってもしょうがないことでございます」”

 これだけのトラブルを引き起こしておきながら、なお「受け取り側の誤解」であり、老人叩きの「被害者」であることを強調する森氏には、海外メディアも驚いた様子だ。

◆「村社会」の象徴である東京五輪

 また、「ロイター」は「東京五輪・森氏の辞任によって貫かれた日本政治の『村社会』」と、森氏の発言と辞任はいち個人の失言ではなく、より大きな問題の氷山の一角であると指摘している。

 “選手、スポンサー、ボランティア、外交官、メディア、そして一般の日本人からの批判の声は、ある新聞が「村社会」と評した、謝罪で論争が収まることを期待していた菅義偉首相をはじめとする森氏の盟友たちに突き刺さった”

 “「彼ら(与党政治家)は、ジェンダーの問題やその意義を本当に理解しているとは思えません。男女共同参画は非常に重要なことなのに、軽々しく受け止めて、内政的なことばかり考えている」と日本女子大学教授の大沢真知子氏は言う。海外のメディアではこの問題が大きく取り上げられ、海外の外交官はソーシャルメディアに男女共同参画を支持する投稿をしていた”

◆森氏辞任は「五輪、唯一の明るいニュース」

 公的機関やメディアだけでなく、東京五輪を楽しみにしていた外国人の間でも大きな怒りと失望が広がっている。

 「日本はすごく発展している国というイメージが強かったから、こんな時代錯誤な発言が飛び出して、とても驚いているよ。『女性は話が長い』なんて軽口を叩く人はポーランドにも多いけど、オリンピックの会長がそんなことを言うなんて、ちょっと考えられない。楽しみにしていた女性の観客やアスリートからしたら、平手打ちされたようなものだろう? 自分の競技だけでなく、こんな奴らとも戦わなきゃいけないのかってウンザリしてるはずだ」(ポーランド人)

 また、森氏の辞任は「唯一の明るいニュース」という辛口な意見も。

 「森が辞めたのは東京五輪で唯一明るいニュースじゃない? まあ、とても開催されるとは思えないけど。暑さが酷すぎるとか、働く人がいなくてボランティアに頼むとか、そもそも山積みだった問題も解決してないし。むしろ、コロナや森を言い訳にできてよかったんじゃないかな。そのまま開催してたら、散々なことになってたと思うよ」(ドイツ人)

◆日本の嫌いな部分が集約されているとの声も

 海外メディアと同じく、在日外国人からは「日本が抱える問題の一部に過ぎない」と言う声も出ている。

「アメリカも大統領は高齢の白人男性だけど、周囲のポストには若い女性を就けたり、バランスを取ろうって意識は見えるよね。80代のおじいちゃんが女性差別をして、誰も代わりがいないから辞めない、辞めても代わりはさらに歳上っていうのは、どう見ても問題だよ。

 女性も若い人もスキルや経験がないから要職に就けないっていうのは、社会の仕組みに問題があるってことでしょう? そもそも大事なポストに高齢の男性しか就けないんじゃ、スキルも経験も積みようがないし。理にかなっているようにいろいろ言い繕うけど、日本のこういう部分は大嫌いだよ」(アメリカ人)

 森氏の責任を問うだけではなく、「チェンジ」のキッカケにするべきだという声は、他の在日外国人からも挙がった。

「住んでみて実感したけど、日本は本当にジェンダーの観点からは後進国だと思う。今回の発言にしても、何が問題なのかすら理解できない人が大勢いるのは、その証拠。海外にもミソジニストはいるけど、ここまで大手を振るうことはありえないし、それが問題だってわからないのは論外だよ。『怒られたから辞めます』って、反省も勉強もしてこなかった政治家ばかりだし、みんなそういう人たちに投票し続けてる。

 五輪が成功していたら、また何十年もそのままだっただろうから、変わるキッカケにしてほしい。中止になっても、ここから学ぶことができれば、長い目では『成功』するかもしれない」(ノルウェー人)

 東京五輪開催の是非や森氏の後任ばかりに目が向けられているが、より大きな問題は我々日本人がここから何を学ぶか……ということなのかもしれない。

<取材・文・訳/林 泰人>

【林泰人】

ライター・編集者。日本人の父、ポーランド人の母を持つ。日本語、英語、ポーランド語のトライリンガルで西武ライオンズファン

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