世界を激怒させた森発言。数々の森失言に見られるリーダーとして欠けていた3つの要素

世界を激怒させた森発言。数々の森失言に見られるリーダーとして欠けていた3つの要素

Photo by Yuichi Yamazaki/Getty Images

 女性蔑視発言で辞任に追い込まれた、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の森喜朗会長。後任に挙がっていた川淵三郎氏が受託を断るなど、事態はますます混乱に陥っている。

◆組織の目的とは真逆の女性蔑視発言

 ご存知の方も多いだろうが、これまでの流れをおさらいしよう。森喜朗会長が「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」などと発言、翌日には「不適切な表現であったと認識しています。深く反省しております。発言は撤回したい」と述べた。

 しかし、世論調査の結果は、「大きく問題がある」「やや問題がある」と感じている人は合わせて91%、「謝罪会見に納得していない」が77%(「納得している)は17%)、森氏は「辞任すべき」は59%(「辞任する必要はない」は32%)と、深刻な問題であることを示している。

 オリンピック・パラリンピックは、「いかなる差別をも伴うことなく」連帯の精神をもって相互に理解し合うことを憲章として掲げている。憲章とは、組織が果たすべき目的のもっとも重要で根本的なことを定めた取り決めだ。

 森会長が発した言葉は、この目的に明らかに反した、それも真逆の発言だ。

 組織委員会にせよ、いち企業にせよ、リーダーの発言が適切かどうかは、組織の目的に適う発言かどうかで測ることができる。加えて、仮に組織の目的に対して若干のズレが発生していたとしても、緊急性や貢献の観点から許容できるかどうで検証することができる。

◆リーダーが組織全体のマイナスに

 たとえば、「顧客第一」ということを企業の根本的な目的として定めた企業が製品の不具合を隠ぺいしていたら、それは明らかに顧客に不利益を与え、「顧客第一」とは真逆の行為ということになる。

 加えて、これを陰であろうが表であろうが、仮に「顧客が製品の不具合をクレームしてきて困る」などと言っているリーダーがいようものなら、その組織のリーダー失格どころか、その組織にいてもらっては組織の目的に逆行するという事態になることは明白だ。森氏のケースはこのレベルの深刻な問題なのだ。

◆緊急性の観点からも許容は困難

 もっとも、目的に照らしてそぐわない発言だったとしても、緊急性、貢献の観点から、許容し得る場合はある。たとえば、「社員第一」を掲げている企業が、社員に不利益が生ずるリストラを断行せざるを得ないケースだ。

 リストラは「社員第一」の目的に反する。しかし、「深刻な業績悪化という緊急事態に直面し、希望退職を募らなければならなくなった。企業の中長期的な存続のために、希望する方は申し出ていただきたい」という表現であれば、一時的な緊急対応のために、目的に反する行動について理解を求めやすいと言える。

 森氏のケースでも、もし仮に「限られた時間で、緊急に議論しなければならない状況のなかで、話が長いことが障害だった」という発言であれば、百歩譲って許容し得る人は増えたに違いない。

 しかし、この場合でも、「男性であっても、女性であっても、話が長いことは問題だ」と発言すべきで、「女性が」と特定することはまったく不適切だ。

◆目的、緊急性、貢献の観点で発言はコントロールできる

 貢献の観点も、目的に照らしてそぐわない発言を許容し得ることがある。たとえば、新型コロナウイルスのワクチン接種は国民全体の命、健康を守るという目的のための取り組みだ。

 しかし、副作用のリスクという、逆に命や健康を守るということとは真逆の影響がある可能性も皆無ではない。

 これを、「新型コロナウイルスのワクチンは副作用があるから、命、健康を守るために貢献しない」というように考えるのではなく、「副作用のリスクはあるが、それを勘案したうえでワクチンを接種し、感染拡大防止に努めることが国民全体の命、健康を守ることに貢献する」というように発言すれば、理解度は高まる。

 森氏は、「新型コロナウイルスがどんな形になろうと、必ずやる」と発言し、国内外から批判されている。仮に、百歩譲って「感染拡大防止に最大限の取り組みをしながら、いっぽう、経済波及効果への貢献を鑑み、可能な形での実施検討を継続する」と発言していれば、これほど支持を失うことはなかったに違いない。(繰り返すが、女性蔑視発言については、まったく不適切なのはいうまでもない)。

 森氏であろうと企業のリーダーであろうと、日々の発言を目的・緊急性・貢献の観点から見直すことは、失言しないためにも、そしてなによりも組織を巻き込むためにとても有効だ。組織の目的に適っているか、緊急性、貢献の観点から許容し得るかどうかの確認をしてみることをお勧めする。

【山口博[連載コラム・分解スキル・反復演習が人生を変える]第228回】

<取材・文/山口博>

【山口博】

(やまぐち・ひろし)

モチベーションファクター株式会社代表取締役。国内外企業の人材開発・人事部長歴任後、PwC/KPMGコンサルティング各ディレクターを経て、現職。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社新書)、『クライアントを惹き付けるモチベーションファクター・トレーニング』(きんざい)、『99%の人が気づいていないビジネス力アップの基本100』(講談社+α新書)、『ビジネススキル急上昇日めくりドリル』(扶桑社)がある

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