Juice=Juice高木紗友希さんの活動終了。ハロプロファンが抱いた、アイドルの「恋愛=即脱退」への違和感

Juice=Juice高木紗友希さんの活動終了。ハロプロファンが抱いた、アイドルの「恋愛=即脱退」への違和感

Juice=Juice公式Twitterより

 2月12日、ハロー!プロジェクト(以下ハロプロ)内のアイドルグループ、Juice=Juiceのメンバーである高木紗友希さんの活動終了が公式サイト上で発表された。

◆ようやく脚光を浴び始めた中での活動終了

 2月11日、文春オンラインにて高木さんが人気アーティストと交際しているという記事が掲載され、それからわずか一日、事務所は高木さんのハロプロ及びJuice=Juiceでの活動を終了するという決断を下した。

 ファンの間でも彼女の歌唱力はハロプロ内トップクラスと言われ、これからの活躍が期待されていただけにこの知らせには肩を落とすしかなかった。昨年公式YouTubeにアップされたソロの歌唱動画が70万回以上再生され、音楽番組でも彼女の歌唱力が絶賛されるなど世間的にも脚光を浴び始めた矢先のことだった。

 個人的な話で恐縮だが、筆者はデビュー当時から彼女のことを応援しており、コンサートに幾度も足を運んできた。そんないちファンとしては、『Magic of Love』のパワフルなフェイクも、『ポップミュージック』の「ちゅるちゅるぷにゅタピオカミルクティ」も、もう聞くことはできないのだろうかと残念で仕方ない。

 彼女の成長を間近で見てきて、未来を楽しみにしていただけに道が突然ぷつりと閉ざされてしまったような気がしたのだ。グループ内の話をすると、「エース」と呼び声高かった宮本佳林さんが昨年12月に卒業した直後のことである。高木さんの才能までもを失ってしまうというのは、あまりにも惜しい。

◆そもそもアイドルの恋愛禁止はいつまで続くのか

 アイドルが恋愛によってグループを抜けるとき、常に議論のテーブルに上がるのは「アイドルの恋愛禁止ルールは正しいのか否か」という問題だ。

 まずは、法的な観点からアイドルの恋愛禁止を見てみたい。

 一つ目の事例は、2015年9月18日のこと。東京地裁は「交際禁止」の規則に違反した元アイドルに賠償金65万円の支払いを命じた。

「判決で児島章朋裁判官は、アイドルとは芸能プロダクションが初期投資をして媒体に露出させ、人気を上昇させてチケットやグッズなどの売り上げを伸ばし、投資を回収するビジネスモデルと位置付けた。

 その上でアイドルである以上、ファン獲得には交際禁止の規約は必要で、交際が発覚すればイメージが悪化するとした。会社がグループの解散を決めたのも合理的で、少女に65万円の支払いを命じた。」〈参照:読売オンライン〉

 二つ目の事例は、2016年1月18日のこと。アイドルの女性がファンとの交際を禁じた規約に違反したとして、マネジメント会社が女性と交際相手男性らに約990万円の損害賠償を求めたが、東京地裁は会社の請求を棄却した。

「判決は、『ファンはアイドルに清廉性を求めるため、交際禁止はマネジメント側の立場では一定の合理性はある』と理解を示す一方で、『異性との交際は人生を自分らしく豊かに生きる自己決定権そのものだ』と指摘。損害賠償が認められるのは、アイドルが会社に損害を与える目的で故意に公表した場合などに限られる、と判断した。」〈参照:朝日新聞〉

◆ハロプロのアイドルは「疑似恋愛の対象」か?

 ここまでアイドルの恋愛禁止に関する二つの裁判事例を見てきた。判決は異なるものの、両者に共通するのは「ファンはアイドルに清廉性を求めており、交際が発覚すればイメージが悪化する」と考えている点だ。この背景には、おそらく「疑似恋愛の対象」としてのアイドルが存在する。

 筆者は、ハロプロのアイドルは必ずしも「疑似恋愛の対象」ではないと考えている。コンサート会場で見る限り、ハロプロの女性ファンの数は年々増え続けている。その上、男女問わず歌やダンスなどのパフォーマンスに魅かれて応援しているファンも多い。

 もちろん「疑似恋愛の対象」として応援しているファンがいないとは言えないが、恋愛が公になったとしても、変わらずステージの上の彼女を見続けたかったと思っているファンもたくさんいるのではないだろうか。これだけの努力をしてパフォーマンスを磨き上げてきた彼女が、「ハロー!プロジェクトのメンバーとして、自覚を欠いていると総合的に判断」されることに納得がいかない。

 アイドルの恋愛禁止ルールは昔から議論され続けてきた上、ファンの数だけ推しに対する考え方があるのは重々承知だ。しかしながら、筆者は「アイドルだからといって恋愛を制限されるべきではない」と思うのだ。

◆「他人が決めた生き方」に従わなければいけないのはおかしい

 それは前述したハロプロのアイドルは必ずしも「疑似恋愛の対象」ではないからという理由もあるが、「他人が決めた生き方のレールに沿って歩かなければならない」ことはおかしいと考えるためだ。未成年の場合、恋愛禁止というルールには周囲から所属アイドルを守るという意味合いも含まれているのかもしれない。

 しかし、高木さんは23歳だ。成人女性の生き方を、果たして周りが決めて良いものなのだろうか? アイドルである前に、一人の個人として扱われるべきだと筆者は思う。それに「恋愛」を禁ずるということは、一個人の感情を禁ずることと同義なのではないかとも思うのだ。

 他のグループでは在籍しながら結婚するアイドルも出てきており、Negiccoのメンバーは3人とも結婚している。また、ハロプロのグループ、アンジュルムの元リーダーである和田彩花さんも「音楽ナタリー」の対談内で「結婚もそうだけど、恋愛しているということも、もっと公にできるといいですよね」と話している。

◆「恋愛=即脱退」への違和感

 ここまで恋愛禁止に反対する意見を述べてきたが、事務所の目線で考えるとアイドルの恋愛が公になった場合、一定数ファンが離れてしまうことは容易に考えられる。筆者個人はそうは思わないが、アイドルは利益を生むための商品だと考える人も存在する。とすれば、恋愛禁止のルールを定めることは一種の合理的判断だと言うことも可能だ。

 また、前出の和田さんはテレビ番組内で「(ハロプロは)一応恋愛禁止である」という旨の発言をしている。一般的な会社員でも、規則を破れば何らかの処分を受けるだろう。

 筆者が言いたいのは、果たしてそれが「即脱退(厳密には活動終了)」でなければいけなかったのかということだ。そうすることは、筆者たちのように彼女のパフォーマンスを応援し続けたいと考えているファンもろとも切り捨てる行為だ。

 話し合いの余地はなかったのだろうか。もし彼女が「辞めます」と自ら言ったとしても、それはこれまでの芸能人生で刷り込まれた価値観からではないだろうか。彼女がしたことは、選択の余地すら与えられないほどの損失をもたらすものだったのだろうか。事務所には過去に縛られずに、改めてその辺りを考えてほしかったと思う。

◆さいごに

 今回はハロプロ及びJuice=Juiceでの活動終了という残念な結末になってしまったが、筆者がこれまで彼女のパフォーマンスに幾度となく元気をもらってきたのはまぎれもない事実だ。この場で感謝の意を示しておきたい。

 彼女が今後また芸能活動をするかはわからないが、彼女の人生が幸せであることを願っている。

<文/火野雪穂>

【火野雪穂】

97年生まれのライター。学生時代から学生向けメディアの記事作成などを行う。今春大学を卒業したばかりだが、いきなりのコロナ禍で当惑。

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