五輪延期でライフプランが狂った!選手村マンション購入者たちの悲痛な声。「余生を親子一緒に過ごすはずだったのに…」

選手村マンション購入者たちが困惑 一方でデベロッパーは“丸儲け”か

記事まとめ

  • 東京・晴海の選手村マンションは五輪延期で引き渡し予定が狂い、購入者たちは困惑する
  • 五輪延期に伴う引渡し後ろ倒しが決定され、一部契約者が東京地裁に民事調停を申立てた
  • リスクとコストを契約者が被ることになる一方、デベロッパーは"丸儲け"しているらしい

五輪延期でライフプランが狂った!選手村マンション購入者たちの悲痛な声。「余生を親子一緒に過ごすはずだったのに…」

五輪延期でライフプランが狂った!選手村マンション購入者たちの悲痛な声。「余生を親子一緒に過ごすはずだったのに…」

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 東京・晴海の広大な敷地にできた選手村。五輪終了後は5000戸を超す巨大マンション群に生まれ変わる予定だ。しかし、五輪延期で引き渡し予定が狂い、購入者たちは困惑している。一部は補償を求め民事調停を申し立てた!

◆ライフプランが狂った!購入者たちの悲痛な声

 1年間の延期を経て、さらに混迷を極める東京五輪だが、「レガシー」となるはずだった建物を巡ってもトラブルが発生している。

 その建物とは、東京都中央区晴海に建設されている「五輪選手村」だ。44haという広大な敷地面積を誇るこの選手村は、五輪が終わった後に増築・改修されたのち、全24棟5632戸に約1万2000人が入居する一大マンション群「晴海フラッグ」として、生まれ変わる予定なのだ。

 ’19年7月に販売が開始されるや「選手村の跡地」という無二のブランド力で脚光を浴びた。『激震!コロナと不動産』(扶桑社刊)を上梓した住宅ジャーナリストの榊淳司氏は言う。

「晴海フラッグの分譲住戸の坪単価は、多くの物件で300万円前後。中央区では最安レベルと言っていいでしょう」

 こうした理由から購入希望者が殺到。最も人気の高い部屋では、その倍率は71倍にも達したという。ところが、東京五輪が1年延期されたことに伴い、’23年3月だった引き渡し日が1年後ろ倒しになってしまったのだ。

◆24人の契約者が東京地裁に民事調停を申し立て

 この決定に、未来の住民の一部が異議を唱えた。2月に入り24人の契約者が、引き渡し日延期に伴って発生する費用の補償を求め、東京地裁に民事調停を申し立てたのだ。彼らの代理人を務める轟木博信弁護士はこう主張する。

「契約書には、『売主側の故意・過失ではない事由、または予見できない事由によって引き渡しが遅れる場合は(購入者は)承諾しなければならない』という条項はあります。しかし、遅延に伴う損害賠償の免責については記載がない。

 また、五輪が1年延期されたとはいえ、もともとの引き渡し日である’23年3月までは1年半以上あり、作業員の増員などの努力で予定通りの入居も可能なはず。この点についても、デベロッパー側は『働き方改革との兼ね合いで難しい』と意味不明な回答をしています」

 8500万円の95uの住戸を契約し、民事調停申し立てに加わった40代の女性会社員もデベロッパーの対応に不満を漏らす。

「新居の購入費用の大半は、今住んでいる物件を売却して充てる予定でした。しかし、延期された1年の間に不動産相場が下落するかもしれない。一番の希望は期日通りの入居ですが、それが不可能なら、今の物件を早めに予定通り売却するので、それから入居日までの1年分の住居費を補償してほしい。

 また、契約者はすでに購入額の10%を手付金としてデベロッパーに預けているのですが、預け期間が1年延びても利息すら払われない。1000万円近い現金があれば、1年でそれなりの運用益も見込めますが、これではまったくの機会損失です」

◆「文句あるなら解約すればいい」では解決しない

 至極まっとうな要求ではあるが、民事調停の申し立てに関してはネット掲示板やSNSでネガティブな反応が起きている。批判に共通するのは「文句あるなら解約すればいい」という論理だ。デベロッパー側は引き渡し延期により「契約をキャンセルすれば手付金を全額返金する」とアナウンスしているからだ。

 しかし、そんな単純な問題でもない。二重で住宅ローンを組めないため、現役世代の購入者の多くは先に住んでいる物件を売却し、入居までの間は賃貸に住むケースが多いからだ。解約すれば、予想外の出費が嵩んでしまう。

 さらにこんなケースも。民事調停の申し立てに加わった30代の男性契約者も話す。

「私の父親は仕事で海外に出ていることが多く、普通の親子と比べると一緒に暮らした時間が短かった。そんな父親も60代半ばとなり、余生を親子一緒に過ごせないかなとかねがね思っていたところ、運よくこの物件(約1億円・110u)の抽選に当たった。父親は退職して帰国することを決め、私も恋人と結婚して父と母、私と妻の2世帯で入居する予定でした。

 しかし、デベロッパーの一方的な決定で、そうしたライフプランが崩れ去った。母親は私がそばで世話をしなければ生活が難しいという事情があるのですが、都心で大人4人がゆとりをもって生活できる住居は意外と少ないので、解約も難しい。まさに路頭に迷っている状態です」

 ほかにも、子どもの小学校入学に合わせて購入を決めたのに、延期となった1年間だけ別の小学校に通わせ、転校させなければいけなくなったケースもあるという。

◆不動産バブルの崩壊で買い替えが難しくなる

 晴海フラッグの契約者が集うネット掲示板では、「まじゆるせない みなさん立ち上がりましょう!」と団結を呼びかける者もいれば、「損害求めて補償とか恥ずかしい」と、補償要求に反対する書き込みも。入居前の段階から、住民間の対立に発展しているのだ。

 一方で、解約した者も少なくなかった。前出の榊氏は、晴海フラッグの契約者について「自業自得」というスタンスだが、1年間の引き渡し延期によるリスクについてこう指摘する。

「1年間の延期による最大のリスクは長期金利引き上げの可能性です。安倍前首相のもと、ゼロ金利を維持してきた黒田日銀総裁の任期は’23年4月。さらにアベノミクスを引き継いだ菅政権も風前の灯です。今後、市場が新型コロナからの回復バブルに向かうことが予想されるなか、それぞれの後継者はゼロ金利政策を見直す可能性が高い。

 そうなればゼロ金利の上に成り立っていた現状の不動産バブルも崩壊します。今、住んでいる物件を売却して晴海フラッグの購入に充てていた場合、その差額が拡大する可能性もあります」

◆一方でデベロッパーは“丸儲け”

 引き渡し日延期によるリスクとコストを契約者が被ることになる一方、デベロッパーは“丸儲け”しているのだという。

「選手村としての使用期間中は、物件の所有者であるデベロッパーが販売済みの物件を東京都に貸し出すという契約になっているのですが、延期された1年分の追加の賃貸料として約40億円が支払われる契約を自ら締結しているのです。

 もちろん原資は都民の税金。ちなみに民事調停で我々が求めている補償は、合計しても1億円に満たない金額です」(轟木氏)

 なお、売り主となる企業グループの広報を担当する三井不動産は、「個別の案件については回答を差し控えたい。対応は民事調停の申立書を見てから協議する」と答えるにとどまった。

 遺恨を残したままでは、住み心地は最悪なものになるだろう。

<取材・文/奥窪優木 撮影/バーナード・コン>

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