季節性第3波エピデミックの収束と新たな脅威の襲来。ワクチン戦略が遅れている日本が迎えるコロナ正念場

季節性第3波エピデミックの収束と新たな脅威の襲来。ワクチン戦略が遅れている日本が迎えるコロナ正念場

Ned Snowman / Shutterstock.com

◆はじめに

 前回、菅政権による緊急事態宣言の中で外食営業時間制限(外食時短)の効果が抜群に発揮され、季節性第三波エピデミックSurge(波・うねり)が急速に収束へと向かい、その傾向が維持されれば、3月末までには季節性第三波エピデミックSurgeは終息し*、9月下旬程度の状態まで大きく改善することを述べました。一方で、日毎死者数の減少が大きく遅延している理由が不明であることにより、医療への過負荷が継続することと、英国変異株の国内市中での蔓延により2月下旬から3月にかけて非季節性エピデミックSurgeが発生する可能性を合衆国ワシントン大学**のIHME(保健指標評価研究所)による予測と評価を引用して示したところで締めくくりました。

〈*季節性第三波エピデミックSurgeは「終息」するが、市中感染者が残りBaselineとして次のエピデミックの種火となる。従ってエピデミックとしては収束に過ぎない〉

〈**ワシントン大学は、西海岸ワシントン州のシアトルにある〉

 さてそれから2週間経過した現在、どうなっているか見て行きましょう。今回もOur World In Dataを使います。グラフのキャプションから原典に直接リンクしています。

 先ずは、全世界と本邦の現状を見ましょう。

 一見して分かりますが、北米、欧州、全世界、本邦では、冬のエピデミックが終息に向かっています。冬のエピデミックは、季節性のSurge(波、うねり)とサンクスギビング、クリスマス、年末年始などによる社会性のSpike(棘)との合成波です。

 人間の社会的行動制限で回避出来る社会性のSpikeは、合衆国のサンクスギビング大型連休、キリスト教圏や本邦のクリスマスや、本邦の年末年始などを原因として残念ながら猛威を振るいましたが既に終えており、季節性のSurge(秋の波)そのものは順調に終息へと向かっています。

◆定点観測2021/02/20

 いつもの様に本邦と韓国、台湾、アジア全体を観察し、比較して行きます。

◆日本〜日毎死亡者数の挙動からわかる医療の危機的状況

 本邦は、日毎新規感染者数が1月中旬まで急速に増加し、謎々効果*が3月にも消滅してしまうことが予測されるほどにたいへんに先が危ぶまれる状況になりました。しかしこれは、一過性且つ社会活動を起因とするクリスマスと年末年始連休によるSpikeが原因であって1/21〜25に自然終息しています。一方で季節性の第三波エピデミックSurgeは、1月末には減衰しはじめ3月末までには収束する見込みでした。

 しかし後述する様に日毎死亡数の挙動が下げ渋っており、医療への過負荷が収束しないこと、それどころか2月下旬に入ると日毎新規感染者数が僅かに増加へと転じつつあり、死亡者数も下げ止まってしまいました。これらは明らかに終息過程にあった季節性第三波エピデミックSurgeが悪い方向へ大きな変化を生じていること、新たなSurgeかSpikeの発生を示します。

〈*モンゴル、中国、ミャンマー以東の東部アジア、大洋州ではCOVID-19パンデミックによる被害が他の地域、特に米欧に比してきわめて小さい。筆者はこの事実に2020年2月末頃に気がつき、同3月には「謎々効果」(謎々ボーナスタイム)と名付けている。全く同じ効果を”Factor X”と呼称している人たちもいる。米欧メディアや研究機関が注目するものの、謎々効果の原因も正体も不明であった。謎々効果の原因は依然不明だが、正体はこの領域では感染率が当初米欧の1/1000程度に抑えられていることである。致命率(CFR)は謎々効果があっても米欧他と大きな差はない。謎々効果は、アフリカ大陸でもほぼ全域で見られている〉

 本邦では12/29に急減した移動傾向が、2月に入り漸増しています。但し、この程度の増加は、新規感染者数への大きな寄与は無いと思われます。花粉の季節ですのでマスクの着用率が高く、社会的距離に配慮し、屋内外食において社会的距離の確保と換気を徹底すれば、移動傾向の微増はCOVID-19統計にそれほど影響しないと筆者は考えています。そうではあっても、韓国に比して移動傾向の推移は1年を通して成績がたいへんに悪く、根本的な制作の見直しが必須です。例えジャブであっても積み重なれば致命傷になりかねません。

◆韓国〜新規感染者数は下げ止まり、油断を許さない状況

 韓国は、100万人あたりの日毎新規感染者数がクリスマス前までに本邦とほぼ同率になりましたが、韓国では、K防疫体制の二度にわたる強化と12/14以降のソウル首都圏域における大規模一般PCR検査の開始(首都圏域におけるクラスタ戦略の事実上の放棄)によってクリスマス前から減少が始まり、1月中旬まではたいへんに順調であって*筆者の予測では、3月末までの収束の見込みでした。しかし1月末に通産3回目の宗教団体起因の大規模Spikeが大田と光州で生じました**。韓国は、COVID-19対策が優秀な国の例に漏れず約二週間でこのSpikeを制圧しました。しかしそれ以降、韓国では日毎新規感染者数が下げ止まってしまいました。そしてここ数日は、増加に転じています。現在韓国の100万人あたりの日毎新規感染者数は、10ppmと昨年12月冒頭並みであり、全く油断を許さない状態です。

〈*韓国、大衆利用施設の集団感染が大幅に減少…距離措置の効果 2021/01/16 hankyoreh japan〉

〈**韓国で宗教団体関連施設発の集団感染、少なくとも341人…第3波再拡散の岐路 2021/01/28 hankyoreh japan〉

 なお韓国のお正月は、旧正月(ソルラル)ですが、移動傾向は若干増加したものの大きな影響は無いものと考えられます。旧正月の影響は、2月末に現れるため、日毎新規感染者数などの統計の動きには注意を要します。

◆台湾〜新規感染者0の日もあり優秀

 台湾では、昨年12月以降、国内市中感染者が月あたり数人程度発生していますが、それに応じて国内市中でのPCR検査数を大きく増やし、市中感染者1人を見つけるために数千人のPCR検査を行うというCOVID-19対策では掃討期に行われる優れた対応によって封じ込めに成功しています。台湾では、1/30と2/4にCOVID-19による死者が合計2名発生し、累計死亡数は9名ですが、これは1億人あたり38人に相当し、本邦の1/160*です。

〈*本邦のCOVID-19統計は漏れや過小評価などのメイキングが極めて多く、実際には台湾の死亡率は本邦の1/200以下と考えられる〉

 心配された2/12の旧正月(春節)でも、移動傾向は低く抑えられました。春節の影響は、2月末に統計に現れますが、現時点で問題は生じていません。台湾では空港検疫で1名、国内0名という日が続いていますが、空港検疫を含む新規感染者数0名の日が時々見られる様になってきました。台湾の防疫体制は完璧に機能していると言えます。

●空港検疫、国内共に新規感染者数0を祝う総柴(ゾンチャイ)2021/02/21 中華民国衛生福利部(台湾厚生省)Tweet

◆死亡数について(第三波エピデミック仮決算)

 全世界で季節性第三波エピデミックSurgeが収束に向かっていますが、ここで日本、韓国、台湾での累計死亡数の比較をしてみます。IHME他の評価では台湾はほぼ完璧に感染者を把握しており、韓国がそれに続いていますが、本邦については、ICL(インペリアル・カレッジ・ロンドン)からは、統計で把握されている感染者数は実数の1/5程度と酷評されています。IHMEは、本邦統計は1/2程度の過小評価と指摘しています。そうであっても死者数もついては、仮に意図的であっても桁が変わる様なごまかしは利きません*ので死亡数での評価は重要です。

〈*死亡数を誤魔化すと半年から1年後には超過死亡数(率)という形で露見し、世界への恥さらしとなる。本邦の場合、超過死亡が第一波、第二波、第三波エピデミック全てで目立っており、明らかに本邦のCOVID-19死亡統計は過小評価メイキングが成されている統計偽装国家と見做される状況である。勿論、ブレジネフ末期以降のソ連邦の様にみっともない統計そのものを隠蔽する国家もあるが、末期状態の駄目国家扱いされるだけである〉

●コロナ禍による死者数が本当は分からない日本、統計の致命的瑕疵 2020/02/04関根敏隆, 肥後雅博 日経ビジネス電子版

 本邦に有利となりますが、日韓台三カ国における第三波エピデミックの起点を10/1*として2/20迄の累計死亡者数の増加を評価すると次の様になります。有効数字は2桁です

日本 5900人/1.3億人

韓国 1100人/5.2千万人

台湾   2人/2.4千万人

 人口比で日本の人口1.3億人相当に補正すると、日本5900人、韓国2800人、台湾11人となります。台湾は桁違いに優秀ですが、本邦は、せめて韓国並みに防疫に成功していれば、9月以降に死んだ5900人のうち、53%にあたる3100人が死なずに済みました。これが第三波エピデミックにおいて「世界に誇る日本流コロナ対策」の真価です。

〈*現在筆者は、本邦において季節性第三波エピデミックSurge(秋の波)が始まったのは9月中旬と評価している〉

 なお、執筆時点で本邦の超過死亡数の推定値は2020年10月分までしか発表されていません。超過死亡数の評価には時間を要しますので、「秋の波」の死亡数からの最終的な評価には、あと半年ほどの時間を要します。たかが死亡統計を評価するのにこの様な苦労をするのはソ連・東欧ウォッチャーであった筆者にとっては30余年ぶりのデジャビュ*です。

〈*余談であるが、1985年頃は、本邦の統計は極めて優れたものと評価されていた。統計は国家の礎であり鏡である〉

◆ 本邦死亡統計の異常

 前回、死亡数の減少が始まっており、順調に進めば医療への過負荷は解消されると締めくくりました。それから二週間経ちましたが、日韓台の死亡統計はどうなったでしょうか。

 ここで日本、韓国、台湾の100万人あたり日毎新規感染者数の統計と、100万人あたり日毎死亡者数の統計を上下に並べます。

 在来株に感染した場合のCOVID-19の推移は、よく分かっており、発症日をDay 0とすると、感染発生日は平均してDay -5です。重症化の分かれ目はDay 10であり、重症化して死亡する場合は平均してDay 18に死亡します。

 発症して、検査をし、新規感染者として統計に表れるのは、国やエピデミックの状態で左右されますが、第三波エピデミックにおいて本邦は、11月下旬以降Day 9前後*に統計に表れます。従って、日毎新規感染者数の約1.5〜2%がその9日後前後に死亡することとなります。結果、日毎死亡統計は報告、集計までの時間を加えて日毎新規感染者数の10日前後あとに現れると考えられます。

〈*平均して感染発生日の14日後に新規感染者数が統計化されるため、発症日をDay 0とすると新規感染者数統計値の発表は、平均してDay 9となる〉

 この視点で韓国の統計を見ると綺麗に合います。諸外国もだいたいそういった傾向です。ところが本邦では、4月の第一波と8月の第二波では、死亡統計の新規感染者数統計に対する遅行は14日前後であり、第三波の11月から12月でも14日前後の遅行となっています。これは諸外国より大きな値であって本邦COVID-19統計の謎です。

 2月に入り、死亡統計の新規感染者数統計の対する遅行は更に拡大し、2/3の死亡に対応する新規感染者は、1/12頃で、22日前後遅行しています。この遅行の拡大によって本邦のCOVID-19統計観察者の多くが混乱しました。現在もこの遅行の拡大は謎であり、IHMEによる本邦感染実態評価と予測にも大きな修正が2/20更新で行われています。

 この遅行の大きさは、本邦のCOVID-19重症患者に対する延命治療が世界でも飛び抜けて優れているのならば説明がつきますが、致命率(CFR)*は、優れているというわけでも劣っているわけでもなくやや良い程度の推移です。筆者は、COVID-19臨床に関する知識を持ちませんのでこのことについては、臨床医による評価を待ちます。

〈*CFR(Case Fatality Rate)は、診断付き死亡者累計数を診断付き感染者累計数で割ったもの〉

 次に、最近の本邦のCOVID-19死亡統計では、新規感染者数の減少に比して死亡者数の下げ渋りがたいへんに目立ちます。そしてとうとうここ数日では下げ止まり、増加に転じてしまいました。本来、COVID-19死亡統計は一定の遅行日数を空けて、日毎新規死亡者数と同様の推移を示すのですが、この2月は、それが崩れています。

 これはそれだけ多くの感染者が死んでしまうことを示し、実際に本邦のCFRは、増大し続けており、間もなく合衆国と韓国を追い抜き、2%台に入る可能性があります。勿論これは医療への負荷が大きいことを示しており、本邦だけでなく諸外国でも医療へ過負荷がかかるとCFRは増大して行きます。

 COVID-19に対する医療は、5〜7月にかけて大きく発達し、CFRは常に減少して行くのが基本となっており、CFRの増大は、医療に強い過負荷のかかるエピデミックが生じていることを示します。

◆非季節性第四波エピデミックの発生

 今回は、前回に引き続き第三波エピデミックの定点観測第四回としてほぼ収束しつつある季節性第三波エピデミックSurgeの現状を述べました。

 しかし、日韓共に日毎新規感染者数は、まだ高い水準で下げ止まり、反転上昇の兆候を見せています。

 更に本邦では、死亡統計の新規感染者統計への遅行が異様に大きいこと、そして2月に入り遅行が拡大しているという謎を示しました。そして、日毎死亡者数は1日あたり70人台というたいへんに高い水準で下げ止まっており、最近ではむしろ上昇に転じています。

 筆者は、前々回、前回と、第三波季節性エピデミックSurgeは3月末頃には収束すると予測してきましたが、一方で、感染力のたいへんに強い英国変異株の本邦への侵入と市中感染の拡大が見られ、制圧に失敗すれば2月中には英国変異株が支配的(Dominant)となり、非季節性第四波エピデミックSurgeとなることを指摘してきました。この場合、ワクチン接種の著しく遅れている本邦では、英国で11月中旬から12月に見られた巨大エピデミックSurgeを含めて警戒すべきと様々な場で警告してきています。

 厚労省の公開する変異株情報を有志が見やすくスプレッドシートにまとめたものを筆者は毎日見ていますが、統計と合わせて各種報道を見る限り、、既に本邦では2月初旬から英国変異株を支配株(ドミナント)とした非季節性第四波エピデミックSurgeが始まっており、季節性第三波エピデミックSurgeを現在置き換えつつあると筆者は結論しています。

 IHMEは、2/20更新の本邦COVID-19エピデミックの評価と予測において非季節性第四波エピデミックSurgeが既に支配的であると示し、筆者の考えと一致しています。

 英国変異株は、在来株に比して感染性が70〜100%高く、子供に感染しやすい*という特徴があり、毒性も在来株に比してやや強いとされています。合衆国と英国では、感染性の高さから英国変異株の倍加時間は9〜10日であり、短期間で感染のドミナント(支配株)となっています。現在既に合衆国もドミナントは英国変異株である可能性が高いです。

〈*在来株は、子供には感染しにくく、発症もしにくかったが、英国変異株は、子供に感染しやすく、発症・重症化もするとされる。このため英国では11月のティア3ロックダウンで運営し続けていた小学校がエピセンターとなり、子供達がウィルスの運び屋となり、子供の犠牲も発生した疑いがある。現在英国や合衆国では小学校などは閉鎖されている。大学は、週二回程度の高頻回全員PCR検査によってバブル(安全圏)を形成し、運営されている〉

 英国変異株に対しては、第一世代COVID-19ワクチンの有効性は変わらないために、英国や合衆国と行ったワクチン先行国では統計にワクチンの効果が現れる可能性がIHMEにより指摘されていますが、本邦では、ワクチン接種は非季節性第四波エピデミックSurgeに間に合いません*

〈*ファイザーやモデルナといった第一世代COVID-19ワクチンは、ブースター接種をメーカー指定通り行った場合の免疫完成は、第一回接種から6〜8週間後とされる。最近では、不完全でも初回接種後には免疫が得られるという主張もあるが、新たなワクチン耐性変異株が生じる恐れもある〉

 このため筆者の予測通りに英国変異株をドミナントとした非季節性第四波エピデミックSurgeが発生しているとすると、3月から4月にかけて本邦は、たいへんに厳しいことになると考えられます。

 次回は、IHMEによる予測の推移を使い、非季節性第四波エピデミックSurgeの見込みについて論じます。

 筆者による予測とIHMEによる予測が杞憂に終わることを心から望みます。

◆コロラド博士の「私はこの分野は専門外なのですが」新型コロナ感染症シリーズ39:第三波エピデミック定点観測(4)

<文/牧田寛>

【牧田寛】

Twitter ID:@BB45_Colorado

まきた ひろし●著述家・工学博士。徳島大学助手を経て高知工科大学助教、元コロラド大学コロラドスプリングス校客員教授。勤務先大学との関係が著しく悪化し心身を痛めた後解雇。1年半の沈黙の後著述家として再起。本来の専門は、分子反応論、錯体化学、鉱物化学、ワイドギャップ半導体だが、原子力及び核、軍事については、独自に調査・取材を進めてきた。原発問題について、そして2020年4月からは新型コロナウィルス・パンデミックについてのメルマガ「コロラド博士メルマガ(定期便)」好評配信中

関連記事(外部サイト)

×