コロナ禍でピンチの学生街――相次ぐ閉店、地方の学園都市では更に深刻

コロナ禍でピンチの学生街――相次ぐ閉店、地方の学園都市では更に深刻

コロナ禍のなか閉店を発表した池袋の丸井。閉店の動きは飲食店のみならず物販店、そして大手企業にも広がり始めている。

◆コロナ禍で苦境に陥る大学城下町

 新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、とくに苦境に陥っている地域の1つが全国各地の学生街だ。

 大学や専門学校によっては、2020年度は「ほぼ1年じゅう遠隔授業」だったところも少なくなく、都内でもとくに高田馬場・早稲田界隈では店舗の撤退が続出。一部の老舗名物飲食店では、学生による経営支援の動きも起きている。

 しかし、その閉店の勢いはとどまる気配が無く、なかには「サイゼリヤ(高田馬場西口店)」や「日高屋(高田馬場店)」、「磯丸水産(高田馬場店)」「天丼てんや(早稲田店)」などといったおなじみの大手有名チェーン店でも閉店に至った例が少なくない。また、影響は飲食店のみにとどまらず、早稲田大学近くでは「ブックオフ(早稲田駅前店)」が閉店したほか、池袋駅西口では立教大学近くにある大手ファッションビル「丸井(池袋マルイ、マルイシティ池袋)」が2021年夏での閉店を決めるなど、さらに大きな店舗にまで及び始めている。

◆「学生とともに育て上げた観光都市」もピンチに

 コロナ禍による影響がさらに大きかったのが、全国各地にある地方の「学園都市」たちである。

 日本最大の温泉地である大分県別府市もその1つだ。同市には立命館が運営する多言語教育大学「立命館アジア太平洋大学」や、明治時代創立の女学校を起源とする文系総合大学「別府大学」をはじめとして複数の大学・短大・専門学校などがあり、観光地・療養地という地域の特色を生かすかたちで「学園都市」としても成長を遂げてきた。

 かつて団体客で賑わった地として知られる別府温泉であるが、1990年代後半からは韓国人をはじめとした東アジアからの観光客が目立つようになり、そして近年はそうした時代も終わりを告げ、東南アジアや欧米など世界各国からの観光客が訪れる街へと変化した。とくに、近年は大型クルーズ船の寄港も増えていたほか、2019年に開催されたラグビーワールドカップでは、優勝候補であったニュージーランド代表が砂湯を体験したことが全世界へと発信されたこともあり、欧米での知名度が高まりつつあった。

◆地域経済を支えてきた「留学生」たちの存在

 そうした外国人観光客の受け入れを支えていたのが、市内に多く住む「留学生」たちの存在だ。

 別府市内で暮らす留学生は約100ヶ国、約4000人(2019年時点)にも及ぶ。人口約12万人の同市においてこの「4000人」は人口の約3パーセントにも及び、そのインパクトは大きい。

 そして、世界各国からの観光客が訪れる温泉街では、観光関連施設はもちろんのこと、居酒屋のフロアスタッフ、百貨店やショッピングセンターの案内・レジ係など、留学生たちがあらゆる業種で自らの語学力を活かしたアルバイトができることも特徴であった。さらに、近年は市内で起業する元留学生も少なくなく、なかには後継者が居ない老舗の旅館や飲食店の経営を引き継ぎ、世界各国の観光客をターゲットとした多国籍型の経営をおこなうことで再生させる例も複数みられるようになっていた。

 しかし、コロナ禍により来日予定だった留学生の多くは入国できないまま。そして、観光客の減少によって学生が語学を活かすかたちで働けるような職場の求人も大きく減ってしまった。

 もちろん、日本人学生も「遠隔授業」が多いため、わざわざ大分県内に引っ越さずに実家で授業を受けている例も少なくないとみられ、市内の学生人口は大きく減ったままだ。

 別府市内の不動産会社によると、2020年秋入学予定だった留学生が2021年春入学生として来日する動きもあるというが、市内で2020年夏に竣工したある賃貸アパートは2021年2月時点で入居済みの部屋数が30室中9室のみであるなど、学生人口の減少は市民経済にも大きな影響を及ぼしている。

◆町を上げて学生支援の取り組みも

 一方で、学生を支援する動きも起きている。別府市では、早くも2020年5月から官民が協力するかたちで「学生エールプロジェクト」として学生に対して食糧支給などの支援活動を開始。こうした学生への支援事業は、筑波大学がある茨城県つくば市など他の多くの学園都市にも広がっている(なお、国による学生支援緊急給付金制度もある)。しかし、コロナ禍が長引くなか、とくに地方都市では使える予算も限られており、各都市ともに市民や企業の協力により辛うじて実施できているという状態だ。

 「観光都市」であることを活かすかたちで学生とともに成長を遂げ、「学園都市」としても発展することとなった別府温泉。

 しかし、「観光地」「学生街」の両輪が消えた街と、雇用が減った市内に残された学生たちは、将来への希望が見えないままだ。

<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体『都市商業研究所』。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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