日本コロナ対策の大きな障壁。「コロナは風邪」な人々によるデマゴギー

日本コロナ対策の大きな障壁。「コロナは風邪」な人々によるデマゴギー

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◆「コロナは風邪」な人々たち

 なかなか感染者が減り切らない新型コロナウイルスですが、こうなっている原因の一つに、いまだ「コロナはただの風邪」とか「PCR検査は無駄である」と言い張ってきかない人たちの存在があります。

 例えば、日本のPCR検査がなかなか広がらず、「先進国」を自称しながら、検査数で世界159位に甘んじているのは、テレビに出演する言論人を中心に「PCR検査抑制論」を語る人が多く、おまけに「コロナはただの風邪」だということを広めて歩く人たちがいるからです。こういうことを言っている人たちの多くは、「テレビを見ると洗脳される」と主張し、テレビや新聞で語られていることは嘘で、ネットで仕入れた情報だけが正しいのだと本気で思っています。いろんな情報の中から真実を精査するのではなく、ネット上で「コロナはただの風邪」だと語らう人たちの情報だけが正しいと考え、持論が補強されているのです。

 そして、この「コロナはただの風邪」だと主張する人たちの間で出回っているPCR検査の間違った情報が、最近は子供たちに悪影響を及ぼしかねないところまで来ていることがわかりました。

◆ご当地戦隊ヒーローがデマ動画を流す地獄

 子供たちの安全を守るはずの戦隊ヒーローが、子供たちの健康を脅かす危険な存在になっているのが、北海道や茨城県を中心に活躍する「舞神・双乱龍(ぶじん・ソーランドラゴン)」です。新型コロナウイルスなんて、大したことないのに大人たちが恐れ過ぎだと主張する動画をYouTubeにアップするも、最近のYouTubeは新型コロナウイルスにまつわるデマには大変厳しいので、いきなりのBANになってしまったのですが、現在は規制の緩いニコニコ動画に再アップし、この動画が再び見られています。

 彼らの主張によれば、新型コロナウイルスよりインフルエンザの方が圧倒的に感染者がいるのに、新型コロナウイルスを指定感染症として扱うのはバカげているというものです。

 しかし、インフルエンザと同じ、もしくはインフルエンザより大したことのないウイルスだったら、世界中でこんなに一生懸命ウイルスと戦う必要はありません。新型コロナウイルスはインフルエンザよりも毒性が強く、感染力も高いので、マスクをしたり、手を洗ったり、飲食店に時短営業の協力をしてもらったりして、ありとあらゆる手を尽くして、ようやく今の状態に抑え込んでいるのです。それでも東京や大阪の病院は新型コロナウイルスの感染者で埋め尽くされ、本当だったら入院しなければならないレベルの人たちが病院から追い出されている状態です。逆に、インフルエンザではここまで一生懸命マスクをつけなくても、こんなに病院がいっぱいなって、バタバタと人が死んでいくようなことはありませんでした。努力した結果の数だけを見て「インフルエンザよりマシだ」と言ってしまうのは、そこらへんのチビッ子たちよりも頭が悪いです。

 さて、日本ではPCR検査をめぐって、「日本はサイクル数(Ct値)が高すぎるので『偽陽性』が出やすい」というデマが出回っています。こじらせているご当地ヒーローも、そもそも「Ct値」について十分に理解しておらず、ネット上で出回っているデマを鵜呑みにして語っていると思うのですが、脳味噌のサイクル数が同じくらいの人たちが「さすが!」と言ってしまうので、ますます地獄が広がっています。

 そもそもPCR検査というのは、非常に「偽陽性」が出にくいことで知られる検査方法です。ご当地ヒーローの言う「サイクル数が高すぎる」という話は、単純に「どこまで精度の高い検査をするのか」という話に過ぎず、本来、日本はなるべくウイルスを見逃さないように「精度の高い検査をしている」のですから、喜ぶべき話のはずなのです。精度の高い検査をしているだけなので「偽陽性」が増えているわけではありません。むしろ「偽陰性」を減らす作業をしているのです。

◆「人々が家にいれば視聴率が上がるからテレビは恐怖を煽る」論の愚

 しかし、彼らはそもそも「メディアが恐怖を煽っている」と考えているので、子供たちを守るためにも真実を語らなければならないと言って、このようなデマ動画を垂れ流しています。

 テレビが不安を煽れば、人々が外に出なくなり、テレビの視聴率が上がるので、わざと不安を煽っているというのが彼らの言い分ですが、リアルの世界はどうなっているのかと言うと、確かに、人々が家の外に出ることはなくなったのですが、それでテレビの視聴率が昔のように30%とか40%になっているかと言ったら、そんなことはありません。ネットを中心に、さまざまなメディアに食われていて、テレビの視聴率は上がっていないのです。

 それどころか、新型コロナウイルスが蔓延したことで、あらゆる企業が儲からなくなり、CMを引き上げているため、テレビや新聞といったメディアの収益は「新型コロナウイルスの影響で一段と悪くなっている」というのが現状です。そう、テレビや新聞も、新型コロナウイルスが流行せず、今まで通りに経済が回ってくれていた方が儲かっているというわけです。そうなると、「メディアにわざと不安を煽る意味は微塵もない」ということになるわけです。

 では、どうして「新型コロナウイルスに感染すると危ない」というニュースを連日のように流し続けるのか。それは、新型コロナウイルスの感染者が広がってしまうと、もっと多くの人が死に、もっと多くの人が後遺症に悩まされ、もっと多くの人が路頭に迷うからです。伝えれば伝えるほど自分たちの経営は苦しくなるけれど、伝えるのが仕事だから仕方がないのです。今までのような楽しい日々を取り戻すためには、新型コロナウイルスの感染者を限りなくゼロに近づけなければならない。そんな時に、子供たちの安全を守るべき戦隊ヒーローがデマを流しているクソみたいな現実。これはずいぶん悲惨です。

 イギリス型の変異株は、従来の新型コロナウイルスと異なり、子供たちに感染しやすいのではないかという研究があります。もし、本当に子供たちのことを守りたいというのであれば、くだらない陰謀論を振りまく前に、まずは子供たちに「洗い残しのない手の洗い方体操」みたいな動画でも作るべきではないでしょうか。

 今の日本は、とうとう戦隊ヒーローまでもが、子供たちに向かってデマを振りまく存在になっているのです。新型コロナウイルスが国内に蔓延するようになって1年以上経つのに、まだ日本はこんな状態なのですから、そりゃ政治がちっとも良くならないはずです。

◆選挙を利用して、再び「コロナはただの風邪」

 子供たちの安全を守るはずの戦隊ヒーローが、デマを垂れ流す国・ニッポンでは、いまだに独特な主張を続ける政治団体が、自らの主張を広めるために選挙を利用しようと企んでいます。

 昨年7月の東京都知事選に「コロナはただの風邪」と主張して立候補した国民主権党の平塚正幸が、今度は3月4日告示、3月21日投開票の千葉県知事選に立候補し、「マスクを外そう」と書かれた選挙カーを千葉県内に走らせようと計画しているのです。現在、供託金の300万円をはじめ、選挙活動に必要な費用をカンパで集めているのですが、わずか数日で240万円以上が集まっていて、この記事が世に出る頃には達成しているかもしれません。これは平塚正幸の主張に賛同し、お金を出す人が全国にたくさんいる証拠です。

 実は、4月25日に行われる茂原市議選にも候補者を候補者を擁立する計画になっている「国民主権党」。どうやら事前の説明会では、定数22に対して、かなり多くの陣営が集まったといいますが、説明会に集まる人数が多い場合、逆に断念するケースが多くなり、蓋を開けてみたら、ほとんど候補者がいなかったということがよくあります。なので、こんなメチャクチャな主張をしている人であっても、一定数は「コロナはただの風邪」だと思っている人はいるので、うっかり票を取ってしまう可能性も否定できません。政党っぽい名前がついているだけで、ただの迷惑集団だと思いきや、本当に政治的な動きをしようとしていますので、今後も警戒が必要です。

◆トランプ支持の幸福の科学「幸福実現党」の躍進

 実は、今年に入ってから宗教法人「幸福の科学」の政治団体である「幸福実現党」が、菊川市議選、寒川町議選、西条市議選でそれぞれ当選し、今年の戦績を3戦3勝としました。

 宗教法人「幸福の科学」は、アメリカのトランプ大統領を支持し、宗教を信仰していれば新型コロナウイルスに罹らない、あるいは、説法を聞くことで新型コロナウイルスが滅菌されると考えている人たちです。トランプ大統領も「コロナはただの風邪」だと主張していましたが、およそ科学の力では説明のできないことを言っている人たちに政治を託すということになってしまいます。

 もちろん、世の中には「目には見えない不思議な力」を信じる人たちもいるのかもしれません。ただ、どれだけ神様にお祈りやお願いをしても、新型コロナウイルスが目の前から消えることはありません。そんなことができるのなら、みんな、とっくにお願いしているという話です。奈良時代や鎌倉時代なら、病気が流行るたびに大仏を作って、神様や仏様にどうにかしてもらおうと思ったかもしれませんが、今はそういう時代ではありません。だからこそ、有権者の皆さんには「幸福実現党」や「幸福の科学」がどんなものなのかを知った上で、しっかり判断していただきたいのです。

 しかし、そんな政党が快進撃を続けており、2019年の参院選で選挙協力した「NHKから国民を守る党」が、今年に入って実質的に4戦4敗となっているのに、幸福実現党は3戦3勝。次回は3月21日投開票の北茨城市議選に候補者を擁立する計画を立てています。

 それまでほとんど勝てなかった幸福実現党が躍進を遂げる背景には、幸福実現党が選挙のスタイルを変え、集落の代表者として立候補したり、事前の個別訪問を繰り返し、地域のコミュニティーに積極的に顔を出すことで、他の候補と変わらないような選挙戦略に切り替えてきたことが主な原因だと見ています。昔は公明党のように、「幸福実現党」だというだけで勝てると思っていたのだと思いますが、残念ながら、幸福の科学にそこまで多くの信者がいるわけではなかったので、看板だけでは勝てなかった。だから、無所属の候補と同じように地道なドブ板選挙をして、集落で暮らす人たちの心を掴んで、町内会のオッサンに応援されるような存在になり、選挙に立候補するようになった結果、選挙に勝つようになってしまった。逆に言うと、「幸福の科学だから投票しない」という人もそれほど多くなかったことが判明してしまったわけです。こうなってしまうと、今後は幸福実現党の候補がそれなりに勝つ可能性があり、今後も地方で議席を獲得するのではないかと考えられます。

 繰り返しますが、宗教法人「幸福の科学」は、宗教を信仰していれば新型コロナウイルスに罹らない、あるいは、説法を聞くことで新型コロナウイルスが滅菌されると説いています。およそ科学の力では説明のできないことを言っている人たちに政治を託すということになる、ということを知っておいてください。

◆選挙ウォッチャーの分析&考察

 世の中には、いろいろな人がいます。それこそ頭の良い人もいれば、頭の悪い人もいる。新型コロナウイルスに対して科学的なアプローチで立ち向かう人もいれば、非科学的なアプローチで立ち向かおうとする人もいることでしょう。世の中に存在する分には、それぞれ自由にしたら良いという話ではあるのですが、子供たちの命や健康を守る戦隊ヒーローや、市民や国民の命を守るべき政治家が「とてつもなく頭が悪い」では困るのです。

 悲しいことに、どの業界も人が足らず、こういうことにいちいちツッコミを入れる人も少なくなってしまったため、実質的に野放しになってしまいました。東京五輪の森喜朗会長をめぐるゴタゴタにしても、河村たかし名古屋市長がカラんだ大村秀章知事のリコール運動の不正にしても、緊急事態宣言が出ているのに国会議員が銀座の高級クラブで豪遊していた話にしても、みんながガタガタ言ったからこうなっているだけで、もし誰も何も言わなかったら、どれもこれも野放しになっているものばかり。間違った振る舞いに対して、みんなでガタガタ言うのは、こんな時こそ一番大事なことなのです。みんなでちゃんとツッコミを入れて、ちゃんとした仕事をしてもらいましょう。いざとなった時は、選挙で落としてやるのです。

<文/選挙ウォッチャーちだい>

【選挙ウォッチャーちだい】

選挙ウォッチャーとして日本中の選挙を追いかけ、取材しています。選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどを「チダイズム」にて公開中

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