「ご褒美」でのヤル気アップは効果薄。どうすればモチベーションを上げられるのか
2021年03月04日 18時32分 ハーバー・ビジネス・オンライン

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「このプロジェクトが終わったら、私がチームのみんなに焼肉をごちそうしよう!」。このように、「ご褒美」を与えることで人にやる気を出させるのは、短期的には効果的だが限界がある。プロジェクトリーダーや部下を持つ人は、「ご褒美型」のモチベーションアップの方法を試したことがあるはずで、その効果が薄いことも感じているはずだ。
◆「ご褒美」に潜む落とし穴
今回は、このような「ご褒美型」のモチベーションアップが効果が低い理由と、その効果を高める方法について解説する。
行動経済学においては、「外的報酬」(誰かにご褒美をもらうなど外側から起きるもの)によって、モチベーションを高めることに効果があることは確認されており、そのモチベーションの源泉を外的報酬から「内的報酬」(承認ややりがいなど内側から沸き起こるもの)に変更することで、持続的なモチベーションアップに繋がる。
なぜ、内的報酬に切り替えていく必要があるかと言うと、外的報酬の課題は「すぐに飽きられる」からだ。
たとえば、「プロジェクトを達成すると、1万円の昇給だ!」という外的報酬によるモチベーションアップを繰り返していくと、その報酬では物足りなく感じるようになってしまったり、それよりも低い報酬だとモチベーションが上がらなくなってしまう。
なので、持続的に報酬をより高価なものや、価値の高いものにしていかなければ、モチベーションアップに繋げることができないのだ。
◆内的報酬に切り替える方法とは
これを見てもわかるとおり、外的報酬によるモチベーションアップから、できるだけ早期に、内的報酬によるモチベーションアップに切り替えていく必要がある。
内的報酬に切り替えるには、報酬などの外的報酬によって行動させ、成長ややりがいを感じさせることによって、次回から内的報酬によって主体的に行動させることが考えられる。だが、内的報酬には個人差があるため、難易度がかなり高い。
そう思っていたときに、筆者が放送しているFMラジオにお越しいただいたゲストの方に、面白いお話を聞かせていただいた。
その方は現在、エステサロンを経営しており、従業員が目標を達成することで、海外旅行をプレゼントするようにしていた。ここまでは普通の外的報酬を使ったモチベーションアップだが、そのモチベーションアップをさらに高めるために、ある工夫を行っていた。
それが、「事前に商品を買っておく」というものだ。
◆報酬を「手に入れる」より「失う」にシフト
その方は目標達成したときの報酬を事前に買っておいて、従業員の方に「もう買ったからね」と宣言するそうだ。そう宣言したタイミングから、目標達成へのスピードが一気に高まるそうだ。
なぜ、これが効果があるかと言うと、「保有効果」と「損失回避性」で説明することができる。
人は得る前の物よりも、すでに持っているものに価値を感じる。たとえば、他人が持っているマグカップと、自分が持っているマグカップ、それぞれに値段をつけてもらった場合、自分が持っているマグカップのほうを約2倍も高く見積もってしまうのだ。
そして、手に入れる前の物を失うよりも、すでに手に入っている物を失うほうが心理的なショックが大きい、「損失回避性」による効果が合わさっている。
すでに報酬を得た状態にしておくことで、目標を達成できないと、それを失ってしまう……。こうした状況は報酬による価値を高めるだけでなく、報酬を失いたくないという気持ちからモチベーションを高めることもできる。
◆報酬は先に準備するが吉
また、達成できなかった場合には、次こそ報酬を得ようというモチベーションにも繋がるため、報酬の価値をどんどん高めていく必要がない。心理学的には、理想的な外的報酬によるモチベーション向上作戦だと言える。
あなたが部下を抱えている場合は、「もう、あそこのお店予約したからね」「ほしがってたチケット、もう買ってあるからね」のように、すでに報酬を得ている状態にすることがオススメだ。
達成するまで手に入らない報酬は、相手も諦めがついてしまうので、安定・継続したモチベーションアップには繋がらないことを知っておくべきだ。
<取材・文/山本マサヤ>
【山本マサヤ】
心理戦略コンサルタント。著書に『トップ2%の天才が使っている「人を操る」最強の心理術』がある。MENSA会員。心理学を使って「人・企業の可能性を広げる」ためのコンサルティングやセミナーを各所で開催中。