表情に「覇気がない」「暗い」とチャンスを逃してしまう

表情に「覇気がない」「暗い」とチャンスを逃してしまう

Gino Crescoli via Pixabay

◆デメリットになる「不健康そう」な表情

 こんにちは。微表情研究家の清水建二です。会社の中に、健康なのに、「不健康そう」「覇気がない」「暗い」印象を醸し出している方はいませんか。ご自身が「そう見えてしまう」とおっしゃる方もいらっしゃるかも知れません。

 言うまでもなく、こうした印象は対人関係にネガティブに作用します。「何か病気で具合が悪いのではないか」と思われることで、周りに無用な心配をさせてしまいます。この程度なら本人にはマイナスはないかも知れません。

 しかし、表情にパワーが感じられないと、仕事を頼むのをやめよう、仕事のパートナーとして避けよう、大きなプロジェクトを任せるのはやめよう、集まりに誘うのをやめよう、物理的に距離をとろう、ネガティブな感じが自分にも伝染する、そんなふうに思われてしまうこともあるでしょう。得られるかも知れなかった様々なチャンスを逃してしまいます。

◆「表情の明るさ」が仕事に繋がった実体験

 印象が直に仕事に影響をもたらすということを私自身ときおり経験します。ある講演で講演終わりに「来年も再来年もお願いします」とおっしゃって頂いたことがあります。

 前任の講師の方にはもう頼まず、私に切り替えて下さるとのこと。理由を伺ったところ、前任の講師の方は、講演内容は良いものの印象が暗く不健康そうとのことでした。一方の私は、明るく朗らかで聴衆受けが良いです、とおっしゃって頂きました(講演内容も評価されていると勝手に信じています)。

 「不健康そう」「覇気がない」「暗い」印象を与えず、元気な印象に見せるには、お察しの通り、笑顔が効果的です。

 真顔でもダメです。特に男性。真顔の男性は怒り表情に見えてしまう傾向があるからです。笑顔でコミュニケーションをとることが重要なのです。笑顔の効用は様々ありますが、今回は、昨今のコロナ禍を意識して、「誰かがウィルスに感染しているかも知れない」状況における笑顔の重要性について研究を紹介したいと思います。

◆コロナ禍でこそ笑顔がクローズアップされる

 Hareliら(2020)は健康に見える印象と表情との関係を3つの実験から検証しています。

 実験1では、30歳以下の若者と70歳以上の高齢者の幸福表情、怒り表情、悲しみ表情、中立(真顔)表情を用意します。そして、これらの写真を様々な年齢の実験参加者に見せ、健康的に見える表情を選択してもらいます。実験の結果、幸福表情の高齢者は、若者(若者の表情は問わない)と同じくらい健康そうに見えるということがわかりました。「高齢者は不健康である可能性が高い」というステレオタイプを、笑顔は凌駕する力を持っているようです。

 実験2では、実験1と同じ実験を新型コロナウィルスがパンデミックを起こしているときに実施しました。

 実験の結果、「幸福表情が健康そうに見える」ということが高齢者だけでなく、若者にも当てはまることがわかりました。ウィルスが蔓延しているような「誰もが不健康かも知れない」と想定されるような状況において、幸福表情は健康のシグナルとして認識されるようです。

 実験3では、若者と高齢者の写真ではなく、実験参加者が普段接する機会の多い、あるいは少ない民族の様々な表情写真を用意します。

 そして、これらの写真を様々な年齢の実験参加者に見せ、健康的に見える表情を選択してもらいます。実験は、新型コロナウィルスがパンデミックを起こしているときに実施されました。実験の結果、民族の違いに関わらず、幸福表情の人物は健康そうに見えることがわかりました。また、他の表情に比べ、怒り表情は不健康そうに見えることがわかりました。

◆ピンチの時こそ、笑顔をつくってみよう

 無論、笑顔が健康である証拠というわけではありません。しかし、笑顔は健康そうに見える、特にこの効果は世界がウィルスの脅威下にあり、誰もが不健康かも知れない、という不安が大きいときに、顕著に感じられるということです。

 仕事柄、私の周りには人前に立つ仕事や多くの部下を持つ方々が多いのですが、皆、常にご機嫌です。本当にご機嫌かどうかは別ですが、少なくとも、人前では元気よく笑顔を振りまいています。感情は伝染します。少しくらい自身の機嫌が優れなくても、笑顔を作ってみましょう。自身の笑顔が周りに伝染し、楽しい雰囲気が醸成されます。次第に繕っていた笑顔も本物の笑顔になるでしょう。

 ピンチのときこそ笑ってみて下さい。その笑顔がピンチを好転させてくれるかも知れません。新たなチャンスをもたらしてくれるかも知れません。

<文/清水建二>

参考文献

Hareli S, David O and Hess U(2020) What Emotion Facial Expressions Tell Us About the Health of Others. Front. Psychol. 11:585242.

doi: 10.3389/fpsyg.2020.585242

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役・防衛省講師。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16・19」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『ビジネスに効く 表情のつくり方』(イースト・プレス)、『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』(飛鳥新社)がある。

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