ネットの歴史25年分が無料で読める「インターネット白書ARCHIVES」で25年前を振り返る

ネットの歴史25年分が無料で読める「インターネット白書ARCHIVES」で25年前を振り返る

写真はイメージです photo by fancycrave1 via Pixabay

◆インターネット白書ARCHIVESとは

 インターネット白書というものがある。インターネットの動向をビジネス・技術・社会など多角的な視点で解説する業界定番の白書である。一般財団法人インターネット協会(IAjapan)、一般社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)、株式会社日本レジストリサービス(JPRS)の協力のもと、インプレスR&Dが発行している。

 このインターネット白書は、『インターネット白書2021』で25号目を迎えた。そして最新号以外は、Webサイト「インターネット白書ARCHIVES」で無料で読める。

◆96年から現在までの副題に見る「時代」

 最新の2021年の副題は「ポストコロナのDX戦略」だ。2020年は「5Gの先にある世界」。2019年は「デジタルファースト社会への大転換」だ。それぞれの年の副題を並べてみよう。その時代のインターネットの様子が、端的に切り取られている。

2021年:ポストコロナのDX戦略

2020年:5Gの先にある世界

2019年:デジタルファースト社会への大転換

2018年:デジタルエコノミー新時代の幕開け

2017年:IoTが生み出す新たなリアル市場

2016年:イノベーションが疾走する!

2015年:ビッグデータ時代本番! デジタル社会が加速する

2013-2014年:すべてがつながる未来へ IoTが切り拓く新市場 スマホからウェアラブルまで

2012年:日本のソーシャルメディア人口 5,060万人 スマホの普及とSNSの拡大でネットとリアルが融合する!

2011年:ソーシャルメディア新時代の幕開け Facebook/Twitter急伸。スマートフォンは普及目前。

2010年:通信・デバイス・コンテンツの大変革 スマートフォン派、携帯電話派、パソコン派で利用動向を徹底比較

2009年:24時間×100Mbpsの時代は来るか いつでもどこでも何でもつながるワイヤレスブロードバンドへの挑戦

2008年:ウェブとモバイルの進化がもたらすインターネット大再編の序章

2007年:新たなネット経済圏「セカンドライフ」出現 41人の論説と399点の調査データで読む2.0市場

2006年:Web2.0ビジネスが動きだす

2005年:すべてのビジネスはインターネットで動く! ブロードバンド人口3千万人突破

2004年:新たな勝ち組が生まれるネットビジネス大競争時代

2003年:利用実態調査データで読むワイヤレス・ブロードバンド時代

2002年:日本のインターネット人口4619万5千7百人

2001年:日本のインターネット人口3263万6千人

2000年:日本のインターネット人口1937万7千人

1999年:日本のインターネット人口は1508万4千6百人

1998年:日本のインターネット人口は1,00万人を突破!

1997年:日本のインターネット人口は571.8万人! 話題のイントラネットの普及率は企業の12.2%

1996年:報告します。激動のインターネット元年

 年と副題を見て、かなり驚きがある。2012年という10年前の時点で「スマホの普及」が挙げられている。そして2010年の時点では「スマートフォン派、携帯電話派、パソコン派」が並んで副題に入っている。

 また、20年前の2001年は、日本のインターネット人口は3000万人強しかいない。そして1998年までさかのぼると1000万人という数字になる。短い期間で、急速に世の中が変わっていったことが分かる。

 最初の『インターネット白書'96』は25年前である。この時期の白書の内容を振り返ってみよう。

◆25年前のインターネットを振り返る

 それでは、『インターネット白書'96』を見ていこう。そして、今との違いを確かめていこう。

◆ 第1章 日本のインターネット、この1年の動き

 ここでまず挙げられているのは、プロバイダーの急激な増加だ。94年に17社だったのが、95年には105社になっている。Windows 95 に、インターネット接続機能が入ったことが、大きな要因として挙げられている。前年の95年の段階で、日本のインターネット人口は125万人、うち女性は4%と書いてある。モデムの通信速度は、28.8Kbps。通信速度の最大は現在ではギガを越えており、平均実測は数百Mbpsになっている(みんそく)。

◆第2章 インターネットの概略

 こちらは、歴史や組織などについての解説が書いてあり、利用するだけの一般の人には、関わりがあまりない内容だ。

◆第3章は インターネットの現状

 現在との比較で興味深い。たとえばインターネットの利用歴は、1年未満が50%を越えている。男女比は、男性93.2%に対して、女性6.8%と、現在とは大きく違う構成だ。地域では関東が50%を越える。

 年齢分布では、20歳未満が3.6%しかおらず、20〜24歳が26.9%、25〜29歳が23.3%、30〜34歳が21.6%、35〜39歳が11.7%、40〜44歳が6.2%になっている。未成年はほとんどおらず、20代から30代前半が中心になっている。この時期の中心層は、現在では40代後半から50代になっている。この世代が、実質的な日本のインターネット第一世代という感じだろう。

 職種や業種では、研究・開発、技術、理系の学生といったところが突出している。Webブラウザーについては、Netscapeが80%程度で独占状態にある。

◆首相官邸のサイトは94年製

◆ 第4章 インターネットに関する最近の動き

 首相官邸のサイトが1994年8月にできており、その後96年1月までに、各省庁が情報発信を始めている。国のインターネット活用は、意外に早くからおこなわれている。

 ビジネス分野では、今後活性化が期待されるものとして、電子出版、ソフトのDL販売、マルチメディア、遠隔教育、オンラインショッピングなどが挙げられている。今、身近に普通にあるものは、この頃から予想されていたと言える。

 現在とは大きく違うものとして、「パソコン通信との相互乗り入れ」という項目がある。当時は、NIFTY-Serve や PV-VAN といった、インターネット以前のパソコン通信が多くあった。それらとの一体化について触れられている。

 また、最新技術としてテレビ会議システムの記述がある。しかし、速度的にまだ実用的とはいいがたいと書いてある。音声・映像のリアルタイム再生についても、まだまだ速度的に困難だったことが白書から分かる。ただ、その萌芽は見てとれて、ライブストリームなどについても紙面が割かれている。

 この時期の携帯電話の利用者は、1996年内に1000万人を突破する予定、といった程度だ。PHSやポケベルを含めて2000万人程度。将来的には、ダイヤルアップ接続程度の速度で、インターネットにアクセスできるようになるだろうと予想されている。

 セキュリティ技術の項目も設けてあり、当時からセキュリティは気にされていたことが分かる。

◆ 第5章 インターネットのこれから

 ビジネス分野では、企業内のインターネット化、情報提供型ビジネス、エレクトロニックコマースが、並べて紹介されている。これらは、ほぼ実現できているだろう。教育分野は、当時から言われていることが、今ようやく進みはじめているように感じる。

 放送やエンターテインメント分野では、現在は動画配信が当たり前の時代になっている。出版分野については、電子新聞やWebマガジンと並んで、個人出版が大きく扱われている。また広告についても触れられている。画面に広告を貼り付けて収益化するという方向性は、当時の路線からまだ脱却できていないように感じた。

 この章では、インターネットを取り巻く課題についても触れられている。相互接続については現在、ユーザーレベルで意識されることはない。課金については、クレジット決済やネットバンキングについて触れられている。

 現在では電子通貨や、各種クーポンなど、決済方法は多様化しているが、その基盤として、クレジットカードやネットバンキングが鎮座している。この構造は、最近では問題が発生している。クレジットカード会社が、特定の名称の商品販売時に、その会社の取り引きを断るなど、インフラとしての不適格さが指摘されている(山田太郎 ?(参議院議員・全国比例))。

 ネット上の法律問題としては、著作権問題といった現在にも続いている問題が、この時期から取り上げられている。

◆そして今のインターネット

 駆け足で『インターネット白書'96』を概観していった。規模は今とは大きく違うが、小さいながらも現代へと続く未来は予想されており、起きている問題も現在と地続きのものが多かった。

 最新の『インターネット白書2021』の10大キーワードを並べてみよう。

1. 減災コミュニティ

2. 非接触テクノロジー

3. テレワーク

4. オンライン教育

5. オンラインエンターテインメント

6. 改正著作権法

7. インフォデミック

8. マーケティングとプライバシー

9. デジタル庁構想

10. サスティナブルシティ

 これらのいくつかは、コロナ禍により一気に必要性が増してきたものである。また、過去からの延長で、改善が続けられているものも多い。

 インターネットはこの四半世紀で、一部の人の道具から全世界の人の道具になった。汽車や自動車、電波通信が世界を大きく変えたように、インターネットは社会を激変させている。

 たった四半世紀でこれほどまでに普及するのかと思うとともに、四半世紀も経ったのかという思いも大きい。これからさらに四半世紀で、世の中はどのように変わるのか、恐ろしくもあり楽しくもある。

<文/柳井政和>

【柳井政和】

やない まさかず。クロノス・クラウン合同会社の代表社員。ゲームやアプリの開発、プログラミング系技術書や記事、マンガの執筆をおこなう。2001年オンラインソフト大賞に入賞した『めもりーくりーなー』は、累計500万ダウンロード以上。2016年、第23回松本清張賞応募作『バックドア』が最終候補となり、改題した『裏切りのプログラム ハッカー探偵 鹿敷堂桂馬』にて文藝春秋から小説家デビュー。近著は新潮社『レトロゲームファクトリー』。2019年12月に Nintendo Switch で、個人で開発した『Little Bit War(リトルビットウォー)』を出した。2021年2月には、SBクリエイティブから『JavaScript[完全]入門』が出版される。

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