シャンプーの量り売りという試み。プラスチック削減し持続可能な未来へ

シャンプーの量り売りという試み。プラスチック削減し持続可能な未来へ

小林洋光さん

◆ユニリーバがシャンプーの量り売りを開始

 近年、注目される環境問題への取り組みやSDG’s(持続可能な開発目標)。

 大量消費・大量生産といった従来型の経済社会から、持続可能な循環型社会へと発展するために、個人や企業問わず様々なアクションが生まれつつある。

 そんななか、プラスチック削減の取り組みとして脚光を浴びているのが“量り売り”だ。無印良品やナチュラルローソンなどの大手企業が、一部の店舗で食材や日用品の量り売りを始めている。

 他方、消費財メーカー大手のユニリーバ・ジャパンは2021年2月より、新しいビジネスモデルとして日本初の「移動販売車を使ったシャンプーの量り売り」をスタートさせた。

 プラスチック使用量削減の文脈から、なぜシャンプーの量り売り実施に至ったのだろうか。実証実験が行われる長野県佐久市の現場へ出向き、その様子やプロジェクト担当者に話を伺った。

◆移動販売車を利用

 今回向かったのは長野県佐久市にある「ヘルシーテラス佐久南」。県内最大級の道の駅として知られ、山々に囲まれた風光明媚な景色広がる場所だ。

 駐車場の空きスペースの一角に、移動販売車を設置して行われたシャンプーの量り売り。地元事業者の移動スーパー「みんなのご近所さん」と連携し、「LUX」や「Dove」といったユニリーバ製品の量り売りの陳列容器が置かれていた。

「シャンプーの量り売りを実施することを、市内の新聞やチラシで事前に告知しました。量り売りはふらっと立ち寄っていきなりお買い求めになるようなものではではないので、事前に情報発信しておくのが大切だと思います」

 そう語るのは今回のプロジェクトを企画したユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社シニアリーガルマネージャーの小林洋光氏。

 取材当日(2月27日)の午前中には、20人ほどの地元住民が量り売りのシャンプーを買いに来たという。

 中でも好評だったのは20代の若年層。かつての商店街で見られた肉や魚、揚げ物などの量り売りの光景をあまり知らない世代だ。

「若い世代はエコやサステナビリティに対して感度が高い分、今回の量り売りに対して『エコな活動でいいですね』といった声をいただきました。シャンプーの量り売りという目新しさや環境への配慮を好意的に受け止めていただけたと思います」

◆初めての実証実験。今後の課題は

 基本は自宅から空き容器を持って来てもらう想定だ。きれいに洗って乾かした空き容器にシャンプーなどを入れて買うことができる。万が一忘れた場合はその場で容器を購入することも可能だという。販売価格は100gで60円。スーパーやバラエティストアよりもリーズナブルな価格設定だ。

 また、必要な量を欲しい分だけ購入できるのも利便性が高いと言える。

 ただ、今回の佐久市での実証実験が初めての試みであり、「まだまだ改良する余地がある」と小林氏は話す。

「寒さゆえに注ぎ口からシャンプーが出にくかったり、業務用のダンボールが見えてしまって見た目があまりよくなかったりと、機材やオペレーションの点でもっとブラッシュアップしていく必要があります。

 また、想定ではお客様にご自宅から空き容器を持ってきていただくつもりでしたが、実際にはシャンプーが残った状態の容器を持ってきて“継ぎ足し”を希望されるケースもありました。まだまだお客様が『量り売りのどういうところに興味を持つのか。どんなニーズがあるのか』を把握しきれていないので、回を重ねる中でアンケートやリアルな声を聞いて改善していきたいです」

◆シャンプーの量り売りプロジェクトは、地元企業や自治体の協力が不可欠

 プラスチック削減の取り組みとしてユニリーバが始めたシャンプーの量り売り。実証実験を行った長野県佐久市は担当者である小林氏の生まれ故郷であり、「地元企業や自治体のバックアップが大きかった」という。

「ユニリーバの社内ベンチャー制度でシャンプーの量り売りを提案し、実施が決まった後、私の地元の佐久市で移動販売車を営む知人から『買い物が困難な年配者のためにシャンプーやコンディショナーの移動販売ができないか』と相談されました。それがきっかけで、移動販売車でのシャンプーの量り売りを検討しはじめました。もともと佐久市との繋がりや接点があったので、自治体や地元企業も全面的にサポートしてくださり、そのおかげで今回の実施にこぎつけました。今後も定期的に佐久市での量り売りを実施していく予定ですが、ある程度ビジネスモデルができてきたら、他の地域へも展開したいと考えています」

◆昔の“量り売り文化”を復活させ、新たな価値を生み出したい

 最後に今後のシャンプー量り売りの展開について小林氏に伺うと「ユニリーバと接点のある地域から広げ、コミュニティが生まれるような形にしていきたい」とし、次のように抱負を語った。

「ユニリーバ・ジャパンでは『地域 de WAA』という取り組みがあります。提携自治体の施設を社員がコワーキングスペースとして利用でき、その代わりに地域課題の解決につながるような活動に参加するというものです。

 まずは既にそうした関わり合いのある地域でシャンプーの量り売り販売を始められるようにしていきたい。そのためには佐久市での実証実験で得たデータや知見をもとに、しっかりとプロトタイプを作り、他地域でも応用できるようにしなくてはならないと思っています」

 また、かつての日本に存在した“量り売りの文化”を改めて創造すべく、様々な構想も視野に入れているそうだ。

「まずはシャンプーの量り売りという新しいビジネスモデルを知っていただくとともに、お客様のニーズの分析をしていきたいと思っています。将来的には、地域のコミュニティづくりや、地域のリタイア層の雇用機会の創出などにもつなげていければと考えています。

 さらには、プレミアムシャンプーや限定商品の量り売りなどのビジネスモデルも検討し、『量り売り体験』そのものに楽しくてわくわくするような価値を生み出したい。昔は日本でも当たり前だった“量り売りの文化”を、今の時代に合うような形で再提案し、今後も色々な可能性を模索しながら取り組んでいきたいですね」

 サスティナブルな取り組みとして注目される量り売り。今後どのような形態のサービスが生まれるのか注目したい。

<取材・文・撮影/古田島大介>

【古田島大介】

1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。

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