「制服の色でシフトを見える化」「新入社員が会社のDXを推進」社員の働きやすい環境作りに挑んだ企業たち

「制服の色でシフトを見える化」「新入社員が会社のDXを推進」社員の働きやすい環境作りに挑んだ企業たち

三重県南部自動車学校

 株式会社リクルートキャリアが主催する「第7回 GOOD ACTION アワード」の受賞式が3月3日、東京・千代田区にあるリクルートキャリア本社で行われた。例年は受賞企業担当者や報道陣が集まるが、今年は新型コロナウイルス拡大防止のため司会、審査員、受賞企業担当者のみが来場。メディア向けに、表彰式はオンラインで公開した。

 「GOOD ACTION」とは、働き方の多様化が求められる現代において、一人ひとりがイキイキと働くための職場の取り組みに光を当てるプロジェクトのことを指す。昨年8月6日〜9月28日の間に応募した企業の中から、書類審査、オンライン審査、最終審査を経て、8社が選ばれた。

◆一人の女性の前向きな動きが、社内を変えた

 それぞれの審査員が独自の目線で高く評価したアクションに贈る「審査員賞」には、「ワークスアイディ株式会社」(東京、人材サービス)、「大橋運輸株式会社」(愛知、運輸)、「株式会社カクイチ」(東京、建設)の三社が選出された。

 「ワークスアイディ株式会社」は、人材業界が持つ「面談は対面が当たり前」の風潮を見直し、5年前から電話面談やビデオ録画面談を実施。子育て中の女性社員が働きやすいよう、テレワークも推進している。

 これらの施策を社内で立ち上げ、実現させたのは、HRS事業本部HRSマーケティング室室長の朝比奈一紗さんだ。

 朝比奈さんが電話面談を提案した際、「対面ではなく電話ですませるのは失礼ではないか」といった反対意見が出たが、自分が率先して行動し、一人で月に300件の電話面談をやり抜いた。

 さらに、それまでできる仕事が少なかった時短勤務の女性を集めたチームを作り、積極的に電話面談を行った。こうした土壌がその後ビデオ録画面談やライブ面談の導入に繋がった。

 2019年には、朝比奈さんが妊娠。女性社員がもっと働きやすい環境を作ろうとテレワークを推進した。以前は子育て中の女性社員のキャリアに優しい企業とは言えなかった環境を大きく変え、一度は退職した女性社員を再雇用することにも成功した。

 テレワークの恩恵を受けたのは女性だけではない。会社全体としては、新型コロナウイルスで働き方の見直しが迫られる中、時代の流れに対応できた。受賞を受けて朝比奈さんは、「復帰できる場所だけではなく、輝ける場所も提供したい」と今後の意気込みを語った。

◆「男の職場」がダイバーシティを実現

 「大橋運輸株式会社」は、人材不足や従業員の高齢化など運輸業界が抱える課題をダイバーシティー経営によって乗り越えてきた。運輸業と聞くと、「男性の職場」のイメージが強いが、同社は女性の働きやすい環境整備のため2011年から「週3日勤務」や「1日4時間からの勤務」「フレキシブルな出社時間」を打ち出した。また国籍にとらわれず、中国やフィリピンなど外国籍の従業員も働いている。英語が得意なスタッフが通訳となり、通訳を設け、言葉の壁を乗り越えた。

 同社で働く中国籍の女性は「〇〇人という見方はされず、〇〇さんというふうに個人として扱ってくれます」と社風を語った。

 同社の鍋嶋洋行社長は、「ダイバーシティ経営と聞くと大企業が取り組んで成果をあげていると思われがちです。でも中小企業ほど必要なことだと思っています。私たちはこれからもダイバーシティ経営の素晴らしさを伝えていきたい」と熱意を示す。

◆電話とファックスからSlackへ

 「株式会社カクイチ」は、創業130年の企業だ。従業員の平均年齢は46歳と高いためか、電話とファックスがメインというアナログな職場で情報共有に課題を抱えていた。その状況を打破すべく、田中離有社長が声をかけたのは当時入社1年目の社員だった。なんと新入社員をSlack導入のプロジェクトリーダーに任命し、社内の「DX」(デジタルトランスフォーメーション)化を実現したのだ。結果、情報共有のスピードが劇的に改善した。

 執行役員事業戦略部長の鈴木琢巳さんは、会社が変わったと感じた瞬間を次のように語った。

「2019年に社長のつぶやきというチャンネルを作りました。そこでは社長が思ったことを書いたのですが、社長の投稿に対して多くの社員が一斉にコメントをしていたんです。今振り返るとこれが社風が変わった潮目だったと思います」

 DX化によって部署間やグループ会社間の壁がなくなり、社内コミュニケーションが円滑に進むようになった。組織のあり方が変わったことで、5人1組になって3ヶ月の期限で一つのタスクを完遂する「組織横断型タスクフォース」という新制度を導入することにも成功した。

◆シルバー人材をAI事業に活用

 働き手のバリエーション、性別、国籍、年齢など外形的な多様性のほかその人の価値観や個性、考え方など内面的な多様性を生かすことに貢献した取り組みを行った企業に贈る「ワークスタイルバリエーション賞」には、「株式会社ライトカフェ」(東京、ITサービス)が選出。

 同社は、AIのもととなるデータである「日本語AIアノテーション」を作る事業を展開している。日本語の細かな部分をAIに覚えさせていくため根気が必要なほか、正しい日本語力も求められる。海外への委託も難しく、同社が戦力として高い期待を寄せたのがシルバー人材だった。

 同社にはもともと、「新たな雇用を生み出す」との目標があった。シルバー人材は仕事に真面目なだけでなく、高い日本語力を持っている人が多い。「IT×シルバー人材」という新たな雇用を生み出し、リタイアした人たちに活躍の場を与えたことがGOOD ACTIONとして評価された。

 また、年齢を感じさせない活躍をするシルバー人材の姿を見て、若手社員が刺激を受けるという相乗効果も生まれた。

◆褒めるだけで、「怖い教習所」が人気の教習所へと変貌

 働き方の生産性向上に繋がるイノベーティブなアクションに送られる「ワークスタイルイノベーション賞」を受賞したのは、「大東自動車株式会社 三重県南部自動車学校」(三重、教育・学習支援)。

 少子化によるマーケット縮小に対する施策の一環として「ほめる教習」を始めたところ、生徒からの評判がよく、入学申し込みが増加。かつては生徒を叱る厳しい指導を行い、時にクレームを受けることもあった「怖い」教習所のイメージが変わった。全国的にも珍しい施策を行う教習所を見たいと、同業や他業種とわず見学申し込みが集まっている。

 同社の加藤光一社長は、「周りからわかってもらえると嬉しいですよね。最初は生徒さん向けに『ほめる教習』を始めたのですが、やがて社員同士の仲が良くなるという思わぬ効果も見られました」と笑顔で語った。

 社員同士が自然と「早く来て事務所の鍵を開けてくれてありがとう」というふうに感謝の気持ちを口にするようになったのだ。従業員の一人は、「誰かを毎日褒めているとネタはすぐになくなります。そうすると『何か褒めるところはないか』を探し始めるんです」と褒める文化の良さを話す。

◆リモートワークワーク中心ならではの社員コミュニケーション術

 その年の働き方や働き方の課題を解決しようとする取り組み「トレンド賞」には、「株式会社マクアケ」(東京、ITサービス)が選ばれた。

 同社ではコロナ禍でリモートワークが導入され、社員同士のコミュニケーションが希薄になる問題を解決するため、仕事やプライベートを話す番組「ウラダル」を放送。

 「幕ウラでダル絡み」の略で、毎週木曜午後9時に配信している。有志が集まって企画や撮影、演出を行い、料理が苦手な社員が唐揚げを作るシーンをリアルタイムで発信しするといったユニークな番組を作ったこともある。

 最高視聴率は80%を達成。「ウラダル」はやがて社内でも表彰されるほどの評価を得た。新規事業本部マネージャーの北原成憲さんは、「驚いたのは、会ったことがないけど、仲がいい社員ができたことです」番組を通じてお互いを知り、人と人との繋がりを生みました」と成果をかみしめた。

◆看護師の長時間労働を解消した、シンプルなアイデア

 今年のGOOD ACTIONアワードでは、「Cheer up賞」を新設。以下の2社が選ばれた。

 「宮城県漁業協同組合 七ヶ浜支所」では、震災で海苔加工施設が壊滅的な被害を受けたことをきっかけに、ライバル同士が手を結んで危機を脱出。伝統的に海苔の養殖と加工を営む個人事業同士が競合していたが、復興するには協力するしかないと衝突をしながらも連携する道を選んだ。結果として分業が進み、作業の負担が軽減。品質も向上し、収益も増加した。

 「国立大学法人 福井大学医学部附属病院」では、看護師の長時間労働に課題を感じていた。約660人いる常勤看護師の年間の時間外労働時間は、約600時間だった。

 その状況を改善すべく、日勤スタッフと夜勤スタッフの服の色をそれぞれ白色と紺色に変え、シフトを見える化した。以前は白のみだったためシフトがわからず、終業近くに仕事を頼まれて帰れなくなるケースがあったが、ユニフォームの色でその人のシフトがわかるようになってからは、不必要な声かけをされにくくなった。患者にも浸透し、「〇〇さんはもうすぐお仕事終わりだよね。早く帰らなくちゃ」と声をかけられことも。

◆誰でも思いつきそうなことを粘り強く続けることで、職場は変わる

 表彰式の最後に審査員を務めた学習院大学の守島基博教授は、第7回「GOOD ACTIONアワード」の受賞企業について次のようにコメントし た。

「新型コロナウイルスの影響で、昨年から現在まで、企業は様々な変化を迫られました。たとえば、リモートワークを導入した企業は、社員同士のコミュニケーションのあり方の見直しに直面しました。私は8つの企業の取り組みを見て、このような時期に企業が変わっていくために必要な要素は3つあると感じました。

 一つ目は、一見するとありきたりなやり方です。『褒める』や『制服の色を変える』は、誰でも思いつきそうなことですが、そこに気づき、実行に移せるかが大切だなと感じました。

 二つ目は、努力。粘り強く施策に取り組み続ける姿勢ですね。

 三つ目は、うまくいったことにフォーカスし、そこを褒めること。何かにトライすれば良い面と悪い面の両面が出てきます。『ここはスムーズに進んだね』と良い面を積極的に評価することは大切です」

 SAPジャパン特別顧問のアキレス美知子氏は「現在は様々な働き方があります。どんな施策を打ち出すにしろ、働き手がハッピーじゃないと成果に繋がりません。受賞した企業の方は、その点を理解されていると感じます」と続け、改めて受賞企業の取り組みを評価した。

<取材・文/薗部雄一>

【薗部雄一】

1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。

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