選手検査も不十分! 五輪強行で都内重症者500人増のリスク

選手検査も不十分! 五輪強行で都内重症者500人増のリスク

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〈無観客開催は、会場内の感染拡大リスクが最も低いので、望ましいと考える〉
〈観客がいる中で深夜に及ぶ試合が行われていれば、営業時間短縮や夜間の外出自粛等を要請されている市民にとって、「矛盾したメッセージ」となります〉

6月18日に、そんな文言が書かれた“提言”を発表したのは「コロナ専門家有志の会」だ。

この提言の正式名称は「2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に伴う新型コロナウイルス感染拡大リスクに関する提言」。ここでは五輪を開催した場合の新型コロナウイルスの感染拡大を予測した複数のシミュレーションが紹介されている。

感染力が強いインド由来のデルタ株が広がった場合のシミュレーションでは、五輪によって人流が増えると、7月中に東京都の1日の新規感染者数が2,000人を突破するという。それに伴い、重症者数も急増。8月中にも都が現在確保している重症病床数373に至り、最悪の試算では重症者は500人を超えてしまうというのだ。

だが、これだけ危機的な予想が出ているにもかかわらず、提言に五輪の「中止」や「延期」を求める意見は盛り込まれなかった。

■デルタ株の流行で新規感染者が5倍に

「五輪を開催しなくても、夏場は季節性の要因で感染者が増加する可能性があります。昨年のデータを見ると、春と夏に波が来て、秋にいったん下火になって、また冬に波が来ています。現に東京では、すでに感染が再拡大し始めています」

こう警鐘を鳴らすのは、医学博士で医療ガバナンス研究所理事長の上昌広さん。確かに、6月25日の東京都の新規感染者数は562人と、前週から109人も増加した。すでに第5波が始まってしまったかもしれないのだ。

第4波と違うのは、第5波では、感染力の強いデルタ株の拡大が懸念されていること。前出の「提言」では、デルタ株は感染力と病原性がともに従来株の1.2倍であることを前提にシミュレーションしていた。だが、上さんは、その前提が楽観的とさえ考えている。

「従来株の場合、アジアにおける100万人あたりの1日の新規感染者数は50人程度でした。しかし、デルタ株が主流になっているマレーシアなどは、約5倍の250人くらいに増えています。これは一時期のヨーロッパやアメリカ並みの感染率。今まではアジア人は感染しにくい何らかの要因“ファクターX”があるといわれていましたが、デルタ株には、どうやら関係がなさそうなんです」

■専門家と市民が共にIOCと戦うべき

100万人あたり250人というのは、東京都の人口(1,396万人)からいうと、約3,500人に該当する。

「つまり、五輪が無観客だろうがなかろうが、デルタ株が主流になると、東京の1日の新規感染者数は3,000〜4,000人にまで増える可能性があるんです」

重症化しやすい高齢者のワクチン接種は、ほかの世代よりも比較的進んではいるが……。

「それでも、重症者の数はこれまでの3〜4倍にはなると予想しています」

第3波がピークに達した今年1月20日、東京都の重症者は160人だった。仮に3倍であれば重症者は480人、4倍であれば640人。

「デルタ株による第5波が来れば、重症者数は500人を超えるでしょう。そうなれば、医療崩壊どころか日本社会が崩壊しかねない。残念ながら、中止も延期も入っていない有志の会の提言は、『私たちは警鐘を鳴らしましたよ』というアリバイ作りとしか思えません。五輪の検査体制の脆弱さを、提言書で指摘していないことも問題です、感染拡大を防ぐため、選手村では毎日、選手に“抗原検査”を行うことになっています。しかし、抗原検査はPCR検査に比べて感度が低いので、ウイルス量の少ない感染者は見落とされる可能性がある。選手の中からは『より感度の高いPCR検査をしてほしい』という声が上がっています。本気で、国民や選手のためを思うなら、こうした点を盛り込んだ提言を、五輪開催の決定権を持つIOCにこそするべきです」

「海外メディアは日本に同情的だ」と、上さんは見ている。

「IOCのバッハ会長にいいようにやられてかわいそうだと、多くのメディアがバッハ会長を批判し、五輪の金満体制を改めなければならないと報じています。いま、必要なのは、専門家と市民が一致団結して、直接IOCに訴えること。世界のメディアはそれを報じ、後押ししてくれるはずです」

自分や大切な人たちの命を守るためには、遅すぎるということはないのかもしれない。

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