自宅療養の母子に相次ぐ悲劇…医師は「妊娠中の感染は早産招く」と警鐘

自宅療養の母子に相次ぐ悲劇…医師は「妊娠中の感染は早産招く」と警鐘

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日本中に押し寄せる医療崩壊の波。全国の自宅療養者は10万人に迫る勢いだ(8月20日時点)。

中等症でも病床逼迫のために入院が困難な事例が増え、自宅療養中に容体が急変して亡くなる例も相次いで発表されるなか、千葉県柏市で起きた“自宅出産、早産で生まれた新生児死亡”の一件は、とりわけ痛ましく、世に大きなショックを与えている。

経緯は次のようなものだったーー。

柏市でひとり暮らしをしていた30代女性に症状が現れ始めたのは8月9日のことだったという。女性は妊娠8カ月だった。

当初は発熱やせきなどの症状があったようだ。11日になって感染が確認され、軽症と判断された。

ところが、14日の夜になって症状が悪化。血中酸素飽和度が下がって中等症と判断され、翌日から県と市が入院先の調整を始めたが、受入れ先は見つからなかった。

そのまま自宅療養を続けていた女性は、17日の朝になって腹部に張りを感じた。訴えを受け、県、市、かかりつけ医が改めて受入れ先を探すも、見つからない。

夕方になって出血と陣痛のような痛みが起こり、女性は保健所に連絡する。この間、県や市は、入院先の調整を急ぐも、決まらない。

午後5時過ぎに女性は自宅で出産した。119番にも自ら電話した。生まれたばかりの赤ちゃんは息をしていたというが、救急隊が到着した際には呼吸がなく心肺停止状態。午後5時55分ごろに市内の病院に緊急搬送され、午後6時すぎに赤ちゃんの死亡が確認された。

赤ちゃんは男の子だったというーー。

感染症を専門とする、のぞみクリニックの筋野恵介院長は、妊婦が感染した際のリスクについて、

「妊娠の週数にもよりますが、まず軽症の場合は胎児に影響は出ないと思います。しかし、血中酸素飽和度が下がると胎児にも酸素がいきにくくなるので発育に問題が出る可能性があります。また、肺炎でせきがひどいと腹圧がかかるために陣痛や早産の原因になります。ですから妊婦さんこそワクチンを打ってほしいと思っています」

また、病院が感染者の妊婦を受け入れる難しさを次のように話す。

「ふつう、産科というのは“病気ではない”前提の場所です。風邪ですら『ほかの病院で診てもらって治ってから来てください』と言うくらいですから。なのでコロナに感染していると通っていた産科では受け入れられない。総合病院や大学病院の産科であれば受け入れの可能性はありますが、どこも病床がいっぱいで難しい状況です」

ひとりの赤ちゃんの尊い命が失われたことを受け、千葉県は新型コロナ感染妊産婦への対応強化を発表。また千葉大病院は感染した妊産婦を受け入れる専用病床を設置する方針を決めているーー。

■子供の面倒を見るために自宅療養を選ぶ場合も

“母が子を失った”柏市の死の5日前、自宅療養中に“子が母を失った”悲しい事例も起きている。

東京都内の40代女性は、夫と子供とともに家庭内感染した。女性は糖尿病の基礎疾患があり、ワクチンは接種していなかった。

せきや発熱の症状があって、8月10日に陽性と判明。親子3人で自宅療養をすることになった。翌11日の症状はせきと発熱のみだったことを、保健所が確認。しかし12日、彼女が自宅で倒れているところを夫が発見。死亡が確認された。

家族で感染し母親が亡くなったこのケースと似た事例が、8月18日に静岡県富士市でも起きたことをテレビ静岡が報じている。

家族3人が感染し、夫は宿泊療養施設に入ったが、妻と子供は症状が軽く自宅療養を希望。その後、妻の容体が急変し、亡くなったという。

前出の筋野院長は、一家全員感染の事例は少なくないと話す。

「両親ともに感染するとどちらかは自宅療養で子供を見るという場合も多いです。私が診療した中でも、お父さんがホテル療養、お母さんが子供を見ながらなんとか自宅療養というケースがありました」

都内で亡くなった女性の子供の年齢は公表されていないが、学校に通っている年齢であれば、夏休み最中の出来事だっただろうか。

楽しく過ごせたはずの夏休みに流す涙は、あまりにもつらいーー。母子たちの悲劇がこれ以上続かないことを祈るばかりだ。

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