尾身会長の医療機構、現場から悲鳴「暴走コストカットで患者救えない」

尾身会長の医療機構、現場から悲鳴「暴走コストカットで患者救えない」

尾身会長の医療機構、現場から悲鳴「暴走コストカットで患者救えない」の画像

コロナ対策の指針を示してきた政府分科会の尾身茂会長(72)。ときには強い口調で各病院にコロナ患者の受け入れ拡大を求めてきたが、自分が理事長を務める組織では――。

「うちの病院には、今年4月から常勤の内科医が一人もいないんです。定年間近の非常勤医師と、研修医が交代で回してきました。その研修医も、もうすぐいなくなります。こんな状態で、どうやってコロナ患者を受け入れるんでしょうか。不安しかありません」

そう話すのは、9月末から50床のコロナ専門病院になることが決定した東京城東病院(東京都江東区)で働く看護師のAさん。

東京城東病院は、政府分科会の尾身会長が理事長を務める地域医療機能推進機構(以下、JCHO)傘下の病院のひとつだ。

JCHOとは、全国に57の病院と26の介護老人保健施設などを持つ、厚生労働省が所管の独立行政法人。’20年度には300億円を超える巨額の補助金が投入されている。

「JCHOの財務諸表を見ると、少なくとも230億円以上がコロナ対策関連の補助金とみられます」

そう指摘するのは、医療ガバナンス研究所の理事長で、内科医の上昌広さんだ。

コロナ専用病床を1床確保すると、病床の種類に応じて1日あたり7万1,000〜43万6,000円の補助金が、患者が入院しているか否かにかかわらず支給される(重点医療機関の場合)。ほかにも、重症患者向け病床を確保すると、1床あたり1,950万円の補助金が払われるなどの制度もある。

8月24日時点で、JCHOは傘下の全病院で870床、都内の5病院だけで187床のコロナ専用病床を確保。結果、補助金が230億円以上まで積みあがったようなのだが……。

都内の自宅待機者がピークの2万6,000人を超えた8月末時点で、JCHOの都内コロナ対応病院のうち「3〜5割が空床」だったことが、「AERA dot.」の報道で明らかになった。報道に対して、JCHO側は、コロナが急拡大したことで、一時的な“人手不足”に陥ったと弁明している。

■「傘下の看護学校もつぎつぎ閉鎖して」

だが、本誌が取材を進めると、人手不足は慢性的かつ“意図的”なものだったという声が出てきた。前出のAさんはこう語る。

「4月に内科医がゼロになった後も、『(足りているから)大丈夫』といって、新たな医師を入れようともしませんでした。看護師の求人は出していますが、形だけ。実際には、看護師が辞めるなどして欠員が出ないと、いくら手が足りず、現場が疲弊していても、採用してくれません」

JCHO労働組合の書記長の大島賢さんは、「人手不足は関連病院全体に広がっていた」と語る。その裏には、「極端に黒字化を目指す幹部の指示がある」という。

「JCHOの幹部のほとんどが、厚労省や国立病院からの天下りで、赤字を出さないことを至上命題として人件費を削り続けてきました。全体で職員の上限数を決め、コロナ病床を回すために人手が必要になっても、新たに雇わずコロナを診ていない病院や病棟から補充しろ、と。でも、ふだんからギリギリの人数で回しているので、引き抜かれた側の病院スタッフは、休みもろくにとれなくなる」

そのうえ、不採算部門をどんどん切り捨てているという。

「JCHOは6つの看護学校を経営していますが、うち2つは今年度で廃止が決定。卒業生の多くはJCHOの病院に就職するので、看護師確保も難しくなります。しかし医療費と病床削減は国の方針でもあるので、JCHOは病床を減らして対応するようです。JCHOは感染症や周産期、救急など“不採算部門”を診る役割を担った公的病院です。『もうからないから削ります』は、許されないのですが……」(大島さん)

関連記事(外部サイト)