9月に法改正「医療的ケア児」家族の願いと周囲ができること

9月に法改正「医療的ケア児」家族の願いと周囲ができること

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生きていくのに医療的ケアが必要な子はいま、全国で2万人以上。これまでは、極端に行政からの支援が不足していたため、多くの親は仕事を辞めて子どもに付き添ってきた。だが、今回施行される「医療的ケア児支援法」により、事態に改善の兆しが! 親に、子どもに、どんな未来が待っているのだろうかーー?

病院に行くと、鼻にチューブを入れたり、気管を切開して器具をつけている入院患者さんを見かけたりしないだろうか。同じように、日常的に医療デバイスをつけたり、痰の吸引や栄養注入などの医療行為を受けることが不可欠な子どもを「医療的ケア児」という。そして、その多くが自宅で生活を送っている。

日本では児童福祉法によって、障害のある子どもたちは、発達を支援するための「療育」など、国や自治体からさまざまな支援を受けられる。

ところが、この「医療的ケア児」の中には、日常生活で医療行為が必要なのに、重い障害のある子とは同じ扱いにならない子も存在する。たとえば、知的な遅れもなく、自分で歩くことができるが、酸素吸入は常時必要という子は、昨年度までは制度上、医療従事者が常時付き添う必要がないカテゴリーに属しており、国や自治体からの手厚い支援の対象にならなかったのだ。

事態に風穴を開けると期待されるのが、9月18日に施行された「医療的ケア児支援法」だ。

これは、国や自治体による支援を「責務」とし、幼稚園、保育所、学校などにケア担当者を設置する、と明記している。また、支援センターを各都道府県に設置し、相談に応じるといった内容が盛り込まれている。

ケア児と家族にとって、まさに朗報。法律の施行によって、どんな未来を期待しているのか、そのご家族に話をうかがった。

【ケース】私が夢見る明日:息子も私も、普通の集団生活が送れること!

ママ:細田祐美子さん(35)。埼玉県在住。WEBデザイナー。
次男:澪くん(2歳)。心臓病。
必要な医療的ケア:酸素吸入。

澪くんは、妊娠中の胎児診断で心臓病が見つかり、生後すぐ小児医療センターに入院。9カ月で退院したときには、チューブを使っての栄養注入と酸素吸入が必要で、その後も4回の手術を受け、今後も手術が予定されている。

祐美子さんはウェブデザインの会社に勤めていたが、2歳違いの兄を産んでから澪くんの出産まで、連続で育児休暇を取得。

「仕事復帰したかったので、預け先について相談したかったのですが、障害児とは判定されておらず、どこに問い合わせていいのかもわかりませんでした」

市役所に相談すると、保育園に個別に当たってみるしかないとのこと。結局、受け入れてくれる園は見つからず、祐美子さんは会社を辞めざるをえなかった。

また細田さん夫婦は、澪くんがたびたび入院したり、手術を受けなければならなかったため、兄を保育園に預けたいと思っていたが、育児休暇中は保育園は利用できないとの理由で、幼稚園に移ることに。それでも手術のため、夫婦で一日病院にいなければならないときに、延長保育をお願いするのも気兼ねするのが現状だ。

澪くんは、鼻にチューブはつけているものの、よく笑い、はしゃぎ、遊び、活発そのもの。

「近くに重度の心身障害児の施設ができたことを知り、週3回デイケアに通わせてもらえるようになりました。自宅ではできない絵の具や水遊びをさせてもらえるので、ありがたいです」

でも、重度の施設のため、一緒に遊べる友達はいない。来年は幼稚園の年少に上がる年齢なので兄と同じ幼稚園に入れたいが、受け入れは難しいようだ。

「この子の成長のためにも集団生活を体験させたいです。支援法が施行されて、ほかのお子さんたちと一緒に幼稚園に通えるようになれば、『医ケア児』ってこういう子たちなんだ、という理解が広まるのではと、思うんです」

また、支援センターに相談窓口が一本化されることにも期待を寄せる。

「今すぐに仕事復帰することにはこだわっていません。子ども優先でべったりの時期があってもいいかなとも思って。ただ、社会とはつながっていたいので、デイケアに行っている間に少しずつ在宅で仕事を始め、幼稚園に入れるようになったら本格的な復帰ができるよう、備えたいです」

■「医療的ケア児ママ」との接し方

「医療的ケア児」が身近にいたら何ができるのか? NPO法人アンリーシュ代表で、医療的ケア児と家族を支援する団体を運営する金澤裕香さんに聞いた。金澤さんは6歳で亡くした娘も医療的ケア児だった経験から、支援を開始。

【医療的ケア児の存在を知って】

「ひと昔前は、医療的ケアは病院で行われていたので、今、家で家族がケアをしている子がいるということを知らない方も多いようです。でも、病気で自宅で酸素吸入をしながら生活している年配の方がいるのと同じように、医療的ケア児も身近な存在になっています。ぜひ、そのことを知ってほしいです」(金澤さん・以下同)

【声をかけてあげよう】

「そのうえで、もし、鼻や喉にチューブをつけている子がいたら、勇気を出して声をかけてあげてください。遠慮して遠巻きに見られているのは、お母さんにとってはつらいもの。声をかけてくれたら、きっとおしゃべりしたいに違いありません。『かわいいね』『何歳?』何でもいいんです。小さな子がチューブを指さして『これなあに?』と聞いてくれれば、お母さんはちゃんと説明してくれます」

【否定的な言葉はダメ】

「ただ、そのとき、決して言わないでほしいのが、『子どもがかわいそう』とか『ママがちゃんとしていないから』とか『栄養が足りないんじゃない?』といった否定的な言葉。ママが悪いのではありません。医療の進歩のおかげで助かった大切な命。むしろ、素晴らしいことなのです」

【人ごとではありません】

「医ケア児が使っている医療デバイスは、足りない機能を補うためのもの。いわば、メガネや入れ歯の延長です。そして、医療的ケアが必要なのは子どもだけでなく、誰でも、年をとればとるほどお世話になる可能性が高まります。医ケア児の支援を応援し、協力することは、いずれは医ケアが必要になる大人や老人の助けになると思っていただけると、うれしいです」

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