制度のはざまにあった「医療的ケア児」支援が「責務」に

制度のはざまにあった「医療的ケア児」支援が「責務」に

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病院に行くと、鼻にチューブを入れたり、気管を切開して器具をつけている入院患者さんを見かけたりしないだろうか。同じように、日常的に医療デバイスをつけたり、痰の吸引や栄養注入などの医療行為を受けることが不可欠な子どもを「医療的ケア児」という。そして、その多くが自宅で生活を送っている。

「この『医療的ケア児』は、現在2万人以上。出生数が減っていることを考慮すると、割合はどんどん増えています。これは、以前なら病気や障害で助からなかった赤ちゃんの命が、医療の進歩によって救えるようになり、治療を終えても、医療機器の助けを借りながら自宅で生活できるようになった、という喜ばしい現実の結果なのです」

と話してくれたのは、認定NPO法人フローレンスの森下倫朗さん。フローレンスは全国医療的ケア児者支援協議会の事務局でもある。

■支援の対象から外れていた医療的ケア児

日本では児童福祉法によって、障害のある子どもたちは、発達を支援するための「療育」など、国や自治体からさまざまな支援を受けられる。

ところが、この「医療的ケア児」の中には、日常生活で医療行為が必要なのに、重い障害のある子とは同じ扱いにならない子も存在する。たとえば、知的な遅れもなく、自分で歩くことができるが、酸素吸入は常時必要という子は、昨年度までは制度上、医療従事者が常時付き添う必要がないカテゴリーに属しており、国や自治体からの手厚い支援の対象にならなかったのだ。

「たとえば鼻のチューブで栄養注入はしているけれど、そのほかは全くほかの子と変わらず、元気いっぱい。でも、幼稚園や保育園に受け入れてもらえないということが起こります。理由は、栄養注入という医療行為を行える医療従事者がいないからです。入園できた場合でも、栄養注入は家族が行うしかなく、ずっと親が付き添うことが求められます。そうなると、親は仕事を辞めて、四六時中子どもに付き添うか、家で子どもを見るしかありません」

ほとんどの家庭で、主に母親がケアを担っているという調査結果もあり、働けず、結果経済的にも厳しい状況に置かれることもある。

「一方、知的・身体的障害があり、医療ケアの支援を受けて親が仕事を続けてきた場合でも、小学校入学には壁があります。親が学校で待機しなければならず、学童保育も利用できないため、仕事を諦めざるをえないケースも」

いまや女性のほとんどが出産後も仕事を続ける時代。安心して子どもを預けて働きたいという願いは、どの親も同じはずだ。また、親が常時べったり付き添っている状況は、子どもの成長も阻むに違いない。

事態に風穴を開けると期待されるのが、9月18日に施行された「医療的ケア児支援法」だ。

これは、国や自治体による支援を「責務」とし、幼稚園、保育所、学校などにケア担当者を設置する、と明記している。また、支援センターを各都道府県に設置し、相談に応じるといった内容が盛り込まれている。

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