僧侶で医師――対本宗訓さんが病院で経験した“不思議な体験”

僧侶で医師――対本宗訓さんが病院で経験した“不思議な体験”

僧侶で医師――対本宗訓さんが病院で経験した“不思議な体験”の画像

死者の魂を弔う僧侶、そして救急救命医として病院に勤める2つの顔をもつ主人公・松本照円(伊藤英明)が患者を救うために奮闘するーー。医療ヒューマンドラマ『病室で念仏を唱えないでください』(TBS系・金曜22時〜)では、そんな“僧医”の照円が、患者の心と命に寄り添う姿を魅力的に描いている。

このドラマは、『ビッグコミック増刊号』(小学館)で連載されている、こやす珠世の漫画が原作。しかし、“僧医”として生きる人物は、フィクションだけでなく、現実の世界にもいる。

「僧侶=死を扱う職業、というイメージをお持ちの方は多い。病院に入院する知人の見舞いに法衣姿で行くと、守衛さんに『霊安室はこちらです』と人目につかない通路を案内されたこともありますよ(笑)。今の立場は医師ですから、病院ではいつも白衣。でも、僧侶として心、そして魂に寄り添うことは、常に心がけています」

穏やかな表情で語るのは、大館記念病院(秋田県)で理事長・院長を務める対本宗訓さんだ。対本さんは僧侶でありながらも、45歳で医学部に入学し、現在は地域医療を担う医師という、異色の経歴を持っている。

「医学とは“サイエンス”ですから、情には左右されず、冷徹な姿勢で学んでいかなければならないものです。しかしたとえば解剖実習では、人体を系統的に解剖しながら、その機能や構造を徹底的に勉強します。献体していただいた故人の志に思いを寄せ、心の中で合掌しつつメスを進めました。今でこそ“医療倫理”という言葉をよく耳にしますが、約20年前の医学部には、哲学的なテーマとして『命』を扱っている教科書や講義はほとんどありませんでした。だからこそ、宗教者としての経験を医療現場でも生かさなければならない、と感じました」

“スーパードクター”でも、“ゴッドハンド”でもないが、僧侶として、心を開いて“傾聴”することが自分にはできるーー。

秋田弁が聞き取れないときは看護師に通訳をしてもらいながら、日常診療をこなす対本さん。患者との信頼関係を築いていくなかで、普通の医師ではできないような“不思議な体験”も病棟ではしばしばある。

「あるとき病室を通りかかると、昏睡状態が続いていたはずの患者さんが、弱々しく半身を起こすようにしていらっしゃるんです。それで、私に向かって合掌してくださる。ご自身の死期を悟り、外来通院のときから診ていた私へのお別れをしたかったのだろうと思います。患者さんは、その晩に亡くなりました」

高齢者の長期療養入院者が多いため、穏やかな死を迎え、次の世界につなぐことが、僧医としての役割でもある、と力強く話す対本さん。

ドラマでは、何かにつけて照円が念仏を唱えたり説法をしたりすることで、患者だけではなく同僚からも煙たがられてしまうシーンが描かれているが……。

「毎月の健康講座では、坐禅の呼吸法や、精進料理の健康効果などについて話すことはあります。ただ求められないかぎり、私自身から、医療の現場で、宗教のお話をすることはありません(笑)」

しかし、「死んだらどうなるのか」と対本さんにたずねる患者はやはり多いという。

「そう聞かれればこうお伝えするようにしています。『私たちの体には平安に旅立てる絶妙な仕組みが備わっています。死とは次なる存在の世界へ移行するいのちのプロセスであり、お互いまた会えますよ』と」

そんな言葉が、患者の良薬となるのだろう。だんだんと、表情が穏やかになっていくのだそうだ。

「女性自身」2020年3月3日号 掲載

関連記事(外部サイト)