コロナDV被害者に救いの手 女性支援の医師が病院を駆け込み寺に

コロナDV被害者に救いの手 女性支援の医師が病院を駆け込み寺に

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「子どもの学校が休みで、ついつい叱ってしまうんです」「夫がテレワークで、ずっと家にいるとぶつかってばかり。“コロナ離婚”なんて言われてるけど、うちも危ないかも……」

新型コロナの感染拡大で、7都府県に緊急事態宣言が発令されてから8日目の4月15日。オンライン会議システムZoomを使って開催された「女性のこころと身体のオンライン相談室」では、参加者から、このような悩みが吐露された。

その中に、参加者の話に耳を傾けつつ、こうエールを送る女性がいた。 「私もひとりの生活者であり、ひとりの女性です。昔は、子どもや夫に大声で怒鳴ったこともあったのよ。いま思えばなつかしい。私でよければ、なんでも相談にのります」

東京の銀座と新宿で、「女性ライフクリニック」を開業する産婦人科医で医学博士の対馬ルリ子さん(62)だ。婦人科、乳腺科、内科、皮膚科などを備え、女性の心と体をトータルに診ている。

対馬さんは、4月8日から銀座のクリニックを開放。コロナ禍で、DV被害などを受ける女性たちの駆け込み寺として機能させてきた。

「UN Womenという国連組織が、《自宅待機で、女性や女児に対するDVという“陰のパンデミック”が起こるリスクが高まっている》と声明を発表したんです。いまこそ、手を差し伸べるときだ、と思いました。だからすぐに、『お金のこと気にしなくていいから、なにかあったら銀座のクリニックに来てください』とFacebookで呼びかけたんです。そしたら、驚いたことに一晩で1,800人以上の方がシェアしてくださって」

さっそく駆け込んできた女性がいたという。

「渋谷で6〜7人から集団レイプにあったという20代の女性でした。外出自粛で渋谷の繁華街に人が少なくなったので狙われたんでしょう。怖くて誰にも言えなくて悩んでいたようです」

対馬さんに寄せられたDV被害者からのSOSは8件。(5月19日時点)相談内容もさまざまだ。

「向精神薬を服用している夫が、夜になると興奮して暴れて危険を感じる、とか、メールでシェルター要請が来て、いつでもお越しくださいと伝えたら、『逃げ込めるところがあるだけで安心した』と、落ち着いておられる方もいます。ある女性は、話を聞いているうちに、自分がDVを受けていたということに気づいて、家を出ることを決意。NPOが運営するシェルターに入ったと聞きました」

対馬さんが立場の弱い女性を支援するのには、母の影響があった。

「私が生まれたころは、祖父は弘前大学の医学部長、父も弘前大学医学部の講師をしていました。母は、20歳で父と結婚し、間もなく私と4歳下の妹を産んだんです。父は、医家の長男として生まれてチヤホヤされて育ったせいか、わがままな人で。自分の思いどおりにいかないと、すぐ母に手を上げていました。私も小さいときは、父によく殴られました」

対馬さんが幼いころ、母が泣きながら、こう話していたことが忘れられないという。

――ママは、自分で稼げないから、離婚したらあなたたちを養っていくこともできない。だから黙って夫に従うしかない。あなたたちは、夫と離婚しても死別しても、独りで生きていけるように手に職をつけなさい。

「母は、成績は優秀だったけど、女だからという理由で大学に行かせてもらえなかったようで。悔しかったと思います。私が医者を目指したのは、自分で人生の選択をさせてもらえなかった母の怨念があったからかもしれません」

母の言葉が深く心に刻まれた対馬さん。医師として、そして1人の女性としても、女性の応援団として歩み続けてきた。コロナ禍を経て、その思いは、さらに強くなっている。

「世の中が大変になると、真っ先に切り捨てられるのは立場の弱い女性。残念ながら日本には、女性の心身と生活を支援する医療機関が、ほとんどありません。志を継いでくれる次世代の医師は育っているので、今後も全国に女性支援の輪を広げていきたいと思っています」

「女性自身」2020年6月16日号 掲載

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