「裁判所は守ってくれない」性犯罪被害者、悲痛な訴え

「裁判所は守ってくれない」性犯罪被害者、悲痛な訴え

取材に応じる性犯罪被害に遭った女子高生=1月、大阪市

 「裁判所は私を守ってくれない」。裁判所が容疑者や被告の身柄拘束を解く基準を緩和する傾向を強めていることで、被害者の間では、報復に対する恐怖や不安を訴える声が上がっている。特に女性の心身に重いダメージを与える性犯罪では、被害者が裁判所への不信感から被害届を取り下げ、事件が潰れるなどの深刻な事態も起きている。(大竹直樹、入澤亮輔、北野裕子)

 ■「逆恨みされる…」

 大阪府内に住む20代女性は昨秋、自宅マンションの通路で見知らぬ男に背後から口をふさがれるなどの被害に遭った。約1カ月後、男は強制わいせつ未遂容疑で府警に逮捕された。大阪地検は勾留請求したが、大阪地裁は却下。「逃亡や証拠隠滅の恐れは否定できないが、被害者と接触しないことを誓約していることなどから勾留の必要性はない」として地検の準抗告は棄却された。逮捕から2日後、男は釈放された(その後、在宅起訴)。

 「私の被害って大したことないんだなと思った」

 女性は釈放を聞かされ、そう感じた。それと同時に男に逆恨みされないかとの恐怖が急にこみ上げてきた。それ以降、家族に駅までの送り迎えを頼み、外から自室の様子が見えないよう厚手のカーテンに替えた。釈放される際、男が裁判所に提出した誓約書には「女性の最寄り駅を利用しない」と記されていたが、最寄り駅はターミナル駅で、男は隣接する市に住んでいた。女性は「裁判所は私を守ってくれない」と感じ、一時は被害届の取り下げも考えたという。

 証拠が少ないケースが多い性犯罪では、被害者の証言が立証の大きなウエートを占める。ある地検幹部は「勾留が却下されたことで心を痛め、証言を拒否したり、被害届を取り下げたりする被害者は少なくない」と話す。

 ■複数前科あっても

 再犯率の高い性犯罪。複数の前科があったり、否認したりしていても、痴漢や盗撮といった迷惑防止条例違反事件では近年、勾留されることはほとんどないという。

 昨年10月、大阪府内に住む女子高生は、駅のエスカレーターで、3日連続で男(38)にスカート内を盗撮された。府警が防犯カメラを解析したところ、男は約3カ月間、この生徒を追い回していた。

 女子高生の母親は「娘は事件後、髪形を変え、男性に対する嫌悪感が残っている」と被害の「後遺症」を訴える。男は同様の事件で2度罰金刑を受けていたが、勾留請求は地裁に却下され、逮捕から2日で釈放された。母親は「犯人の人権が守られすぎているのでは」と苦言を呈した。

 女子高生の長女が電車内で痴漢被害に遭ったという父親(51)は「裁判所も釈放するなら犯人を管理することをしてほしい」と話す。長女は事件後、通学路を変え、家族も自宅から徒歩10分の距離に住む犯人の動向に気をもむ日々が続く。父親は「被害者保護の観点に立った施策が必要ではないか」と指摘する。

 ■「新居に住めない」

 東京都内に住む中学生の女子生徒は小学校低学年のころ、近所に住む20代の大学生の男に何度も自宅に連れ込まれ、性的暴行を受けた。男は数年後、強姦(ごうかん)未遂容疑で逮捕されたが、処分保留で釈放された。女子生徒は被害後、しばらく誰にも打ち明けられず、被害を訴えた時には日時を特定することが難しくなっていたためだ。

 男は在宅起訴され、東京地裁で昨年、強制わいせつ罪で懲役2年の実刑判決を受けたが、東京高裁に控訴し、今も裁判が続いている。いったん釈放されたため、実刑判決を受けながら今も同じ自宅に住んでいるという。

 事件後、女子生徒と母親は心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した。加害者宅に近い購入したばかりのマイホームには住めなくなり、今もローンを払い続けながら、自宅から離れた場所にアパートを借りて住んでいる。加害者が恐ろしく、大好きだった自宅に戻ることができない女子生徒は声を振り絞るように言う。「ずっと刑務所に入っていてほしい。せめて東京から出て行ってほしい」

 母親は「私の子供に怖い思いをさせた性犯罪者を野放しにした。加害者の人権ばかりを守る日本の裁判所は明らかに間違っている」と憤る。

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