「裁判員経験 人生変わった」 弁護士・花田弘介さん

「裁判員経験 人生変わった」 弁護士・花田弘介さん

裁判員を経験し、弁護士となった花田弘介さん。「裁判員ラウンジ」で体験を語る=5月14日(滝口亜希撮影)

 「裁判員の経験で、人生が変わった」。横浜市の法律事務所に勤める花田弘介さん(35)は、弁護士になる前に裁判員を経験したことで、企業相手から刑事裁判も扱う弁護士へと進路を変えた。施行から10年を迎えた裁判員制度の経験者は9万人を超えたが、体験を語る人は一部だ。「経験を発信することで、制度について考えるきっかけにつなげたい」と花田さん。8日に千代田区の専修大神田校舎で講演する。

 実家に横浜地裁から呼び出し状が届いたのは、平成24年10月。国学院大法科大学院を修了し、司法試験の勉強中だったが、合格して司法修習生や弁護士になれば、裁判員法の規定で裁判員を務めることはできなくなる。「これが最後のチャンス」と選任手続きに参加し、裁判員に選ばれた。

 元妻も住む実家に放火したとして現住建造物等放火罪などに問われた被告の男は、法廷で無罪を主張していた。男が犯人であることを示す直接的な証拠はなく、防犯カメラ映像や、火災の専門家の証人尋問などを材料に判断した。

 元妻は、ほぼ連日、傍聴席から裁判を見守り、涙を流すこともあったが「感情論と法律論は切り離して考えなければ」と冷静な判断に努めた。非公開の評議を経て求刑通り懲役13年の判決を言い渡した。

 裁判員を務め終えた後、会社勤務を経て5回目の挑戦で司法試験に合格した。当初は企業間の紛争などを扱う弁護士を目指していたが、次第に「裁判員経験を生かしたい」との思いが募り、刑事事件と民事事件の双方を扱う法律事務所に入所した。

 制度の施行で、刑事裁判は書面中心の審理から法廷で被告や証人の話を直接聞く審理に変わった。あの法廷で学んだ「被告と向き合うことで分かることがある」という経験は、被告と接見し、弁護方針を決める弁護士の仕事にも重なる。

 一方で「裁判員を務めることに抽象的な不安を持つ人もいる」と感じている。「裁判員を務めたことで人生が変わった」。その実感を、地道に伝えていきたいと考えている。

 講演は専修大法社会学ゼミナールが定期的に開催する「裁判員ラウンジ」で午後2時から。参加費無料。

(滝口亜希)

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