池田小事件18年 相次ぐ犠牲、岐路に立つ子供の安全対策

池田小事件18年 相次ぐ犠牲、岐路に立つ子供の安全対策

大阪教育大学付属池田小の児童殺傷事件で、けがをした被害者を搬送する救急車(本社ヘリから)

 大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件は8日、発生から18年を迎える。事件をきっかけに学校の安全対策は大きく進んだが、今年に入って子供が狙われる事件が相次ぎ、5月末には川崎市でスクールバスを待つ小学生らが襲われ命を落とした。子供たちを守るために18年かけて築き上げてきた対策は今、転換期を迎えている。(木ノ下めぐみ、南里咲、加納裕子)

 ■教訓が風化

 「安全対策の先進的な実践校として、国内外に発信してきた」。元池田小校長で、現在は大阪教育大「学校危機メンタルサポートセンター」のセンター長を務める藤田大輔さん(58)は事件以後の池田小についてこう説明する。

 池田小では事件後、門や玄関の施錠や来校者全員へのIDカード義務づけなど徹底した安全対策を実施。さまざまな事件や事故、災害への対応方法を主体的に学ぶ授業「安全科」を導入し、子供たちの実践的な対応力も育ててきた。

 国も対策を講じ、平成21年には学校保健法が学校保健安全法に改正され、施設や管理体制の整備、危険が発生したときのマニュアル作成などを規定。その後、学校の門や玄関を施錠したり、防犯監視システムや通報システムを導入する動きは全国で進んでいる。

 だが、今年4月、お茶の水女子大付属中学校(東京都文京区)で秋篠宮ご夫妻の長男、悠仁さまの机に刃物が置かれる事件が発生した。建造物侵入容疑で逮捕された男は作業服姿で「工事の者」を名乗って侵入したとされる。「警備体制が十分に働いておらず、危機対応意識に甘さがあった」。事件後、同校は反省の弁をこう述べた。

 学校安全に詳しいNPO法人「日本こどもの安全教育総合研究所」の宮田美恵子理事長は「池田小事件から20年近くたち、事件を直接知らない世代の教員が増えた。教訓が共有しづらくなる中で、侵入を許してしまった」と分析する。

 ■第2ステージへ

 こうした中、川崎市多摩区でスクールバスを待つ私立小学校の児童ら20人が刃物で殺傷された事件は、関係者に強い衝撃を与えた。池田小事件の反省を基に築かれた対策が通用しない事件だったからだ。藤田さんは「国内どこでも起こりうること。学校現場はわがこととして受け止めなくてはいけない」。宮田さんは「子供の安全対策を第2ステージへと引き上げる岐路に、私たちは立たされている」と話す。

 登下校時の安全対策をめぐっては、昨年5月に新潟市で下校中の小学2年の女児が殺害された事件をきっかけに、政府が「登下校防犯プラン」を作成。スクールバスや集団登下校は安全対策の一つとして例示されていたが、川崎市の事件は、こうした対策が結果的に子供を別の危険にさらすこともある、という現実を浮き彫りにした。

 文部科学省は改めて、子供が集まる場所への見回り強化などを検討。各地でも、地域住民による見守りや警察との連携などの対策が進められている。

 ■安全な環境づくりを

 これまで子供の安全対策を検討し続けてきた池田小。だが、それでも現校長の佐々木靖さん(57)は「改善すべき点はいくつかある」という。今は登下校時の安全のため、子供たちは防犯ブザーを身につけ、ブルーのベストを着た保護者が通学路に立って見守っているが、今後は保護者に笛も持ってもらうことを検討しているという。

 藤田さんは「今回のような事件を防ぐのに、簡単な対策では無理だ。スクールバスだから安全と思わず、安全な環境をつくる取り組みをさまざまな立場の大人が意識して行い、子供に伝えていかなければならない」と訴えている。

●大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件 平成13年6月8日、大教大付属池田小に宅間守元死刑囚=執行=が包丁を持って侵入。2年の女児7人と1年の男児1人の計8人を殺害、教師2人と1、2年の児童13人に重軽傷を負わせた。大教大と同小は「事件を語り伝えていくために」との冊子を作成するなどし、事件の風化と再発の防止を訴え続けている。

■教員養成では「学校安全」必修化 学校に通う子供の安全を守るため、今年度から、教職課程で学校安全に関する授業が必修になった。日ごろの危機管理や危険発生時の対応が的確にできる教員を養成する。

 文部科学省によると、教職課程の全面的な見直しは平成11〜12年度以来で、池田小事件後初めて。学校の管理下で起こる事件などの実情を踏まえ、危機管理や事故対応などの必要性を理解することなどを目標として掲げている。

 本来なら必修化は今年入学した1回生からだが、京都教育大では今年、2回生の必修科目「公教育経営論」の中で「リスクマネジメントと学校安全」をテーマにした授業を前倒しで行う。また、大阪教育大では13年前から毎年、池田小の事件から教訓を学ぶ講義を行ってきたが、さらに必修科目でも学ばせる。同大「学校危機メンタルサポートセンター」の藤田大輔センター長は「教員は子供の命を預かる仕事。地域の力を借りることも必要だが、学校には中心となってかじを取ることが求められている」と話している。

関連記事(外部サイト)