都内の免許返納 池袋暴走事故後、最多に 急増も決断阻む「過信」と「不安」

都内の免許返納 池袋暴走事故後、最多に 急増も決断阻む「過信」と「不安」

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 東京都内で5月に運転免許証を自主返納した人が5700人を超え、1カ月の数として過去最多となったことが、警視庁への取材で分かった。東京・池袋で乗用車が暴走し母子2人が死亡した事故以降に急増し、ほとんどが高齢者とみられる。75歳以上の返納者は全国で年々増えているが、免許保有者数と比べて少数にとどまる。運転歴の長さから生まれる「過信」と、地域によっては返納後に移動手段が制限されることへの「不安」が背景にあるとされ、超高齢化社会の課題となっている。(玉崎栄次)

■事故直後1・7倍に

 警視庁によると、都内の返納者は池袋暴走事故が起きた4月19日の前週(7〜12日)は約700人だったが、事故翌週(4月21〜26日)には1・7倍に相当する1200人超に急増。大型連休明けはさらに増え、5月の1カ月間で昨年同月の1・6倍に当たる5700人余りが返納し、統計を取り始めた平成26年以降で1カ月の数として最多となった。

 全国的に75歳以上の後期高齢者の返納は年々増えている。警察庁の集計によると、27年に約12万人だった返納者は、28年約16万人、29年約25万人、昨年は約29万人。ただ、昨年末時点で免許保有者は約563万人に上り、返納は少数にとどまっている格好だ。

 その理由の一つとして、大手損保傘下のシンクタンク、MS&ADインターリスク総研基礎研究本部の新納(にいろ)康介上席研究員は、運転経験の長さによる「過信」を挙げる。

 同総研の調査(29年)では、「運転に自信がある」と考えるドライバーの割合は60代後半で51%、70代前半で60%、70代後半で67%と加齢に伴って上がり、80歳以上では72%に達した。

 新納氏は「免許更新時の認知機能検査をクリアしたことなどから自信がつく」との見方を示した上で、「運転技術を点数化できるスマートフォンアプリなどを使い、運転技術の低下を客観的に理解させることが必要」と指摘する。

■返納率に地域差

 身近な移動手段を手放すことも返納のハードルを高めている。千葉市の無職の男性(75)は返納が必要だと理解はしているが、家族に促されてもお茶を濁し続けているという。趣味は月2回のゴルフで、友人たちを車に乗せ、自宅から数十キロ先のゴルフ場に向かう。「車がなくなって交友関係が途絶えるのが怖い」

 ニッセイ基礎研究所の村松容子准主任研究員(健康医療)は「返納の促進は事故防止に重要だが、積極的な外出を呼びかける高齢者福祉との間でジレンマに陥っている」と指摘する。

 村松氏は警察庁の運転免許統計を使って、30年の75歳以上の返納率を都道府県別に計算。最高値の東京(8・1%)と最低値の高知(3・7%)で4ポイント以上の差が出た。「公共交通網が乏しい地方で不安を払拭する十分な効果を得られていないのが現状だ」(村松氏)

 数年後には、人口が多く、免許保有率も高い団塊の世代(昭和22〜24年生まれ)が後期高齢者になり始める。追手門学院大の東(ひがし)正訓(まさのり)教授(交通心理学)は「免許更新時の検査で認知機能に加え、手足を十分に動かせるかを確認する身体能力検査を追加するなどの検討も早急に必要になるだろう」と話している。

■海外でも問題に

 高齢ドライバーの安全対策は海外でも課題となっており、一定の年齢に達した高齢者全員に認知機能を調べる受診の義務化、運転できる時間や場所を制限する限定条件付き免許制度などが導入されている。

 日本では、75歳以上に免許更新時の認知機能検査が行われる。記憶力や判断力が低いと判定されると、医師の診察を受け、認知症と診断されれば聴聞などの手続きの上で運転免許が取り消し・停止される。一方、警察庁の調査(平成29年)によると、アイルランドやスイスではより厳しく、70歳以上の全員に受診を義務付け、認知症の場合は免許取り消しとなる。

 限定条件付き免許はドイツやオーストラリアの一部で導入済みで、「自宅から半径◯キロ圏内」「一般道のみ」「夜間走行禁止」「ラッシュ時の走行禁止」などの制限がかけられる。日本でも警察庁が限定条件付き免許に加え、運転技術を確認する「実車試験」の導入について検討を進めているが、結論は出ていない。

 池袋暴走事故 東京都豊島区東池袋で4月19日、旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長=事故当時(87)=が運転する乗用車が赤信号を無視して暴走、横断歩道で歩行者らを続々とはねた。近所の松永真菜(まな)さん(31)と娘の莉子(りこ)ちゃん(3)が死亡し、飯塚元院長と同乗の妻を含む10人が負傷。警視庁が自動車運転処罰法違反(過失致死傷)容疑で捜査している。

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