元次官長男刺殺1週間 中高年引きこもり、高齢の親も孤立 「相談できる居場所を」

元次官長男刺殺1週間 中高年引きこもり、高齢の親も孤立 「相談できる居場所を」

熊沢英昭容疑者が長男を刺殺した自宅。事件当日は隣の小学校で運動会が行われており、音をめぐって長男と口論になっていた=東京都練馬区

 東京都練馬区の自宅で元農林水産省事務次官の熊沢英昭容疑者(76)が長男(44)を刺殺した事件は、8日で発生から1週間。「引きこもりがちの長男から暴力を受けた」という熊沢容疑者は、警察や行政などに相談することなく凶行を決意した。中高年の引きこもりは高齢化した親も孤立する傾向にあり、対策は後手に回っている。支援団体は「家庭内で解決しようとせず、問題を相談できる居場所を作る必要がある」と指摘する。

 「家の中にいるのも怖くなってしまった」。引きこもり家庭を支援する都内の家族会には事件後、40〜50代の引きこもっている本人からの電話相談が毎日数件かかってくるようになった。家族会の担当者は「引きこもりを危険視するような空気が生まれ、唯一の居場所である自宅でも苦痛を感じてしまっている」と明かす。

 先月28日に起きた川崎市の殺傷事件では、死亡した岩崎隆一容疑者(51)が「長期間の引きこもり傾向にあった」と報じられると、引きこもり支援団体から相次いで報道に抗議する声明文が出された。

 引きこもり経験者らでつくる「ひきこもりUX会議」は、「『ひきこもるような人間だから事件を起こした』とも受け取れるような報道は、無関係のひきこもり当事者を深く傷つける」と表明。NPO法人「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」は「『なぜここまで放置したのか』と周囲が責めれば責めるほど、家族は世間の目を恐れ、孤立を深める」と懸念をあらわにした。

 同会が40歳以上の引きこもり経験者を対象とした平成28年度の調査では、「過去に一度でも家庭内暴力を振るったことがある」と回答したのは61人中14人と4分の1以下。「今も家庭内暴力を続けている」のは2人にとどまり、引きこもりと家庭内暴力の間に高い関連性は見いだせないという。

 同会の池上正樹理事は「引きこもりが即座に家庭内暴力に結びつくわけではない」と指摘した上で、「無関係な他者に危害を加えるケースは極めてまれだ。同様の悩みを抱えた家族同士が情報を共有し、安心できる居場所を作ることが重要だ」と訴えた。

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