川崎20人殺傷事件から2週間 孤立した生活 残る多くの謎

川崎20人殺傷事件から2週間 孤立した生活 残る多くの謎

事件現場には多くの人が献花に訪れた=28日、川崎市多摩区(佐藤徳昭撮影)

 川崎市多摩区でスクールバスを待つ私立カリタス小学校の児童ら20人が殺傷された事件から11日で2週間が経過したが、今も現場を献花に訪れる人は絶えず、カリタス学園の卒業生らはやりきれない思いを口にする。「何の罪もない子供たちがどうして」−。児童らを襲った岩崎隆一容疑者は、自ら首を切って命を絶ったため、動機は明らかになっておらず、いまだに事件には謎が多く残る。

 事件後、多くの人が現場を献花に訪れた。そこには、歩道の半分以上を埋め尽くすほどに集まった花や供え物の菓子などを、学園関係者の有志が回収する姿があった。関係者は「事件を受けて、初めは卒業生が別々に動いて献花の回収作業などをやろうとしていた。しかし、個人で活動するのは効率が良くないからと、代々の生徒会で集まって1つのプロジェクトを作ってとりまとめている」と話す。

 きちょうめんな性格

 学園の卒業生は「みんな母校愛が強くて、『学校のために何かできることがあれば』と動いている。母校がこんな形で有名になるのは悲しい」とやりきれない思いを吐露した。

 現場には亡くなった同小6年の栗林華子さんの同級生が書いたとみられる手紙があり、幼い字で「ずっと同じクラスで楽しかったよ。大好きだよ、お空で見守っててね」と書かれていたという。

 事件を起こした岩崎容疑者は同市麻生区の一軒家に伯父夫婦と3人で暮らしていた。事件後、県警は岩崎容疑者の自室と、共同で使っていた台所や風呂など、伯父夫婦の部屋以外は全て家宅捜索。自室からはテレビ、ゲーム機、漫画、雑誌などが発見されたものの、スマートフォンやパソコンなどのインターネット機器は見つからなかった。自宅にはネット環境もない。

 押収したリングノート2冊にも、犯行の動機につながる手がかりのような記述はなかったという。ノートには「雑学のような話を3、4行書いて四角で囲って、同じ様なものを隣に書いてを繰り返し、升目みたいに四角がつらつらと並んで、1ページをきれいに埋め尽くしていた」(捜査関係者)といい、捜査幹部は「きちょうめんな性格だったようだ」と指摘している。

 10万円の出所も不明

 自室には、懇意にしていた店のポイントカードや知り合いの名刺などもなく、最近の岩崎容疑者をよく知るという人物は見つかっていない。また、犯行時にポケットに入れていた約10万円の出所が分からないなど、謎も多い。

 同居する伯父夫婦とも直接の接点は少なく、「食事は作ってもらっていて、冷蔵庫に入れてもらったものを1人で食べていたようだ」と捜査関係者は語る。

 いまだに動機はつかめない一方で、事件直後に市は、高齢で介護が必要になった伯父夫婦が岩崎容疑者の将来を案じ、今年1月に市のアドバイスで手紙を書くと、岩崎容疑者からは、心配には及ばないといった意味で「自分はひきもりではない」という趣旨の返答があったと明らかにした。1月以降、岩崎容疑者と伯父夫婦が顔を合わせることはなかったとみられる。

 2人は岩崎容疑者の遺体の写真を見た際、「髪がこんなに短いとは思えないので、別人かもしれない」と話したという。捜査関係者は「伯父夫婦の訪問介護が家に入ることで、これまでの自分の生活が大きく変わってしまうことに絶望を感じた可能性はある。これが事件を引き起こす一因となったのかもしれない」と推測している。

 【川崎20人殺傷事件】

 5月28日朝、川崎市多摩区の路上で、男が私立カリタス小学校(同区)の児童らを包丁で襲った。同小6年の栗林華子さん(11)と、別の児童の保護者で外務省職員の小山智史さん(39)が死亡し、18人が重軽傷を負った。男は同市麻生区の岩崎隆一容疑者(51)で、直後に自ら首を刺して死亡した。神奈川県警が殺人容疑で捜査本部を設置。市は容疑者が長期間、引きこもり傾向にあり、親族から相談を受けていたと発表した。引きこもりの当事者や家族が、犯罪と結び付けられ、誤解や偏見が広がりかねないとの懸念を表明している。

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