シーサイドライン逆走事故 完全復旧の見通し立たず 観光に影響も

 横浜市を走る新交通システム「シーサイドライン」の新杉田駅(同市磯子区)で自動運転の車両が逆走し、車止めに衝突した事故から15日で2週間となる。だが、現在もシーサイドラインは間引き運転が続いている。いまだ完全復旧の見通しが立たないなか、事故の余波は沿線付近で行われるイベントや観光施設などにも広がりをみせている。

 1日に発生した事故では、新杉田発並木中央行き(5両編成)が約25メートル逆走して車止めに衝突し、乗客14人が重軽傷を負った。シーサイドラインは平成元年に開業し、当初はワンマン運転だった。6年からコンピューター制御による無人運転を導入したが、開業以来、人身事故は初だった。

 ■市民生活を直撃

 事故後、シーサイドラインは全線が運休。最初の平日となった3日は、代行輸送のバス停に通勤客らが長い列を作った。4日には、運転士による手動運転で運行を再開したものの、運行本数は通常の65%程度で、現在も一部地域では代行バスの運行が続けられている。朝夕のラッシュ時には、地域住民の通勤・通学の「足」として利用されていただけに、事故後の混乱は市民生活を直撃した。

 事故の影響はシーサイドライン沿線の観光イベントなどにも広がりつつある。シーサイドラインの運営会社は利用客らの心情を考え、16日に「海の公園」(同市金沢区)で開催を予定していたイベント「潮干狩りワークショップ」を中止した。

 講師などを呼んで行われている同ワークショップは人気が高く、例年、多くの家族連れなどでにぎわいをみせる。リピーターも年々増加しており、今年も多くの参加者が見込まれていたという。

 すでに同社は、今月中に予定していた他のイベントの自粛も決定。夏までに予定しているイベントについても、自粛や規模の縮小を「検討中」としている。一方で、地元の観光協会関係者からは「自粛の動きが続けば、今後も観光に影響が出るかもしれない」と、懸念する声が聞かれた。

 ■断線が引き金?

 また、シーサイドラインの利用者が来場客の約3割を占める「横浜・八景島シーパラダイス」(同区)では、間引き運転や、代行バスで訪れた観光客の負担を軽減するため、「島内周遊バス」を今月末まで無料化することを決定した。シーパラダイスでは8日から「八景島あじさい祭」が開かれており、年配の観光客が多く訪れることにも配慮したという。

 前例のない逆走事故の原因は何だったのか。運営会社は6日、進行方向を指示する車両側の回路の一部で見つかった断線が、事故の引き金になった可能性が高いとの見方を示した。

 無人運転は、車両側と、駅や地上側に設置された装置が互いに信号を送り合う自動列車運転装置(ATO)で制御しており、折り返しの際は、駅から車両に進行方向の切り替えを指示する仕組みとなっている。切り替えの指示は1号車を経由して全車両と連動する構造となっていたが、回路の断線で指示が正しく伝わらず、全車両のモーターが逆に作動したとみられる。

 一方、断線を感知できる仕組みがなかったことや、異常時に列車を停止する装置も断線で作動しなくなるなど、機械に不具合があった場合に危険を最小限に抑える「フェイルセーフ」(多重安全構造)の考えに照らせば、システムに重大な欠陥があったことは否定できまい。状況によっては、さらに深刻な事故につながっていた可能性も十分にあるからだ。

 同社は自動運転での再開にはシステムの改修が必要としているが、時期のめどは立っていない。通勤でシーサイドラインを利用している会社員の男性(68)は「無人運転だからこそ心配になった」と、首を振った。安全性の信頼回復には時間がかかりそうだ。

【シーサイドライン逆送事故】

 1日午後8時15分ごろ、横浜市を走る新交通システム「シーサイドライン」の新杉田駅(同市磯子区)で、無人運転の車両が逆走し、車止めに衝突。車両は新杉田発並木中央行きの5両編成で、約50人が乗車していたが、このうち14人が重軽傷を負った。シーサイドラインは、横浜市などが出資する第三セクター「横浜シーサイドライン」(同市金沢区)が運営し、新杉田駅と金沢八景駅(同区)の間の約11キロを結ぶ。同種の逆送事故はこれまでに例がなく、国の運輸安全委員会などが事故原因の調査を進めている。

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