特殊詐欺は幹線道路沿いを狙う

特殊詐欺は幹線道路沿いを狙う

岡山市の表町商店街で特殊詐欺防止の啓発活動を行う岡山県警の警察官=令和元年10月、岡山市北区

 特殊詐欺事件は年々ずる賢くなっており、ターゲットになった高齢者が誰にも相談できないように「だましの電話」を切らずにしゃべり続ける手口も現れている。さらに、キャッシュカードをだまし取る形の特殊詐欺事件が最近多発している岡山県警の担当者によると、地方都市では注意すべき場所があるのだという。それは幹線道路沿いだ。

相談する暇を与えない

 「3月ごろにお返しするお金がある。3月末までに手続きをしないといけないが、手続きに必要な書類は届いていないか」

 12月19日午後、岡山市内に住む80歳の女性宅に銀行の行員を名乗る男から電話があった。女性が「そんな書類は届いていない」と答えると、男は「これから行員を行かせるので、お金を振り込むためにキャッシュカードを渡して」と指示した。

 女性は電話をしながら、夫名義の銀行のキャッシュカード1枚を家にあった封筒に入れて用意。ほどなくして自宅のチャイムが鳴り、女性は封筒を持って玄関に行き、現れた男に封筒を渡すと、男はすぐに封筒を持って帰った。

 この間も電話はつないだまま。女性がキャッシュカードを渡したことを伝えると、「12月24日に返す」などといわれた後、電話が切れた。もちろんカードは返ってこず、後に現金100万円以上が引き出されていることが分かった。

 犯人グループには、女性と電話で話し続けることで、女性が誰かに相談したり考えたりする暇を与えない狙いがあったとみられる。

なぜ幹線道路沿いが危険か

 一方、同県倉敷市で今年9月、70代の女性がカードを奪われた事件は、被害者の手元に偽のカードを残すという安心感を悪用したものだった。

 警官を名乗る電話で「振り込め詐欺の犯人を捕まえたら、あなたの名前を知っていた。お金が取られた可能性がある」として、出金確認の名目でカードを用意させた。カードを受け取りに来た男は女性に封筒を渡し、「ちゃんとこの封筒に入れて、念のために割り印を押して」と指示。女性が印鑑を取りに行っているすきに、あらかじめ用意していたポイントカード入りの別の封筒にすりかえ、この封筒をキャッシュカード入りの封筒だと信じ込ませ、女性に印鑑を押させた。女性が気づいたときには数百万円が引き出された後だった。

 岡山県内ではこのようなキャッシュカードを奪われる事件が、平成30年1〜11月で7件(被害額1320万円)だったが、令和元年は11月までで33件(同6780万円)に急増。振り込め詐欺や架空請求を含めた特殊詐欺全体の4割を占めるようになった。

 地域的にみると、岡山、倉敷など県南部の幹線道路沿いの都市部に集中し、アクセスの利便性の高くない県北部では発生していない。県警生活安全企画課の馬場一晃次長は「犯人グループのうちカードを取りに行く役割の者が、車や電車ですぐに駆けつけられる場所が選ばれやすい」と注意を呼びかける。

知らない電話は要注意

 特殊詐欺は被害者の8割以上が65歳以上の高齢者で、そのうち8割が女性。主に高齢の女性が1人で家にいるタイミングを狙って固定電話に電話がかけられる。

 このため電話機のメーカー側も対策に力を入れている。シャープは11月、警視庁、大阪府警の協力を得て防犯機能付きの電話を発売した。番号登録をしていない相手からの電話は、呼び出し音が鳴る前に、かけた相手に「この通話は防犯のために録音されます」と警告。一方、電話を受ける側の電話機のディスプレーには「迷惑電話警告中」と表示される。

 パナソニックも同月、警告機能のほか、1回あたりの電話を最大10分間録音できる固定電話を発売している。

 岡山県警も、加害者と被害者が接触する電話がカギになるとして家電量販店でも啓発活動を実施。馬場次長は「電話がかかってきてもすぐに出ないように、防犯機能のある電話を活用してほしい」と呼びかけている。

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