【瓦礫の教えはいま 震災25年】(3)災害ごみ、危機感薄い自治体 処理計画策定28%のみ

【瓦礫の教えはいま 震災25年】(3)災害ごみ、危機感薄い自治体 処理計画策定28%のみ

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 人々の憩いの場に残されていたのは、高さ数メートルのごみの山だった。

 昨年10月の台風19号で阿武隈川が氾濫し、大水害に見舞われた宮城県丸森町。発生から約2カ月半が過ぎた12月下旬、災害ごみの仮置き場になった役場前の町民広場には、泥だらけの布団やぼろぼろになった冷蔵庫などが大量に積まれていた。周囲に悪臭が漂う中、町民らは疲れた表情で近くを通り過ぎていく。

 なぜ、こんな状態が続いたのか。

 台風19号で被害を受けた丸森町の家屋は約1290棟。想定外の災害に被害の把握が難航し、仮置き場などを決める上で必要なごみの量の算定も遅れた結果、処理方針がスムーズに決まらず初動に遅れが生じた。

 最終的に出てきた同町の災害ごみは計約3万6千トン。町は被災後10日で仮置き場を5カ所作ったが、ごみの処分先が少なく、処理は滞った。国や県の主導で一部の処分を横浜、仙台市に要請したものの、問題解消には至らなかった。

 「より広く支援を依頼したかったが、広域処理は単独で進められない…」。町職員は嘆く。

 この状況を招いた要因を突き詰めていくと、たどり着くのが、災害時のごみ処理対応を事前に定める「災害廃棄物処理計画」が未策定だったという事実だ。

 自治体にとって災害ごみの「対応マニュアル」といえる災害廃棄物処理計画は、災害時のごみの量の推計方法や収集運搬方法、広域処理の詳細などを事前に決め、被災直後、1週間後…と段階ごとの対応を想定しておくもの。これにより対応を可視化でき、作業の効率化も期待できる。

 その必要性は阪神大震災ですでに指摘されていた。

 ■大型処分場必要

 阪神大震災当時、被災地では災害ごみが約1450万トン発生。広域のごみを受け付ける大型処分場や臨海部の広大な未使用地があったため、ごみの仮置き場や処分先はある程度確保できたが、それでも1割にあたる約144万トンの処理を県外に要請した。

 「大型処分場などがあったのは不幸中の幸い。なければ問題がより深刻化していた」と振り返るのは、当時、兵庫県宝塚市の廃棄物担当だった影山修司環境部長。「スムーズな対応のため、他市や業者と普段から協力関係を築くことが不可欠だ」と訴える。

 震災20年を迎えた平成27年、兵庫県は当時の災害廃棄物対応を検証。大型処分場が極めて重要だったと結論づけた上で、全国に向けて処理計画の重要性を指摘し、大型処分場の早期整備を促した。重要な提言だったが丸森町の職員は「正直知らなかった」と漏らす。

 ■演習で課題実感

 国は現在、各自治体に処理計画の策定を進めるよう求めている。23年の東日本大震災で計約3100万トンのごみが出たが、多くの自治体で仮置き場が決まらず、ごみの広域処理の調整に多大な時間を要したことが背景にある。

 ただ現実は厳しい。環境省によると、策定済みの市区町村は29年度末で約28%。7割強が丸森町同様計画がない状態だ。環境省の担当者は「災害未経験の自治体は危機感が薄く、計画を作ることができる専門職員などマンパワーが少ないのが要因」と分析する。

 状況を打破すべく、環境省は今、自治体に災害ごみの処理対応を模擬体験する「図上演習」の実施を呼びかけている。実際に昨年12月、大阪府主催の演習に参加した四條畷市職員は「仮置き場の配置などが難しかった。市の処理計画は未策定だが、より具体的に災害を想定した備えが重要だと感じた」と感想を語った。

 もっとも「計画は作ったら終わりではない」と強調するのは、災害ごみ処理の対応を研究する立命館大の森道哉教授(行政学)だ。

 「刻々と変化する環境の中でさまざまな災害の場面を想定した対策が重要だ。災害対策に終わりはない」

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