【瓦礫の教えはいま 震災25年】(4)完 「その後」の備え、事前復興計画 住民視点反映できるか

【瓦礫の教えはいま 震災25年】(4)完 「その後」の備え、事前復興計画 住民視点反映できるか

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 いつか来る「その後」に備え、いまできることは何か。

 今後30年以内に70〜80%の確率で起きるとされる南海トラフ巨大地震。紀伊水道に面し、最大17メートルの津波が予想される和歌山県美浜町は昨年春、被災後の復興指針を示した「事前準備計画」を県内で初めて策定した。仮設住宅や仮置き場の候補地の明記、さらに、より災害に強いまちづくりを念頭にした宅地のかさ上げ、高台移転の方針など、内容は多岐にわたる。

 「『無駄な計画』となればそれに越したことはない。でも被災してからでは間に合わない」。防災企画課の大星好史課長は複雑な表情でつぶやいた。

 大津波が来れば人命救助や避難所開設などの初動対応に追われ、人手や時間が足りなくなることは明らかだ。人々が災害後も町に住み、早期に暮らしを復興するための答えが「事前復興」の計画づくりだった。

 あくまで復興の手順や指針を大枠で示したにすぎないが「町に住む全員が将来の被災を現実的なものと受け止め、復興のビジョンを共有しておくことが重要」と大星課長は信じている。

 ■「準備完了」は5%

 阪神大震災では、復興を急ぐ行政と意見のくみ上げを求める住民との間で足並みが乱れるケースが見られた。その一例が神戸市だ。

 市が大規模な市街地再開発などの復興まちづくり案を市民に示したのは震災から1カ月後の平成7年2月23日。20万人近くが避難生活を送る中、突然浮上した将来像に住民らは強く反発したが、市は3月14日の審議会で案を正式決定した。

 以降、再建は急ピッチで進められたものの、住民が離れたり思うようなにぎわいが取り戻せなかったりした地域も少なくない。兵庫県は震災後10年間の取り組みを総括した報告書で「住民との合意形成」や「事前復興計画の重要性」を教訓として挙げている。

 実は事前復興の考えは7年7月に全面改定された国の防災基本計画で初めて提示され、以降、その重要性は何度も指摘されてきた。

 しかし、国土交通省が全国の都道府県と市区町村を対象に行った28年度の調査で、事前復興の準備が「十分・ある程度できている」と答えたのはわずか5%。検討時間が確保できない、取り組みの優先度が低い−などが課題とされたことから、同省は30年度に準備を促すガイドラインを策定したが、今年度の調査でも53%が「検討していない」と回答している。

 ■住民視点、法制化を

 事前復興に二の足を踏む自治体が多い中、住民主体で計画を進めている地域もある。そのひとつが徳島県美波町の由岐湾内地区だ。

 南海トラフ巨大地震では9割の地域で浸水被害が想定されている。被災を恐れ子育て世帯などが流出する「震災前過疎」に危機感を募らせた住民らが動き出したのは東日本大震災後の24年のことだった。

 当時大学院生だった徳島大・人と地域共創センター学術研究員の井若和久さん(35)を中心に、事前復興の理解を深める勉強会や子育て世帯が住み続けられる高台住宅地の開発案のコンペを実施。自然環境や地域愛を重視した土地利用を行う事前復興のまちづくり案を28年に作り上げた。

 「住民の思いを反映したものができた」と井若さん。しかし、住宅地整備など具体的な次のステージに動き出すことができない現状に歯がゆい思いも抱く。

 事前復興は法律上作成を義務づけられた法定計画や制度ではなく、活用できる国の予算補助などもほぼない。「計画があっても準備が進まなければ、住民のモチベーションが下がり、諦めにつながりかねない」と井若さんは危惧する。

 近畿弁護士会連合会として昨年、国などに事前復興の制度化などを求める提言をまとめた津久井進弁護士(兵庫県弁護士会)は、多発する災害を踏まえ「事前復興の必要性は増している」と指摘。「住民の意見を反映するための十分な情報公開や、策定を進めるための法的な位置づけと予算措置が必要だ」と訴えている。

=おわり

 この連載は有年由貴子、井上浩平、桑村朋、杉侑里香が担当しました。

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