【癒着 IR汚職】(上)秋元容疑者、スペイン・イビサ島視察 「金主」と豪遊

【癒着 IR汚職】(上)秋元容疑者、スペイン・イビサ島視察 「金主」と豪遊

【癒着 IR汚職】(上)秋元容疑者、スペイン・イビサ島視察 「金主」と豪遊の画像

 ズン、ズン、ズン…。暗闇に赤、青、黄の閃光(せんこう)が明滅し、重低音が響く。ステージ上にはエスニックな衣装を着たダンサーが妖しい腰遣いでステップを踏む。美しくライトアップされた港や夜景を一望できる店内に集まった客たちの中に、ひと際大きな声で騒ぐ日本人の一団があった。

 平成30年9月、地中海に浮かぶ「世界有数のパーティーアイランド」として知られるスペイン・イビサ島。予約が取れないことで有名なナイトクラブで輪の中心にいたのが、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業をめぐる汚職事件で14日、再逮捕された衆院議員、秋元司(48)だった。

 ナイトクラブを訪れる前、秋元らは表敬訪問した初対面のイビサ市長に「あのクラブの予約を取ってもらえませんか」とねだった。当時観光庁を所管する国土交通副大臣だった秋元らの目的はスペインの観光視察。だが、関係者は振り返る。「市長の前でも態度が悪く、夜はクラブで大はしゃぎ。視察というより頭の中は遊びのことしかなかった」

 一団の中には秋元の再逮捕容疑となった贈賄側企業「500ドットコム」の中国本社視察旅行に同行した衆院議員の白須賀貴樹(44)の姿もあった。さらに日本のナイトクラブ業界団体幹部のほか、クラブとは無関係と思われる複数の太陽光事業者ら秋元に政治献金している“金主”たちも加わっていた。

 関係者は言う。「一人数十万円にはなるだろう費用を誰がもったのか知らないが、秋元先生でないだろうことは分かった」

■業者べったり、選挙も丸抱え

 「俺の政治資金収入は1億超えているんだよ。そんな中で300万もらうとか、せこいことやるか? やらねーだろうよ」

 昨年12月25日の逮捕当日、秋元は産経新聞の取材にこう豪語していた。

 秋元はその言葉通り、高い資金力を誇っている。

 2つの政治団体の政治資金収支報告書によると、平成29年分の単年収入は計約1億9799万円。例えば次期首相候補とも目される岸田文雄(62)は同年で2億2067万円、官房長官の菅義偉(71)は1億5773万円。大物政治家にも匹敵する額だ。

 年2回の政治資金パーティーで各1千人前後集め、計約8千万円。ほぼ月1回ペースで開く勉強会でも毎回、百数十万円を集める。

 大口のパーティー券購入者には遊技機メーカーやホール業者などパチンコ関連企業が目立ち、ナイトクラブ、太陽光、不動産の業界なども名前を連ねる。

 資金力の源泉は、学生時代から務めた元衆院議員、小林興起(76)の秘書時代に培ったパチンコ人脈にさかのぼる。当時の同僚は「議員から献金集めを期待されていた。パーティー券販売や人脈作りにたけていて、事務所の中で実質的な稼ぎ頭だった」と話す。

 16年7月の参院選に比例代表で出馬し、自民党2位の得票数で初当選。衆院にくら替えして、当選を重ねるごとに「パチンコ業界とはズブズブ」(業界関係者)とささやかれるほど関係を深めていく。

 秋元は衆院解散当日の29年9月28日、IR参入を目指す「500」社元顧問の紺野昌彦(48)=贈賄容疑で再逮捕=らから選挙の陣中見舞い名目で現金300万円を受け取った疑いで逮捕されたが、その選挙運動自体も業者丸抱えだった疑いがあるという。

 秋元の事務所関係者によると、選挙期間中、パチンコホール業者の社員が日替わりで数十人、選挙事務所に詰め、有権者への電話などの選挙運動をしていた。関係者は「業者側か事務所側が応援に来ていた社員に金を支払っていれば、公職選挙法違反になるのではないか」と明かす。

 秋元はパチンコ業界からエンターテインメント業界にも手を広げ、「ダンス文化推進議員連盟」の事務局長として、ナイトクラブの営業時間規制緩和を提言。カラオケなどと同様、朝までの営業が可能になる改正法が27年6月に成立した。

■中国、マカオへの旅費「心配しないでいい」

 今回の再逮捕容疑の一つは、29年12月、衆院議員の白須賀貴樹と前衆院議員の勝沼栄明(しげあき)(45)ら数人を連れ、「500」社の中国本社とマカオのカジノを「経済視察」(秋元)したことだ。同行したメンバーの一人は秋元から誘われた際、旅費はどうなるのか尋ねた。

 「心配しないでいい」

 秋元はそれ以上、話そうとしなかった。

 出発前日に送られてきた日程表を見て、2泊3日で最終日は帰国するだけの強行スケジュールだと知った。同月27日、羽田空港からプライベートジェットで深●(=土へんに川)(しんせん)へ。「500」社トップから会社の説明を聞いたが、気もそぞろに一行は近隣のマカオへ向かった。

 カジノに着くと「これがチップです」と同社側から渡された。「額は人によって違ったのだろう」。宿泊したのは世界最大のスライダー付きプールがある5つ星のリゾートホテル。「結局、誰がいくら出したのか最後まで分からないままだった」

 親しい関係者は秋元をこう評す。「どんな人間の声にも耳を傾け、来る者拒まず、去る者を追いかける。だから怪しい奴が集まり、怪しいカネを集めていた」(敬称・呼称略)

 IR事業をめぐる汚職事件で、東京地検特捜部は14日、収賄容疑で秋元司容疑者を再逮捕し、最初の逮捕・起訴分と合わせ賄賂の総額は約730万円相当になった。17年ぶりに国会議員が収賄容疑で逮捕された今回の事件は、IRという巨額利権をめぐり、政界の緩みと業者とのゆがんだ関係を浮かび上がらせた。特捜部が解明を目指す癒着の実態を追う。

関連記事(外部サイト)