特効薬「イベルメクチン」を製薬会社が頑なに“隠す”理由 「開発中の新薬が売れなくなる」

ノーベル賞・大村智博士の発見から開発『イベルメクチン』 製薬会社が『隠す』事情か

記事まとめ

  • 『イベルメクチン』という、ノーベル賞受賞・大村智博士の発見から開発された薬がある
  • 東京都医師会は、コロナ第4波に備えて、『イベルメクチン』の使用を提言する
  • 製薬会社には、「開発中の新薬が売れなくなる」と、『特効薬』を『隠す』事情か

特効薬「イベルメクチン」を製薬会社が頑なに“隠す”理由 「開発中の新薬が売れなくなる」

特効薬「イベルメクチン」を製薬会社が頑なに“隠す”理由 「開発中の新薬が売れなくなる」

大村智博士

■アメリカの複数の医療団体が「使用を推奨」


 来るべき新型コロナ第4波に備えて、東京都医師会が使用を提言しているのが、ノーベル賞受賞の大村智博士の発見から開発された「イベルメクチン」である。世界中で有効性が示されているにもかかわらず、政府、製薬会社が及び腰になる事情とは――。

***

「イベルメクチンの有効性については、世界27カ国から44の研究報告が上がっています」

 と言うのは、COVID−19対策北里プロジェクト代表で、北里大学教授兼大村智記念研究所感染制御研究センター長の花木秀明氏だ。

「合計1万5420人に投与し、予防に89%、早期治療に82%、死亡率にも75%の改善が見られます。予防についてはアルゼンチンやインド、ブラジルなどの16の研究で、7011人に投与して確認された効果です。死亡率も複数の国での17の研究で、7267人に投与して確認されたものです。またハーバードメディカルスクールによれば、イベルメクチン投与群704例の致死率は1・4%で、同数の非投与群の致死率は8・5%。人工呼吸器を装着した患者にかぎれば、7・3%と21・3%と、さらに差は広がっています」

 東京都医師会の角田徹副会長が補足する。

「アメリカでも医療従事者の団体が複数、FLCCC(新型コロナに関する医師の連盟)などが“イベルメクチンは新型コロナに有効だから使用を推奨していきたい”と報告を上げています。ヨーロッパにも同様の団体があり、臨床医がさまざまなやり方で可能性を探っている状況だと思います」


■否定的な情報も


 だが、否定的な情報も届く。3月4日には米医学誌「JAMA」に、コロンビアでの治験結果が発表された。新型コロナの軽症患者400人を二つに分け、5日続けてイベルメクチンを投与した集団と、プラセボを投与した集団を比較したが、症状が解消するまでの期間に統計上の有意差はなかった、というのだ。また、製造元のメルクも2月4日、新型コロナに対してイベルメクチンの安全性と有効性は示されなかった、と発表している。これらをどう読むべきか。

 イベルメクチンに関する論文を読み続けているという作家の楡周平氏は、

「メルクの発表の安全性とは、なにを指しているのでしょうか。アフリカではオンコセルカ症の患者に、医師ではなくボランティアが配布しているほど、安全だとされている薬です。コロンビアでの治験も、『JAMA』に載った論文によれば、水に溶かした水剤が使われるなどしていて、疑問を抱く専門家もおられます」

 と、専門外から不可解な点を示したうえで言う。

「日本の医師はRCT、つまり偽薬を使ったランダム化比較試験でポジティブな結果が得られなければ、エビデンスが得られたとは言えない、という見解の方が多い。しかし、観察研究レベルでは世界中でポジティブな成果が発表され、少なくとも私は、コロナ患者にイベルメクチンを処方した医師でネガティブなことを言う人を見ていません」


■研究結果への疑問


 東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授は、イベルメクチンについて「データが不十分だ」という立場だが、コロンビアの研究チームの論文に対しては、

「これをもって、すべての症例で新型コロナに対してイベルメクチンの効果が期待できない、と判断するのは時期尚早だと思います」

 として、こう続ける。

「この試験はイベルメクチン投与群200名と、プラセボ投与群198名を対象とし、だれがどちらを服用し、服用した結果どうなるのかわからない、前向きのランダム化コントロール研究である点は評価できます。しかし、当初はイベルメクチンが病状の進行を予防するかどうかを確認するための研究だったのに、病状が進む症例が少なかったため、途中で病状が消えるまでにかかる日数や、21日目に完全に回復している割合を比較するものへと、目的を変更しています。病状悪化率が低かった理由として、一つには対象者の年齢が関係していると思われます。平均年齢37歳で40歳未満が半数以上、65歳以上は10%未満と、比較的若い層を対象としていたのです。イベルメクチンに期待されるのは、早期服用による重症化や入院の予防効果ですから、重症化リスクの高い高齢者や持病がある人に対し、特に効果が期待されます。今回のように、90%以上が自然に軽快し、病気が進みにくく重症化しにくい人が対象では、効果の判定が難しいのです」

 症状が消えるまでの日数は、イベルメクチン投与群が10日、プラセボ投与群が12日。21日目に完全回復している割合は、前者が82%、後者が79%だった。


■効果を否定しているのは“お粗末な治験”


 花木氏もコロンビアのチームの治験について、

「プロトコル(実験計画)が4回も変更され、著者らもプロトコル違反を認めながら治験が継続された」

 と、寺嶋教授と同様の疑問を呈したうえで言う。

「イベルメクチンは、27カ国から報告された新型コロナへの効果も、全部錠剤で確認されているのに、この治験では水に溶かした水剤を使っている。水剤と錠剤で同等の吸収率や血中濃度が確保されるかどうかも不明です。またプラセボの作製が間に合わず、プラセボ群65人に5%デキストロース、つまり砂糖水が使われ、これでは見た目でも味でも容易にプラセボとわかってしまう。ありえない最たる点は、プラセボ群38名にイベルメクチンが投与され、イベルメクチン投与群の一部にプラセボが投与されていたこと。厳格な試験では考えられない凡ミスです。SNS上には、この論文をもとにイベルメクチンの有効性を否定する著名な専門家もいますが、信頼性が高い治験かどうか、しっかり読んで確認してほしいです」

 お粗末な治験だというのである。では、新型コロナへの有効性を否定したメルクについてはどうか。

「メルクには治験開始前に支援をお願いし、断られています。メルクは昨年4月、オーストラリアのモナシュ大学が発表した論文を根拠に、臨床レベルではイベルメクチンに効果がないと判断しているようです。モナシュ大学は、試験管レベルで新型コロナ抑制に効果があると発表しましたが、人に投与して効果を得るには、通常0・032マイクログラム/ミリリットルの血中濃度を4マイクログラム/ミリリットルと非常に高くしなければならない、と指摘している。しかし、この試験管試験にはサルの腎臓のベロ細胞が使われ、この細胞は人間の肺や気管支の細胞よりウイルスと結合しやすく、ウイルスを増殖させる力が千倍ほど強い。私たちの体内では、もっと低い血中濃度でも十分に効果を発揮できると思います」


■大村博士「お金にかかわる問題がからんでいる」


 では、開発者の大村博士は、こうした状況をどう見ているのか。最初にコロンビアの論文について、

「よくあんな論文が名門雑誌に載ったと思う。海外の友人も“あの論文はアマチュアだ”と言っています」

 と述べたうえで、訴える。

「イベルメクチンの利点は飲むのが簡単で、服用回数が少なくてすむこと。ワクチンは変異株には効かなくなることも考えられますが、イベルメクチンは作用機序からいって変異株にも効くだろうと、私は考えています。しかし、特に製薬会社には、自分たちが作ろうとしている薬があるなどして、イベルメクチンを売りたくない、と考える人もいるのではないでしょうか」

 どういう意味か。

「私が“イベルメクチンを承認させ、もっと生産していこう”と持ちかけたとき、メルクは“やらない”とはっきり言いました。自分たちが開発しているワクチンが何種類かあって手が回らない、と。その後、2月4日の“コロナに効くという根拠がない”という発表を見て、メルクはイベルメクチンが使われては困るという考えだな、と悟りました。人命にかかわる問題以外に、お金にかかわる問題がからんでいるのだろうと。メルクの発表には、大勢の医療関係者がオープンレターを書いて反論してくれたようで、海外でも批判的な記事が出ていると聞きます。本来はメルク自身が治験をし、“使ってください”と言うべきですが、それができないのは、自分たちの薬を開発中だからでしょう」


■「コロナと戦う武器は多いほどいい」


 医薬情報研究所SICの医薬情報部門責任者である堀美智子さんは、「臨床試験がすむまでは服用すべきではない」としたうえで、

「コロナと戦う武器は多いほどいい。人間は個別的存在で、いろいろな体質の人がいるのだから、さまざまな向き不向きがある薬やワクチンが何種かあるほうが、いいに決まっています。イベルメクチンはメカニズムを見るかぎり、変異ウイルスにも効果を失わないと思われ、臨床的効果が実証されることを願っています」

 と語る。現在、ワクチン接種が予定通りに進むかどうか予断を許さない。しかし、仮に順調に進んだとしても、同時に治療薬が必要であることは論をまたない。さる薬科大の教授は、

「イベルメクチンにはサイトカインストーム(免疫の暴走)を抑え、ウイルスがゲノムを細胞に送り込んで増殖するのを防ぐ効果が期待されています」

 と言い、さまざまな薬への期待をこう語る。

「サイトカインストームが起きると、微小血栓が脳や心臓にでき、命にかかわる症状を引き起こしますが、カモスタットはこれができるのを防いでくれます。同様にナファモスタット(フサン)も期待大。この二つは膵炎などの薬で、こういった内服薬の選択肢が増えるとありがたい」


■高価な新薬を売りたい製薬会社


 しかし、カモスタットは臨床試験の結果が4月にも出そうだが、イベルメクチンは時間がかかる。ひとえにメルクが消極的だからだが、その理由を、さる製薬会社の関係者は大村博士の話を補うように、こう読む。

「メルクはワクチンの開発に失敗したのち、新治療薬候補モルヌピラビルの治験を進めています。イベルメクチンは1錠671円なのに対し、新薬は1錠数万円で売れますから、そちらを推したい気持ちはあるでしょう。レムデシビルも1人分が24万円です。廉価なイベルメクチンが有効だとわかってしまえば、新薬は不要になって、すでに投入した開発費なども回収できなくなりますから」

 また、大手製薬会社の幹部社員も言う。

「たとえば糖尿病にも、昔作られたピオグリタゾンという、安くて効く薬があるのですが、製薬会社は最近作られたSGLT−2阻害薬やGLP−1受容体作動薬を売りたい。昔のものはあまり宣伝しません」


■「製薬会社や国がやることを一生懸命やっている」


 コロナ禍は製薬会社には千載一遇のビジネスチャンスだろう。だが、そのために患者の治癒が二の次になるなら、本末転倒も甚だしい。再び大村博士が言う。

「北里大学は、本来、製薬会社や国がやることを一生懸命やっている。イベルメクチンで成功しても、北里には儲けなどなく、使命感だけです。ただ、メルクがああいう発表をすると、厚労省も承認に向けて動きづらくなりますよ」

 製薬会社がだめなら厚労省に頑張ってもらいたいところだが、花木氏も、

「厚労省は(モナシュ大学の)試験管試験の評価を国内の大学に依頼し、臨床レベルでは効果がないと判断しているようです」

 元厚労省医系技官で医師の木村盛世氏が言う。

「日本はワクチンや薬の開発、供給、接種や投与は可能でも、大規模治験ができない。せっかく開発したものを実用化できず、海外で売ることもできない。新興感染症の流行を国家の危機と捉えていないのです」

 やる気がないようだ。製薬会社の事情。欧米より1桁少ない感染者数で医療が逼迫する日本の「やる気のなさ」。二つがタッグを組めばなにも進まないのも、もっともな話である。むろん薬だから、安全性への冷静な評価は欠かせない。だが、効果のない緊急事態宣言で社会を破壊するよりも、手持ちの薬を増やす努力を優先すべきではないのか。

「週刊新潮」2021年3月25日号 掲載

関連記事(外部サイト)