プロ野球のチケット転売合戦もいざ開幕 阪神戦だけで2000件の不正転売

プロ野球のチケット転売合戦もいざ開幕 阪神戦だけで2000件の不正転売

プロ野球チケットの出品が目立つチケット流通センターのページ。球団非公認にもかかわらず、日程別に検索できる仕組みになっている。

■チケット流通センターとチケットジャムで突出


 プロ野球が有観客で開幕し、選手たちが熱戦を繰り広げる中、入場チケットの転売合戦も異常な盛り上がりをみせている。開幕して間もないのに、既に複数のチケット仲介サイトでは、プロ野球チケットの出品件数が数千件にも上り、人気球団の阪神戦だけでも2000件以上、巨人戦も1500件以上という状況だ。

 不正転売が過熱化する背景には、新型コロナウイルス感染対策により球場の入場者数が制限され、入手困難となったチケットの希少価値が悪用されていることがあり、明らかに営利目的での高額出品のケースも目立つ。

 不正転売は法律で規制され、各仲介サイトの利用規約でも禁じられているのに、なぜここまで野放しになっているのだろうか。

 複数あるチケット仲介サイトの中で、プロ野球チケットの出品数が際立つのが、「チケット流通センター」だ。

 同サイトで出品数が1位とされる阪神戦を検索すると、本拠地の甲子園球場とアウェー球場を合わせて1137件(4月3日時点)も引っかかった。「チケット流通センター」のほかにも野球チケットの出品が目立つサイト「チケットジャム」でも同様に検索すると、阪神戦は950件以上もヒット。主要2サイトだけでも2000件に及び、突出している。

 巨人戦についても、阪神戦まではいかないものの、「チケット流通センター」だけで1000件以上の出品が確認できた。

 そもそも、プロ野球の「試合観戦契約約款」でも営利目的のチケット転売は禁じられ、球団の正規販売しか行っていない阪神や巨人など多くの球団は、仲介サイトでのリセール(二次販売)を認めていない。したがって、各仲介サイトに出品されているチケットは全て球団非公認の「不正転売」ということになる。


■シーズンシート席の転売などが横行


 しかも、「チケット流通センター」では、同サイトと協業してリセールを公認している一部球団(オリックス、日本ハム、千葉ロッテ、西武ライオンズ)以外は球団非公認にもかかわらず、球団ごと、試合日程ごとに検索できるという、非常に丁寧な仕組みになっている。

 もちろん非公認の球団側からしたら、正規ルートでの販売の妨げにもなりかねず、たまったものではないだろう。

 開幕から2週間足らず。

 各球団が一般販売している日程がまだ少ない中でこれほど転売が横行しているのは、ファンクラブ会員の優先席チケットや、年間を通して同じ席を契約するシーズンシートのチケットが多数出品されていることが要因としてあるようだ。中には出品価格が正規価格の5〜10倍にも及ぶものもあった。

 ある球団関係者は、「転売は、球団が設定した適正価格での平等な観戦機会を奪うことになる。ファンクラブ会員やシーズンシート契約者は、本来は球団の熱心なファンという前提でチケットを買ってもらっているはずなのに、それが不正転売につながっているのは悲しいことだ」と嘆く。

「チケット流通センター」など各仲介サイトに出品されているチケットの中には、出品価格が正規販売価格と同額かそれ以下に設定され、急用等で球場に行けなくなり、やむを得ず出品したとみられるケースもある。

 また、先述の一部球団は「チケット流通センター」を球団公認のリセールサイトとして、正規販売価格と同額かそれ以下での出品は認めている。

 球団としては、不測の事態で来場できなくなったファンによる出品を通じ、球団の一次販売ルートで購入できなかったファンを救うことができるため、一部球団がリセールを公認する理由は理解できる。

 だが、仲介サイトによっては、身分確認をすることなしにメールアドレスや電話番号だけで取引できるサイトもあるため、「公認リセールといっても、仲介サイトは本人確認が非常に甘いため、悪質な転売ヤーにとっては、匿名性を保ちながらチケットを大量に仕入れる格好の場となっている」(球界関係者)といい、公認リセールサイトが不正転売を助長している一面も否定できない。

 実際に、公認リセールサイトで低額購入したチケットを別の仲介サイトで高額転売するというケースも複数球団で確認されているといい、悪質な転売ヤーの存在に、多くの球団が頭を悩ませているようだ。


■法で規制も摘発は数件のみ


 もちろん、転売行為は法律でも規制されている。

 転売ヤーが希少価値の高いチケットを転売目的で大量購入し、仲介サイトやオークションサイトで高額転売すれば、チケットを必要とする消費者に適正価格でチケットが行き渡らないようになり、観客の平等な観戦機会が奪われ、転売ヤーのみが不正利益を得ることになってしまうためだ。

 2019年6月には「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(チケット不正転売禁止法)も施行され、違反すれば、懲役1年以下もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科せられることになっている。

 ただ、チケット不正転売禁止法で禁じられているのは「興行主の同意を得ず、反復継続の意思を持って、興行主等の販売価格を超える価格で特定興行入場券を転売すること」とされており、捜査機関が摘発する上で、「反復継続性」を認定するハードルはかなり高いとみられ、適用事例はいまだ数件しかないのが実情だ。


■複数サイトを利用して転売


 そもそも、不正転売という違法行為をいわば黙認しているともいえる仲介サイト側の対策はどうなっているのだろうか。

 各仲介サイトを分析してみると、ほぼ全てのサイトの利用規約に「業としての転売」を禁じる条項が盛り込まれており、違反した場合は出品取り消しや利用停止などの措置が取られるルールにはなっている。

 だが、ある仲介サイト運営会社幹部は、「ある一定の基準を設け、一度にまとめて出品したり出品頻度が多かったりするケースでは、『業としての転売』とみなして対処する決まりにはなっている。ただ、転売ヤーもそんなに馬鹿ではないので、厳しい対処はなかなかできていない」と話す。

 強制力のない仲介サイト側が、「業としての転売」を見極めるのは難しく、利用規約に基づく厳格な対応はほとんど取られていないのが実情のようだ。

 まして、悪質な転売ヤーは、複数のサイトを使って転売を重ねており、自社の仲介サイトでの出品の枚数や頻度だけで「業としての転売」を判断しても、いくらでも抜け道があるのは明らかだ。


■メルカリが一律出品禁止にしたワケ


 こうした転売対策にのらりくらりな状況が続いてきたチケット仲介サイト業界に、一石を投じたのが、大手のメルカリだ。

 昨年途中まではメルカリでも、他のサイトと同様にプロ野球チケットの高額出品が相次いでいたが、メルカリは昨シーズン途中から、日本プロ野球機構(NPB)の要請を受け、プロ野球チケットは出品の枚数や頻度に関係なく出品自体を禁止するよう舵を切ったのだ。

 確かに、現在は、メルカリでプロ野球チケットを検索しても、全くヒットしない。

 メルカリが方針転換するにあたり、特に重視したのは、匿名性の高い転売チケットが、試合の主催者側にとって、新型コロナ感染対策の妨げになる恐れがあるという点だ。

 スポーツや音楽コンサートなどのイベント主催者は、当然、来場者の中からコロナ陽性者が出た場合、付近にいた客らにその旨を連絡し、濃厚接触者や他に陽性者がいないかを速やかに確認しなければならない。

 しかし、チケットが正規ルートで購入された後に仲介サイトで転売されると、チケット番号から実際の来場者に連絡することができなくなってしまい、コロナ感染拡大を引き起こす要因にもなりかねないのだ。

 メルカリはこうした事情を踏まえ、現在は、プロ野球だけではなく、サッカーJリーグの入場チケットも出品禁止にしている。

 チケットの出品状況から「業としての転売」を見極めるのが難しい点を考えると、主催者側にも配慮し、出品自体を一律に禁止としたメルカリの抜本的な対策はかなり評価できるだろう。


■東京オリ・パラに向けて


 今夏は東京オリンピック・パラリンピックが開催される。コロナ禍の中で開催される大会で各競技の入場者数は制限されるため、チケットがプラチナ化し、メルカリ以外の各仲介サイトで高額転売が多発するのは容易に想像できる。

 悪質な転売ヤーを排除するためには、各仲介サイトはうわべだけの対策ではなく、メルカリの厳格な対応を参考に、抜本的な対策に乗り出すべきではないか。

 新型コロナ感染拡大防止の観点からも、大勢が集う興行において、匿名性の高い転売チケットが横行することは許されない。

デイリー新潮取材班

2021年4月7日 掲載

関連記事(外部サイト)