“妻突き落とし殺害”容疑者釈放に被害者の母は… 事件前日に“夫から何かされる”とメールが

“妻突き落とし殺害”容疑者釈放に被害者の母は… 事件前日に“夫から何かされる”とメールが

“真犯人”は何処へ?

「検察の方から、“釈放になりました”という電話を受けた時は、何が何だか分からなくなって……。刑事さんには、証拠が揃っていると聞いていましたから」

 そう話すのは、昨年11月に亡くなった高張麻夏(たかはりあさか)さん(享年41)の母親である。今年2月、麻夏さんを殺害した容疑で夫が逮捕されたが、3月22日に処分保留で釈放されたのだ。突然娘を失い、悲嘆にくれる遺族が、本誌(「週刊新潮」)に思いの丈を語る。

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 当初、麻夏さんの母親は娘が飛び降り自殺したと聞かされていた。現場は東京・国立市にある都営団地。9階の一室で同居していた夫の高張潤容疑者(44)が遺体を発見したが、その証言に警察は不審を抱く。

 警視庁担当記者によれば、

「夫の説明では、遺体発見の前日に夫婦喧嘩をしてしまい、妻は部屋から姿を消した。翌朝気づいたら団地の建物の真下で倒れており、育児ノイローゼだったから自殺したのでは、というものでした。確かにベランダには飛び降りに使ったと思われる椅子が置いてあったのですが、その後の捜査で彼女が欄干を跨いだ痕跡などが見当たらず、遺体にも首を圧迫されたような所見があったそうです」

 状況証拠を積み重ねた警察は夫の逮捕に踏み切るものの、容疑を否認した夫は黙秘を続け、自供を取ることはできなかった。

「膠着状態が続く状況で勾留期限が近づき、このままでは起訴をしても公判は維持できないとして、東京地検立川支部は釈放の判断を下したのです」(同)

 今後も同支部は、夫を任意で取り調べていく方針だが、このままでは不起訴となる公算が大きいという。


■遺骨と遺品を引き取って


 冒頭で悲痛な思いを口にした麻夏さんの母親が、改めて事件を振り返る。

「亡くなる前日、娘は実の兄と他愛のない会話をLINEでしていました。19時半に送ったメッセージに既読がつかなかったそうですから、その時には夫婦喧嘩が始まったんでしょうね。その日、娘は私にもメールをくれ、“夫から何かされる”と言っていた。以前から離婚したいとも言っていたので心配はしましたが、まさか娘が殺されるとは思わず電話をしなかった。本当に恐い思いをしたのだと思うと、助けられずに後悔しています……」

 つけているマスクを涙で滲ませながら、彼女はこうも言う。

「娘はクリスマスケーキやおせち料理を予約していました。亡くなった後にそれが届いて……本当に辛かった。きっと家族3人で食べるつもりで用意していたんでしょう。周囲には孫娘の運動会には絶対に来てねとも言っていました。孫はまだ1歳半ですから、まだまだ先のこと。やっと自分にも子供ができたと本当に喜んでいたから、とても自殺するようには思えません」

 今も高張容疑者とその実家に対しては、不信感しか持てないと続けるのだ。

「あの家からは、亡くなった麻夏を悼む心が感じられません。遺体が見つかってから葬儀まで、10日以上も時間があったのに、向こうの両親は手を合わせに来ませんでした。葬儀の時も遅刻してきて喪服すら着ていなかった。父親はネクタイもせず柄物の靴下でしたから……」

 高張容疑者の逮捕前だったのに、結局、遺骨も麻夏さんの母親が引き取ったそうだ。

「本来は籍に入った向こうの家の墓に入るのが当たり前なのに、遺品も含めて“全部そちらで引き取って”と言われました。その一方で、今は私が面倒をみている麻夏の一人娘の親権は主張してきて、幾度か話し合いの場を持ちました。娘からは育児に非協力的だったと聞いていたので、彼には男手一つで育てられるのかと尋ねると、“ダメだったら施設に入れる”とまで口走った。孫の予防接種も父親のサインが必要なので頼んだら拒否されてしまいました。今はとにかく麻夏の忘れ形見である孫の成長と、身の安全を祈ることしかできません」

 夫側に孫を奪われないよう地元の児童相談所に相談しても、祖母には親権が認められないので、まともに取り合ってくれないと嘆く。

 かような遺族の慟哭をどう聞くか。高張容疑者の実家に取材を申し込むと、彼の母親が出たものの、

「すみません……。話すことはありません」

 と答えるばかりだった。

 最終的に高張容疑者が不起訴となった場合、麻夏さんの母親は検察審査会に異議申し立てを行う予定で、署名活動も辞さない構えだ。

「週刊新潮」2021年4月8日号 掲載

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