NHK有馬キャスター、人事異動でパリのヨーロッパ副総局長へ

NHK有馬嘉男キャスターがパリに異動 新設ポストのヨーロッパ副総局長に就任へ

記事まとめ

  • NHKの有馬嘉男氏がパリにあるヨーロッパ副総局長に就くことが内示された
  • 有馬氏はNHKニュースウオッチ9のキャスターを3月まで担当、官邸の圧力が取り沙汰も
  • 菅義偉首相に日本学術会議について質問したことで坂井学官房副長官は不満を表していた

NHK有馬キャスター、人事異動でパリのヨーロッパ副総局長へ

NHK有馬キャスター、人事異動でパリのヨーロッパ副総局長へ

異例の人事だった(NHK「ニュースウォッチ9」より)

■これまでにない新設ポスト


 NHKニュースウオッチ9のキャスターを3月いっぱいで交代した有馬嘉男氏(55)が6月の人事で、パリにあるヨーロッパ副総局長に就くことが内示された。副総局長はこれまでにない新設ポストとされる。有馬氏の交代をめぐっては官邸の圧力、あるいは官邸への忖度説が取りざたされ、その後の人事が注目されていた。

 有馬氏は1990年に入局後、経済部から国際部でキャリアを積み、シンガポール支局長や国際報道番組のキャスターを経て2016年にニュースチェック11の、17年からニュースウオッチ9のキャスターを担当してきた。

 足掛け4年にわたったキャスター時代には演出家・宮本亞門が企画した動画プロジェクトを紹介した際に涙を流すなど、NHKには珍しく感情を表に出すこともいとわないキャスターとして人気を博した。

 そんな有馬氏をそれまで以上に有名にしたのが、就任したばかりの菅義偉首相とのやりとりだった。

 昨年10月26日、有馬氏は番組で、当時の臨時国会の焦点となっていた日本学術会議問題について菅首相に質した。それは一部、事前に打ち合わせなくダイレクトなものもあったとされ、菅首相は語気を荒らげて不快感を露わにするシーンが全国のお茶の間に届けられることとなった。

「あの時は担当の理事らがスタジオでやり取りを見守るなど、菅さんシフトを敷いていましたね」

 と、NHKのある局員。首相はかつてNHKを管轄する総務相を務め、今もなお厳然たる影響力を保持している。やり取りを見守っていたとされる理事にとっては首相を迎えたというよりはむしろ、管轄する省庁のドンを迎えたという心境だったのかもしれない。


■とにかく自分の意見を言わないタイプを


 改めて首相と有馬氏のやりとりを見てみると、特に突っ込んだ質問を有馬氏がしているわけではなく、見る人によってはせっかく時の宰相を呼んでいるのに物足りないなぁと映った点もあるかもしれない。

 しかし官邸の考えはそうではなかったのか、放送後に内閣広報官からNHKの政治部長に対し、有馬氏に関して抗議があったという情報が駆け巡った。その後には朝日新聞が12月11日付で、

〈坂井学官房副長官は5日夜の会食の場で、菅義偉首相が出演した10月のNHKの報道番組をめぐり、「所信表明の話を聞きたいといって呼びながら、所信表明にない(日本)学術会議について話を聞くなんて。全くガバナンス(統治)が利いていない」などと言及した。坂井氏は7日、朝日新聞の取材に対し、会食の席での会話にすぎないとの認識を示したうえで、発言内容を認めて、「報道を規制すべきだという趣旨では全くない」と説明した〉

 と報じ、広報官の抗議の有無はともかく、官邸のNHKへの不満が明らかとなった。有馬氏の降板が明らかとなったのは今年2月のことだった。その後の会見で有馬氏が官邸の不興を買ったがゆえの忖度人事ではないかと問われた放送総局長は、「そのような人事はしていない。自主自律を堅持している」と訴えたが、

「菅さんと有馬アナのやりとり、内閣広報官による抗議報道、官房副長官がNHKに不満があるのを認めたこと……と、有馬さんを交代させるための状況証拠は確かにそろっていますよね(笑)。それとは別に、有馬さんとウオッチ9の編集責任者との年次差が広がっているのを是正する必要があって、交代は官邸の意向とは無関係だと指摘する声もありますが、真相は藪の中です」

 別の局員によると、

「有馬さんの後任はワシントン支局長などを務めた田中正良さんですが、かなり地味な印象がぬぐえないですよね。上層部は“とにかく自分の意見を言わないタイプを”と指示して人選を進めさせたと聞いています」


■政治部は良くない、すでに終わっている


 有馬氏としてはキャスターを4年やっていることなどから人事異動はいつあってもおかしくないとは思っていたようだが、

「それとは別に、“政治部は良くない、すでに終わっている”と話していることがあったと言います。安倍政権からずっと官邸に忖度して報じるべきものが報じられていないという不満が溜まっていたのは間違いありません」(同)

 当初は国際部長のポストも取りざたされたが、報道局長が経済部出身者から政治部出身へと交代したことなどもあり、今回の人事に繋がったと指摘する声もある。

「新しくポストを作ってそこに押し込んだようにも見え、その意味では有馬さんの行く場所が他になかったということなんでしょうね。本人は海外に行きたい、それも本流であるアメリカへという希望があり、その一方、現場でやりたいという意向もあったようです。会社としてはアメリカへは難しいが、管理業務からは解放される副総局長として処遇しようということになったのかもしれません。その意味では思惑が一致したと言えるかもしれません」(同)

 ちなみに、有馬氏の前にウオッチ9のキャスターを務めていた河野憲治氏は、今回の人事でアメリカ総局長から解説委員長に栄転となっている。

 ともあれ、ヨーロッパから有馬氏の元気な顔でお茶の間にニュースを伝えて欲しいという声も少なくないだろう。

デイリー新潮取材班

2021年6月3日 掲載

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