内海聡氏の「おちょくり芸」は画期的 凝った方法で「コロナ脳」を揶揄(中川淳一郎)

内海聡氏の「おちょくり芸」は画期的 凝った方法で「コロナ脳」を揶揄(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 ツイッターの世界には、思ってもいない非常識なことを本気であるかのように言い、本気でそう思っている人をおちょくる、という伝統芸があります。何がなにやら分からないと思うので具体例を挙げます。6月10日に『医師が教える新型コロナワクチンの正体 本当は怖くない新型コロナウイルスと本当に怖い新型コロナワクチン』という書籍を出版するTokyo DD Clinic院長の内海聡氏がそれにあたります。

 ツイッターではコロナについて「ヤバ過ぎる」と脅え、楽観視する人間に対しては人でなし扱いする、いわゆる「コロナ脳」な方々が大量にいます。内海氏はそうした方々の論調をさらに過激にしてみせ、実際は彼らをおちょくるわけですね。といってもこの高度な芸は分かりづらいので内海氏のツイートの一部を一つ紹介します。

〈放屁汗腺は確認されたのでうんこもおしっこももちろん禁止です。みなさんのわがままでウイルスを拡げないよう、コロナ脳は頑張ります。〉

 わざと「感染」を「汗腺」としたり、過激な禁止令を出すなど、凝ったやり方でコロナを過度に怖がる人々をおちょくっているわけです。これに、「気の緩みでオシリも緩まないように気を付けます!」と、内海氏の芸を理解している人が多数応え、ほんわかとした空気が流れる。内海氏は書籍タイトルからも分かる通り、当然コロナ脳ではありません。

 いわば「釣り師」の一種ですが、過去に人気だったこの伝統芸の使い手には「佃お母さん」がいました。佃お母さんのツイートはたとえばこんな感じです。

〈食べログで見つけた「サイゼリヤ」というイタリアンのお店をPTAの懇親会のために予約したのですが、何と当日ジーパンを穿いてきた会員がいました。イタリアンに行くのにドレスコードを守らないとはどういう教育を受けてきたのでしょう。幹事の私の面目丸潰れです。上流教育の重要性を痛感しました。〉

 完全にツッコミどころ満載なのですが、これを見て「サイゼリヤはカジュアルな場所です」などと本気で諭す人も続出。ここまで来て佃お母さんの「作品」が完結するのです。私もこの芸は好きなのですが、最近の内海氏のツイートを見ていて、ふと佃お母さんに絡んでいただいた時のことを思い出しました。

 2013年10月、日比谷公園で結婚式に出たところ原発反対のデモをやっていました。その時の私のツイートはコレです。

〈脱原発デモ参加のババァが「こんな大事なデモやってるのに何が結婚式だ!」とか言って「この日は決まってたんで…」と言ったら「お前らはくたばれ!」と言われた。なんだよ、クソババア〉

 これを見たであろう佃お母さんが、13時間後に自身がこのデモに参加したとツイートし、結婚式参列の不届き者(私)を厳重注意したと述べたのです。ツイッターのまとめサイトtogetterで佃お母さんのツイートを載せた上で、私のツイートが紹介されました。時系列は無茶苦茶ですが、読み手には佃お母さんが中川淳一郎を注意した、と読みとれるわけです。

 恐らく佃お母さんは脱原発デモ参加者をおちょくりたかったのでしょう。内海氏の画期的な点は、実名なのに佃お母さん的なことを日々やっていることです。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2021年6月3日号 掲載

関連記事(外部サイト)