政府が高齢者1千万人にスマホ講習 「人に優しいデジタル化」実現なるか

 スマホの使用が国民の義務となるのか。国が高齢者にむけてスマホの無料講習会を開くそうだ。前年度補正予算ですでに9・3億円の事業費を計上、早くもこの6月から着手するというが、スマホの使い方は街場の携帯販売店に任せておけばいいのでは?

「たしかに携帯ショップでもスマホ教室が実施されていますが、講座メニューは本体や各種アプリの基本的な使い方が中心ですね」

 と説明するのは、総務省情報流通行政局の担当者。

「その点、国の事業として重視しているのはスマホによる行政手続きの講座です。たとえば、マイナンバーカードの申請方法やその専用サイト『マイナポータル』の活用法、オンラインで確定申告ができるe-Taxの利用法などなど、いわば応用講座になります」

 講座を開く場所は携帯ショップがほとんどで、店舗が講師を指定する。こうした店のないエリアでは公民館などを利用する。

「基本講座は『ネットの使い方』『メールの使い方』など6テーマ。応用講座は行政手続きに関する5テーマ。1テーマの講習時間は約1時間で何回でも受けられます。実際には年齢制限を設けておらず、40、50代の方も参加可能です」(同)

 とはいえ、メインのターゲットはやはり高齢者だろう。内閣府の調査では60代の25%、70歳以上の57%がスマホを使っていない。今年度の開催回数をじつに9万回、参加者を40万人と見込み、向こう5年間で延べ1千万人を目指すというから堂々たるもの。かねて政府はデジタル格差の拡大を案じ、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」をお題目に掲げるが、ちょっと待てよ。

 60歳や70歳にもなってスマホへの習熟が求められる社会は“人に優しい”のか。

 眼をすがめつつ小さな画面を動きの覚束ない指で擦るのは億劫だ、などというのも禁句か。大事なことを間違えず入力する技能が今後は必須となるならば……。

 すると今度は国交省が、列車の混雑具合をスマホに絡めて表現したという報道が。従来は「広げて楽に新聞を読める」程度の混雑度などと言い表していたのを、「(スマホの)操作は楽にできる」程度といったふうに変えたという内容だ。

国交省に訊くと、

「昨年12月実施の混雑率アンケート調査を担当した者が、列車内で新聞を読む人が少ない現状を受け、表現を変えただけです。この件の報道後、“歩きスマホなどのマナー違反を助長しかねない”といった批判をいただきましたため、今夏の調査では表現を元のように戻すものと思います」

「週刊新潮」2021年6月3日号 掲載

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