ダブル不倫で再婚した2人 再び浮気をしている男性は純粋なのか、学習しないのか…

ダブル不倫で再婚した2人 再び浮気をしている男性は純粋なのか、学習しないのか…

不倫相手との愛を貫き、お互いに離婚までしたのに…

 “結婚”を目的としていない不倫は、“恋愛”である。それぞれを別だと考えている人は、“結婚”と“恋愛”の両方を続けるわけだが、もちろん露見してどちらか、あるいは両方を失うこともある。

 一方、恋愛すると「結婚」が着地点だと考える人もいる。そういう人は、大変な思いをして離婚・再婚したのに、その後、また不倫をして離婚を考えたりしているのだ。学ばないというか純粋というか……。「この人に一夫一婦制には無理があるのではないか」と思ってしまうのは、そういう話を聞いたときだ。

 安西秀哉さん(48歳・仮名=以下同)が最初の結婚をしたのは、28歳のとき。相手は同じ外資系企業に勤める、2歳年下である美香さんだった。

「就職して3年たって、なんとなく仕事もちょっとわかってきたころ、社内の映画サークルで知り合ったのが美香でした。話しやすい女性でしたが、最初は結婚なんてまだ考えられなかった。でも、いつの間にかふたりで会うようになって。つきあっていくうちに同期も少しずつ学生時代からつきあっているからとか、駐在が決まったからとか、そんな理由で結婚していく。結婚ってタイミングなんだろうなと思っていました」

 そんなとき、秀哉さんにもアジアのとある地域へ駐在の命が下った。美香さんに話すと、「遠距離恋愛、別れる、結婚するの三択だね」とストレートに言われた。

「このとき、美香と結婚しようと思いました。シンプルでいいじゃないですか。彼女は何かコトが起こったとき、だいたいこうやって選択肢を提案してくれるんです。そこからふたりで話し合うことができる。信頼できます。言い換えれば男にとって、申し訳ないけど面倒くさくない女性なんです。結婚するには理想的だと思いました」

 若干、上から目線を感じるが、彼にとって重要なのは仕事。くつろげる家庭はほしいが、その実質的運営は妻に任せたいのが本音だったようだ。

「三択なら結婚しかないでしょと言ったら、美香は『わかった。私もそう思う』って。そこからすぐに両家に挨拶、婚姻届を出しました。駐在の日程に間に合わず、結婚式もしなかったけど、美香は少し日本に残ってさまざまな事務処理をし、退職届を出して来てくれたんです」

 到着してからも美香さんは、家庭を整え、現地の日本人コミュニティに気配りをするなど満点の活躍だったという。

「3年の任期を経て帰国し、それからふたりの子に恵まれて、美香は子育てと家庭のことをいつも楽しそうにやっていた。僕は美香とケンカしたこともありませんでした。文句のつけようがないから。子どもたちが成長するにつれて、家族っていいなあと僕もしみじみ思うようになっていきました。すべて美香のおかげです。家のことなど何もしなかった僕が、料理にはまったのも妻や子どもたちが喜んでくれるから」

 とはいえ秀哉さんは出張が多かったし、30代の間に2度、2年ずつ外国へ単身赴任もした。そのたびに負担をかけたと思っているが、美香さんからはほとんど愚痴さえ聞いたことがなかった。

 40代に入ってすぐ、また異国への単身赴任が始まった。このときは行き先が中東という、初めてでしかもなじみのない場所だったため、毎日が苦労の連続だったという。時差があるため、なかなか子どもたちの顔を画面上で見ることさえ叶わなかった。美香さんの笑顔だけが救いだった。

「そのころ、日本で僕の仕事をアシストしてくれていたのが同じ部署の春恵です。彼女は派遣でやってきたばかりでしたが本当に有能で、どれだけ助かったかわかりません。ご主人の中東駐在に同行したことがあって、僕がいた地域や風習にも詳しかった。日本時間の夜遅くに急な連絡をしても、必ずニーズに応えてくれる。僕だけでなく会社としても彼女には全幅の信頼を置いていて、正社員への打診もしていたそうです。ただ、彼女は子どももいるし、今は派遣でと言っていたみたいですが」

 一時帰国したとき、真っ先に春恵さんを食事に誘った。どれだけお礼を言っても足りないほどだったのだが、彼女は「お役に立ててよかった」と温かい笑顔を見せた。

 中東から帰国してからは彼女と二人三脚で仕事をすることが増え、ますます親密感を覚えるようになった。

「しっかりしている彼女なのに、ときどき仕事とは無関係に天然のボケをかますことがあって、そこがまたホッとさせられる。気づいたら彼女のことが好きになっていました。毎日、彼女に会うために会社に行っているようなものだと、ある日突然、気づいたんです。そうなると意識してしまって、高校生みたいにドギマギして……」

 気持ちは春恵さんも同じだったようだ。バレンタインデーに彼女からチョコレートをもらった。義理チョコでもうれしいよとつぶやいた秀哉さんに、春恵さんは「義理じゃありません」ときっぱり言ったのだ。

「お礼に食事に誘いました。家族への言い訳など準備が必要だったんでしょうね、彼女は一週間後の金曜日ならと言ってくれた。そのときすでにお互いに覚悟が決まっていたんだと思います」

 秀哉さんが44歳、春恵さんは40歳。お互いに家庭があり、じゅうぶんに責任感をもった大人だった。それでも落ちるときは落ちるものなのだ、恋に。


■不倫がバレてドロ沼に


 一度、気持ちを確認しあい、タガが外れてしまうと、ふたりの恋の炎は燃えさかるばかりだった。春恵さんは万が一のことを考えて会社を辞めた。

「仕事でサポートできないのは寂しいけど、職場が違えばもしものことがあってもあなたに迷惑はかからない、と春恵が言ったとき、僕はそこまで考えていなかったと思い知らされました。ただ感情だけで突き進んでいた。先のことまで考えている春恵にますます惚れ込んでいったんです」

 お互いに家庭があるから、時間的な無理はできなかった。それでも家族への思いはおろそかになる。1年足らずで、まず春恵さんの夫が、妻の様子がおかしいと気づいた。探偵事務所に浮気調査を依頼、あっけなく秀哉さんの存在がばれた。

「春恵の夫は、うちの妻にすぐ連絡してきました。当事者より配偶者たちが先に連絡を取り合っていたようです」

 秀哉さんは、ある日、妻から「春恵さんと浮気しているんだってね」といきなり言われて、心臓が口から飛び出しそうになった。

「いや、あの、ともごもごしていると、妻から『彼女と別れる、私と別れるの二択。本当は結婚生活を続けながら不倫しつづけてもいいよと言いたいところなんだけど、ごめん、私にはそこまでの器量はない』と言われました。ふと見たら妻は泣いていた。彼女が泣くのを初めて見ました。ぼろぼろと大粒の涙があふれていて。思い出すと今でもつらい」

 彼の声が震えた。気持ちは春恵さんにあったが、今までともに時間を紡いできた妻と子どもたちへの思いも重かった。

 春恵さんのほうは夫から日々責められ、手を上げられたりもしていたようだ。秀哉さんはあとから知ったのだが、春恵さんはもともと夫からときおり暴力を受けていたという。夫婦関係は前から破綻していたのだ。

「『離婚して一緒になろう』と言ったのは僕からです。バレた以上、たとえ家庭に戻ってもわだかまりは消えないはず。春恵もそうでしょう。ただ、春恵は当時中学生だったひとり息子を残してはいけないと泣きました。ふたりとも悩んで苦しんで。一時は離婚だと騒いでいた春恵の夫は、その後、離婚はしないと言い出しました。結局、裁判にまでなって。以前から関係は破綻していたと春恵が主張、暴力のことなども明るみに出て、最後は夫が離婚に同意しました。でも、息子は『お父さんと暮らす』と言ったそうです」

 先に家を出た秀哉さんは、小さなアパートを借りた。慰謝料や子どもたちの学費を払い続けなければいけないから贅沢はできなかった。コツコツためた社内預金数百万だけが頼りだった。そこへ春恵さんが身の回りのものだけを持ってやってきたのは1年後。ふたりは46歳と42歳になっていた。

「待ちくたびれたけど、やっと一緒になれた。会社にも公にはしませんでしたが、妻子が被扶養者ではなくなったのだから届は出さないといけない。僕の離婚と、春恵が会社を辞めたことを結びつけた社員がいたようで、噂にはなっていましたが、淡々と仕事をしていくしかありませんでした」

 ふたりともつらい思いをして一緒になり、改めて自分たちの愛情を確認することはできた。ただ、給料の半分以上は元の家族と家のローンの支払いに回すため、経済的には厳しかった。春恵さんはすぐに働き始めたが、古くて狭いアパート暮らしにふたりとも気持ちが萎えていく。

「そんなとき、春恵が『うちの実家で暮らさない?』と申し出てくれたんです。彼女のお母さんが都内の一軒家でひとり暮らしをしている。部屋もあいているし自分にとってもそのほうが都合がいい、と。その話に乗りました」


■生活は落ち着いたものの…


 ようやく生活は落ち着いたが、それまでより通勤時間が長くなったことと義母との生活は秀哉さんにとって大きなストレスになった。あんなに大変な思いをしてまで一緒になったのだから、春恵さんとの暮らしを大事にしなければいけないと思うこともプレッシャーになっていく。

「春恵は美香と違って、生活をしていく上ではあまり頼りにならない。家事も母親に頼っている。女性としては魅力があるけど、“妻”としてはどうかと思うところが多くて。言い訳なんですけどね」

 というのも秀哉さん、コロナ禍に陥る前の一昨年秋に、またも不倫に落ちてしまったのだ。春恵さんとの愛を貫き、お互いに離婚までしたのに、たった1年半で他の女性に心を移したのである。

「春恵のことは好きだけど、春恵との生活は違和感があって。それに元の家族に対する喪失感も大きかった。美香は子どもたちに会ってかまわないと言ってくれたけど、子どもたちが会いたがらなかった。僕は自分を父親失格だと思ったし、人間失格とさえ思って鬱々としていました。そんなときSNSで再会したのが高校の同級生だったんです」

 同級生に会って愚痴っているうちに、バツイチの彼女の家に泊めてもらうようになった。春恵さんには、残業だ接待だと言ってカプセルホテルに泊まると嘘をついた。

 コロナ禍になって、出社が週に2回になっても、彼は週3回出社だと春恵さんに告げて、元同級生と会っていた。

「今も元同級生とは続いています。春恵も薄々おかしいと思っているみたいですが、何も言いません。義母がいるからケンカもできないですしね」

 彼は何を求めているのだろう。大事な家族を捨ててまで一緒になった春恵さんへの情熱は、それほど簡単に冷めるものだったのだろうか。

「自分でもどこをどうさまよっているのかわからないんです。コロナが落ち着いたら、もう一度、海外勤務を希望しようと思っています。逃げかもしれないけど、逃げた先で過酷な仕事をしながら、人生を見つめ直したい」

 最後は消え入るような声になっていた。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月9日 掲載

関連記事(外部サイト)