「東芝と経済産業省が一体となって」の衝撃 東芝を揺るがす、核心をついた調査報告書

「東芝と経済産業省が一体となって」の衝撃 東芝を揺るがす、核心をついた調査報告書

株主総会での激震が予想される

■驚きをもって受け止めています


 東芝が激震に見舞われている。「昨年7月の株主総会の運営は公正でなかった」とする外部弁護士による調査報告書が6月10日に公表されたことを受け、13日には臨時取締役会を招集。来る25日の株主総会で諮る予定だった取締役選任案を変更し、監査委員会委員を務める社外取締役2名を除外するとともに、副社長、上席常務を退任させることを決定した。事実上の更迭処分と見られる。公認不正検査士で、企業のガバナンスやコンプライアンスなどを研究する、北島純社会情報?学院?学特任教授によるレポート。

「東芝と経済産業省が一体となって、少数株主の株主提案権行使を妨げようと画策したり、一部の外国株主に不当な圧力をかけたりした」

 と指摘した調査報告書について、14日には永山治取締役会議長(中外製薬名誉会長)が記者会見を開き、

「取締役会全体として重く受け止めている。監査役の牽制機能が働いていなかった。コンプライアンス意識が欠如していたと言わざるを得ない」

 として、混乱を陳謝した。

 上場会社の社外役員を務め株主総会や企業会計に精通する会計士・公認不正検査士のA氏は次のように指摘する。

「昨今の不祥事で公表されることが多い『第三者委員会』の調査報告書は会社の依頼に基づくもので、形式的な調査を済ませて経営陣を守る内容が多いとも言われています。それに対して、今回の調査報告書は、会社法が定める『株主による調査権』に基づいて実施されたもの。核心を突いた内容で驚きをもって受け止めています」


■悩みのタネだった「物言う株主」


 東芝を巡っては、英国系投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズによる200億ドルを超える規模の買収提案を受けた騒動があったばかり。2021年1月に悲願であった東証1部再上場を果たした車谷暢昭社長(三井住友銀行元副頭取)がCVC日本法人元会長であったことから、利益相反の疑いを持たれ、車谷社長は辞任に追い込まれた。

 混乱が続く東芝だが、この1年悩みのタネになっていたのが、「物言う株主」(アクティビスト)として知られる「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」(シンガポール)の存在だった。

 エフィッシモは、旧村上ファンドで名を馳せた村上世彰氏が率いたMACアセットマネジメント出身の高坂卓志氏、今井陽一郎氏らが作った投資ファンドだ。10%近い東芝株を持つ筆頭株主として、東芝子会社による循環取引等を問題視し、昨年7月の株主総会で今井氏らを取締役に入れるように要求した。

 エフィッシモ側提案は否決されたが、株主総会での議決権行使に誤集計があることが判明した。エフィッシモ以外の大株主が東芝サイドから「圧力」を受けて議決権を行使しなかったのではないかと疑念も生じたことから、3月18日の臨時株主総会でエフィッシモは、事の真相を明らかにするための調査を行うことを要求、この提案は賛成多数で可決された。今回の調査報告書は、この時の提案に基づくものだ。

 調査報告書によると、昨年の株主総会前の5月から6月にかけて、東芝幹部と協議を続けながら経産省商務情報政策局情報産業課長らが、エフィッシモに対して株主提案を取り下げるように働きかけていた。

 その際に言及されていたのが「外為法」だ。安全保障の見地から外国人投資家による企業買収を厳しく規制する改正外為法が施行されたのは2020年5月。エフィッシモをめぐる騒動は、その直後のタイミングだった。調査報告書によれば、エフィッシモの提案に関して、外為法に基づく措置が取られる可能性があることを経産省関係者が示唆したという。


■77万通のメールと文書をAIで解析


「隣が大火事になっている横でバーベキューをしていると、それでは済まなくなることもあるため、巻き込まれないようにしてほしい」

 報告書は、経産省情報産業課長が外国株主の「3Dインベストメント・パートナーズ」側に電話会議でこのように伝えたと認定している。「大火事」というのは、エフィッシモのことだ。

 また、同じく外国株主の「ハーバード大学基金」(HMC)に対しても、経産省参与(当時)が、株主提案に賛成しないように働きかけていたと認定された。

「報告書に記載されているように株主の権利が不当な圧力によって制限されていたとしたら、それはあってはならないことです。外資規制は法規制として画一的にやるべきで、個別の案件で官庁が圧力を掛けることは許されることではありません。『株主の権利、平等性の確保』を謳うコーポレートガバナンス・コードに反することを企業と政府が一体となってやっていたとすれば、海外投資家の信頼を失い、政府が掲げる国際金融センター構想は絵に描いた餅になってしまいます」(前出の会計士・公認不正検査士A氏)

 今回の調査は、オメルベニー・アンド・マイヤーズ法律事務所の前田陽司弁護士、兼子・岩松法律事務所の木ア孝弁護士、和田倉門法律事務所の中村隆夫弁護士の3人が担当したが、いずれも知る人ぞ知る凄腕弁護士として有名だ。

 52万通のメールと25万件の添付文書を分析したフォレンジック調査は、株式会社 FRONTEOによるAIを使った解析手法を採用、事実の認定を緻密に積み重ね、「東芝経営陣と経済産業省が一体になって物言う株主の抑え込みを行っていた」とする衝撃的な結論を導き出した。

 梶山弘志経産大臣は15日、「安全保障に関係する個別企業への対応を行うことは当然だ」として、経産省としての調査は行わないと表明している。東芝は、報告書を踏まえて速やかな真相の究明を行い、責任の所在を明確化するとしているが、来る6月25日の定時株主総会を前に「嵐」が吹き荒れることは避けられないだろう。

北島純
社会情報?学院?学広報・情報研究科特任教授、公認不正検査士(CFE)。東京?学法学部卒業、九州大学大学院法務学府修了。国会議員政策秘書、駐日デンマーク大使館上席戦略担当官を経て、現在BERC(経営倫理実践研究センター)主任研究員、東洋学園大学大学院非常勤講師を兼務。専?は外国公務員贈賄罪、政治コンプライアンス、グローバル広報、戦略的パートナーシップなど。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月17日 掲載

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