「体調悪い」で病院に行く前に薬剤師に相談という選択肢

 風邪でも何でも体調が悪くなったらすぐに病院へ、というタイプの人は一定数いる。

 しかし、長引くコロナ禍の中、なるべく病院には行きたくないと考える人も少なくない。

 とはいえ、コロナ以外でも体は不調になる。

 その際にどうするか。

「感染予防を考えてひたすら我慢」という方もいるだろう。

 また、とりあえず薬局、ドラッグストアで済ませるという選択をする方もいるだろう。院内感染が多数報じられる中、それも妥当な選択肢である。

 そして実は国も病院に頼らない治療、いわゆる「セルフメディケーション」を推奨しているのだ。

■「セルフメディケーション=自力で治す」ではない


 ドラッグストアでもらったレシートに、「セルフメディケーション税制対象商品」と記載されていることがある。これは、病院に行って処方薬をもらうのではなく、薬局で売られる市販薬で対処したので、後で税額控除が受けられますよ、という意味だ。

 何となく「処方薬のほうがエラい」と思っている方も多いだろうが、実はモノによっては処方薬とほとんど差がない薬も少なくない。そして、国としてはそういう薬がドラッグストアで普通に買える機会を増やすことにしているのだ。

 薬剤師の久里建人氏は著書『その病気、市販薬で治せます』で次のように解説している(以下、引用はすべて同書より)。

「2021年は市販薬業界にとって大きな転換点を迎えています。マスメディアでは詳報されませんが、厚生労働省では市販薬制度の抜本的な見直しが進められています。長期的な視点で見たときのポイントは2つです。まず、病院でしか入手できない薬が、市販薬として街のドラッグストアで買えるようになります。そして、市販薬で買える薬をわざわざ病院で処方してもらうことが徐々に減ります。病院の処方薬から市販薬へのシフトチェンジは、国による医療費抑制策の一つとしてこの先も続く、確実な未来です」

 ただし、注意しなくてはならないのは、「セルフメディケーション=自力で治す」では決してない、ということだ。久里氏は非医療従事者の知人にこのような説明をしたところ、「ああ、要するに“自力で治せ”ってことね。国の医療費削減のために」と苦笑されたことがあるという。

「本来のセルフメディケーションとは、『自力でなんとかする』とは真逆のことだということを、おそらく多くの方はご存知ないと思います。

 WHOが2000年に出したセルフメディケーションに関するガイドラインでは、非処方箋薬においては、安全で効果的な使用のために必要な全ての情報を成分表示やメディア、広告、医療専門家の助言等から得られなければならないとした上で、次のように説明しています。

『特に薬剤師は、セルフメディケーションを目的とした薬の適切で安全な使用方法について、消費者にアドバイスする上で重要な役割を果たすことができる』」

 要は「病院には行かなくてもいいけど、薬剤師さんと相談はしてください」というのがWHOのガイドラインである。

 軽く見る人もいるかもしれないが、薬剤師は大学の専門学部で6年間の課程を修了し、国家試験をパスしなければならない、いわば薬のプロフェッショナルだ。もちろん知識のレベルは人それぞれだが、それは医師とて同じこと。最新の知識を積極的に取り入れて、「もっと私たちに相談して欲しい」と思っている薬剤師は多くいる、と久里氏はいう。

■「パッケージやCMでなんとなく選ぶ」からの脱却を


 市販薬を買う時、とくに薬剤師に相談もせず、パッケージやCM、値段でなんとなく選んでいるという人は多いだろう。だが、それでは市販薬を上手に活用しているとはいえない。

「どんな市販薬がよくて、どんな成分がよくないのか。ぜひ、薬剤師への相談を足がかりにして、自分にあった薬の使い方をしていただきたいと思います。そして、『なんとなくで市販薬を選ぶ』」からの脱却を。それがセルフメディケーションの第一歩だと私は思っています。日本はまだ、そのスタートラインにも立っていません」

「アレグラ」「クラリチン」といった花粉症薬をはじめ、鎮痛薬の「ロキソニン」、胃痛薬の「ガスター」、他には湿布薬などのジャンルでも処方薬と同じ成分のものが相次いで市販化されている。CMやパッケージの印象をもとにフィーリングで薬を選んでいては、そのへんの事情がわからないだろう。同じくらいの価格でもまったく効き目が異なることもあるのだ。

 わざわざ仕事を休んで病院に出かけ、長い待ち時間のあげく5分診療、という状況は今も変わらない。それで処方される薬が、待ち時間ゼロで買えるのであれば、感染予防を考えてもドラッグストアに行くメリットはある。

「すぐに病院へ」と「ひたすら我慢」の2択ではなく、薬剤師に相談、という手があることも覚えておいたほうがいいだろう。

デイリー新潮編集部

2021年6月18日 掲載

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