事件現場清掃人は見た 孤独死した「70代男性」はなぜ“テレビ通販”にハマったのか

 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、風呂場で孤独死した70代男性について聞いた。

「都内に住む40代の男性から特殊清掃の依頼がありました。70代の父親が自宅で孤独死したというのです。死後1カ月以上経って発見されたという話でした」

 と語るのは、高江洲氏。

「現場は、地方にある一軒家でした。田舎では珍しくないかもしれませんが、広い庭もある、大きな邸宅でした。男性は風呂場で亡くなったといいます」


■ラジオが100個以上


 高江洲氏が玄関を開けると、まず目に入ったのは、TV通販のダンボール箱だったという。

「玄関先から床の間、寝室に至るまで、通販会社のダンボール箱が山のように積まれていました」

 居間以外に、広い部屋が6つあったが、

「どの部屋にも通販のダンボールが所狭しと積んであったのです。さらに不思議なことに、よく見ると同じ商品が大量にありました。関節の痛みなどに効く健康補助食品や衣類、ラジオ、健康器具など……。ラジオはなんと100個以上ありました。しかも、どの商品もほとんど使った形跡がありません。息子さんに事情を聞いても、分からないと言うだけでした」

 高江洲氏は以前、この家と同じような状況の現場を清掃したことを思い出したという。

「80代の男性が、都内のワンルームマンションで孤独死し、死後2週間経ってから発見されました。私が訪ねると、同じようにTV通販のダンボール箱が山積みになっていました。主に中には健康器具や衣類が入っていましたが、箱を開けた形跡がありません」

 息子の話によると、70代男性の邸宅には、昔は大家族が暮らしていたという。

「子どもたちが独立して、最後は父親一人になったといいます。あれだけ大きな家での一人暮らしは大変だったと思います」

■受付嬢と電話


 高江洲氏は、邸宅にあったダンボール箱の<24時間対応のフリーコール>という文字を見て、はたと思いついた。

「一人で暮らすようになった男性は、近所にも話し相手がいなかったそうです。おそらく、TV通販の受付の女性との会話で寂しさを紛らわせていたのでしょう。通販の電話は365日、24時間電話ができますからね」

 これだけ大量の商品を買えば、優良顧客になるはずだ。

「通販の方から、新商品が出るたびに売り込みの電話もあったのでしょう。金銭的にもゆとりがあったので、受付の女性と電話で話すために商品の購入も厭わなかったわけです」

 それにしても、通販の商品にいくら注ぎ込んだのだろうか。

「ざっと見ただけでも1000万円以上に達していたと思います」

 清掃を済ませた高江洲氏は、遺品の整理にとりかかった。

「息子さんから、通販で買った商品は全て処分して欲しいと言われました。ダンボール箱を片付けながら、亡くなった男性のことを思うと本当に切なくなりました。使いもしない商品をあんなにたくさん買って……。それだけ寂しかったのでしょうね」

デイリー新潮取材班

2021年7月2日 掲載

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