事件現場清掃人は見た 孤独死した大学生と両親の関係がどうしても気になった理由

 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、ワンルームマンションで孤独死した21歳の大学生について聞いた。

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 長年、特殊清掃の仕事をしていると、孤独死した人の死因を聞いて稀に違和感を覚えることがあるという。

「都内にあるワンルームマンションの管理会社からの依頼でした。大学生が部屋で亡くなり、死後1週間経って発見されたそうです」

 と語るのは、高江洲氏。

「現場は、都電荒川線が通る下町でした。有名大学に通っていたそうです」

 高江洲氏は依頼主から、死因を聞かされて驚いたという。

「餓死したというのです。今どきの大学生はそこそこ裕福ですよね。いくらなんでも餓死するなんて考えられません」


■両親は健在


 高江洲氏は、かつて東京・山谷のアパートで餓死した20代男性の部屋を清掃したことがある。

「その男性は、中学を卒業するとすぐ就職したそうです。ところが病弱で仕事があまりできず、収入が減って家賃も滞るようになった。その挙げ句、餓死したのです」

 ところが、今回は状況がまるで違うという。

「管理会社によると、友人との付き合いはなかったようですが、大学生の両親は健在だそうです。普通、お金がなくて食べ物が買えないのなら、まずは親に頼るはずです。もっとも両親と連絡を取った形跡はなかったそうです。どうして、マンションで一人暮らしできるような大学生が、何も食べずに我慢せざるを得ない状況に追い込まれてしまったのでしょうか」

 ワンルームマンションの広さは5畳ほどだった。

「部屋にはこたつと毛布、それに洋服が散らばっていました。洋服などを丸めて、枕代わりにして寝ていたようです。餓死ですから、床などに体液の染みはほとんどありませんでした」

 部屋は、とにかく物が少なかったという。

「CDラジオカセットがあったのですが、CDは一枚もありません。売れるものは全て売ってしまったようですね。マンガ本や本などもなく、大学の教科書だけがありました」

 小さな冷蔵庫には、食べ物も全くなかったという。

「味噌と塩、醤油などの調味料しかありませんでした。まさに、困窮極まった状態です。これほど物が少ない部屋も滅多にありません」

■母性が欠如


 高江洲氏は、大学生と両親との関係に問題があったのではないかと指摘する。

「これはあくまで私の想像ですが、亡くなった大学生は、両親との関係が悪かったのでしょう。同居していた頃、家庭内暴力や教育虐待があったのかもしれません。普通、お金が無くなれば実家に帰るものですが、親とは絶対連絡を取りたくなかった。いや、取れるような関係でなかった。よほど特別な事情があったのでしょうね」

 高江洲氏は、こんなことを考えながら、清掃をしたという。

「人間、数日食べなくても死ぬことはありません。大学生が部屋に引きこもり、一人で飢えに耐えている姿を想像してしまい、非常に辛いものがありました。『腹減ったな』、そんな言葉を呟く相手さえもいなくて、友人にも親にも心配されずに餓死するなんて、あまりにも寂しい話です」

デイリー新潮取材班

2021年7月6日 掲載

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