北海道「全裸男」が裸にマスクだった理由を考察してみた(中川淳一郎)

北海道「全裸男」が裸にマスクだった理由を考察してみた(中川淳一郎)

イラスト・まんきつ

 6月18日、熊が市街地を走り回り衝撃が走った札幌市にその後登場したのは「全裸だがマスクをつけた男」でした。この男が登場した時、ネットは熱狂の渦に包まれました。「ターミネーターが来たか」「熊も全裸だからこいつに変身したのか」など、ネットではさまざまな意見が書き込まれ、まさかの危険な熊からの全裸マスク男という札幌市の状況が日本全国から注目されたのです。

 熊は駆除されましたが、その安堵感の後、発生した疑問はなぜこの男が全裸だったのか? そしてなぜ律義にマスクを着けていたのか? です。

「ぼく札幌なんですが、つい先日クマと全裸男が同日に発生して全国の人にイジられる1日を過ごしましたよ(笑)」とツイッターユーザー・uta氏も書くほど「熊」→「全裸マスク男」のコンボは破壊的衝撃を全国にもたらしたのでした。

 さて、この男、はっきりとしたことはその後報じられていないのでよくわからないのですが、人々は一体どういう状況だったのかをさまざまに予想しています。「服は着てないのにマスクしてコロナ対策意識高いの最高かよw」というツイートも。

 投稿された写真を見ると、細身ながらも筋肉質のこの男性、局部を両手で隠しているのですね。公然わいせつ罪に問われる男性器の公共の場での露出ですが、罪の意識はあるようです。ネットでは「むしろ局部にマスクを着ければいいのに」との声もありました。私も、普通の不織布マスクを局部に果たして着けられるかを検証したのですが、脚からはくのは無理でした。局部をマスクの布部分で隠した上で、後ろで紐を止めてもよかったかもしれない。さらには、路上に捨てられたレジ袋をはいて隠してもよかったかもしれない。

 ただ、彼は局部を手で隠し、マスクを口に律義に着けるという行動に出た。

 私のようなマスク嫌いな人間からすれば、この男の律義さにはむしろ感銘を受けた次第です。公然わいせつ罪で逮捕されるよりも、口にマスクをキチンと着けることこそ公衆衛生上有益な行為であるっ! とこの状況ながら考え、この結論に至ったのでしょう。

 しかし、本当に分からないのが、なぜこの男が全裸で外を歩いていたか? ということです。ネットでは、マスクが大切過ぎるあまり服を着るのを忘れてしまった、といった意見はあったものの、私はこいつが「間男」だったのでは? とも思いました。

 夜勤の夫が家に帰ったところ、気を抜いた妻とその間男がグースカ寝ていた。本来は朝の6時頃に間男は彼女の家を出るはずだったのに、ついハッソータイムが激し過ぎたあまり気を抜いて寝てしまった。そこを夫に見つけられた。今後の裁判等の証拠も踏まえたペナルティとして、夫が「お前の服は全部ここに証拠として管理する。貴様はマスクだけ持ち帰ることを許してやる」とその場から放り出したのでは……と、本誌(「週刊新潮」)「黒い報告書」的なクリエイティブな妄想が沸々と湧きます。

 とすれば、この間男は局部をマスクで隠せばよかった。日々TVや公共機関から「マスクの着用を!」と言われているだけに、反射的に局部よりも口と鼻を隠すことを優先した真面目な男なのではないでしょうか。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんきつ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。

「週刊新潮」2021年7月8日号 掲載

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